1章
この小説を見てくださってありがとうございます。
これから連載を始めます。
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「昨夜未明、広谷市(こうやし)の閑静な住宅街で帰宅途中の女性が刃物で全身を切り刻まれて死亡する事件が発生しました。この時点で、ここ半年の未解決の類似事件の被害者は6人に上っており、警察では同一人物の犯行と見て・・・。」
朝のニュースは、昨晩の事件の報道で持ちきりだ。
何でも、半年前から月に一度のペースで同じような事件が広谷市で起こっているらしく、どの番組でもこの話題が出るほど注目されているのだそうだ。
被害者は全員女性で年齢はバラバラ、偶然犯人と遭遇してしまったために起こった事件らしい。
妹を持つ身としては、心身穏やかではないので少しは気になる。
そんな兄の微妙な心配をよそに、妹である秋津刹那の頭の中は別件でいっぱいのようだ。
「こんな事件が起こるから部活動の時間に制限が掛かるんだよ。ちゃっちゃと犯人捕まえてほしいよね。」
『部活かよ。』と心の中で突っ込みを入れながら、「次は刹那だったりしてな・・・?」と、鎌をかけてみる。
「・・・そっ、そんなわけないでしょ!?私みたいなふつーの中学生がねぇ?」動揺具合から見て全く気にしていない訳ではないようだ。
「まぁ、中学のお子ちゃまは殺人鬼でも気に留めないか。」
「黙れ、死ね。」即答して踵を俺の足に振り落とす。
痛みで悶える俺をよそに朝食の片付けを始める。
早業である。まるでこの出来事を予期していたかのように。
『コイツ、できるっ!!』と、心の中でつぶやく俺であった。
俺も続いて片付けを終わらせて歯を磨きに洗面所に行くと、歯磨き粉がついたMYブラシが洗面器に置かれていた。
いや、置いたのは自分なのだが、意図して行ったのではなく、気づいたら置いていたとでも言うべきか。
何かをやろうとして行動を起こすが、気づいたら異なる行為をしていたとか、そんな感じの。
|(いや、呆けてるわけじゃないよ!昨日の夕食のメニュー言えるし、昼飯、朝飯だって・・・。ってそうじゃない。)
ここ最近そんなことが多発している。原因じゃないかと思われる出来事があるにはあるんだが___。
と言って普通なら回想シーンに切り替わるのだろうが、あいにくその時の記憶が飛んでしまっているのだ。
ピンポーンピンポーンピンポーン玄関でお馴染みのインターホンがけたたましく鳴り騒ぐ。
「はいはーい。」
ドアを開けると、ふわっとした黒い髪のポニーテールが妙に似合っているわりに鋭い目の幼馴染である藤堂赫映が腕組みしながら立っていた。
「遅い」
一言である。
小学校からずっと一緒であるが、この性格は未だに変わらない。
藤堂家のお嬢様であるだけにどれだけ手を焼いたことか、コイツは知るまい。
今日、いつもと違うところを挙げるとするなら、少し楽しそうな気がする。
「おはようございます、お嬢様。なにか今日は気分がよろしい様に見えますが?」
「おべっかはいいから早く行くぞ。」
流されてしまったが、いつものことなので気にせず準備を終えて家を出る。
「どうした?なんかいい事あったのか?」
「いいことなんかよりもっと重要なことがあるだろう。」
「えっ?」
思いつかない。
「て・ん・こ・う・せ・いだぞ、て・ん・」
「分かった、分かった。そういえば今日だっけ?でも、それだけだろ。」
「やっぱり分かってないな~お前は。私たちが秀教高校に入学してからまだ二ヶ月しか経っていないんだぞ!何かあるだろな・に・か。」
|(そんなことでご機嫌だったのか、このお嬢様の中では何でも楽しいことだらけではないか。)
「・・・。」
ドンッ!みぞおちに衝撃が走る。
「うっ!!」
それが赫映の鞄によるものだと気づく。
「ふんっ。私を馬鹿にするからだ。」と言って行ってしまった。
最近の女子高生は人の心が読めるのであろうか・・・。
秀教高校は、創立30年ほどの比較的若い高校だ。姉妹校が二つほどあり、寮制なのだそうだ。
教室に着くと案の定転校生の話題で盛り上がっているようだ。
やはり、この時期の転校生は俺も少しは気になる。
「俊斗~!春だ!青い春がやってきたんだ!!金髪美少女だってよ!」
教室に入るやいなや無駄に超ハイテンションの波野優がやってきた。
顔は、男前なのだが性格にやや難あり。身長は俺より少し高くバスケ部である。
『見た目に騙されるとはコイツのことでは!?』と思わせる変態ヤローである。
まぁ一緒にいる俺はどうかと聞かれたら、ノーコメントで御願いします。
「浮かれていられるのも今のうちだぞ?転校生となれば、並みの女子を狙うよりも倍率はかなり増してくる。」
「分かってるさ!けどよ、美少女を目の前にして行動を起こさずいつ起こすんだよ!!」
確かにそうなのだが。
|(だからって目の前にする度に行動起こしていたんじゃあ身が持たないぜ友よ・・・。)
「優、俊斗!!そろそろ俺らも行動を起こすときが来てしまったな。」
優と話していると新たなおバカキャラ古田竜哉が会話に割り込んできた。
説明しよう!!|(手短に。)
ちょっとぽっちゃりbut運動大好きの波野と同レベルの変態さんでなのである。
バァン!!教室のドアが勢い良く開け放たれ、会話が中断される。
「おはよう諸君!!」
颯爽と入ってきたのは、1年2組担任六興恭子である。
ストレートの黒髪と引き締まったスタイルで、いかにもキャリアウーマン的な空気を身に纏っていて、女子どもの猛烈ラヴコールを華麗に受け流す2○歳独身である。
年齢は未だ非公開。その後ろから金髪で、青みがかった緑色の目をした女子が入ってきた。
「出席をとる前にかねてから噂されていた通り、転入生をうちのクラスで預かることになった。」
「「「※¥*○%!!」」」
教室一帯が歓声|(主に男子七割程による。)に包まれる。
「イギリスから来ました。リサ・ウォーレンです。みなさんにはなにかと迷惑かけるかもしれませんが、よろしく御願いします。」
そう言って一礼する。
長く伸びた金髪は手入れがかなり成されているようで、ストレートヘアーが綺麗に揃っている。一礼の後の微笑みが、無駄に彼女の清楚なイメージを強化する。
「えー。ちなみに彼女は、日本語・英語を含め4カ国語が話せるそうだ。仲良くしてやるように。」
頭の出来具合に大きな障壁を感じたのは、俺一人ではなかっただろう。
次々と戦友たちの戦意喪失のつぶやきが聞こえてきた。
「こっ、これが世に言う才色兼備って奴なのか!?」
「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ・・・。」
「この私が恐れを感じるだと!?」
はぁ。とため息をつきながらリサに座席を指定する。
「今、空いている座席はあそこだ。今日は、そこに座るように。」
席が遠い。
|(定番のすぐそばは、さすがにないか・・・。)
席順は名簿順のではないのだが、二つの席が間に立ちはだかっていた。
一ヶ月経っても座席に変動は無かった。そして、転入生リサとの進展も無かった。
|(俺、今うまいこと言った!)
リサは、今では普通にクラスに溶け込んでいた。
転入初日は、休み時間になると別クラスからの野次馬やらなんやらが集まって混雑していたものだが、ブームって過ぎるの早いね。うん、早い。
そして、俺の中のやる気も何処かに過ぎ去ろうとしていた。
最初は、きっかけさえ掴めばとんとん拍子に行くだろうと安易に考えていたものだが、如何せんそのきっかけが全くといっていいほど無かった・・・。
『部活に入らず、学校が終わるとすぐに一人で帰宅してしまう。』
そんな彼女をどうするのか。
まぁ、それが思いつかないからこうして毎日が過ぎていくのだが。
今日もそんな一日だった。
帰宅部なので、波野・古田グループと帰りにゲーセンによってから帰る。
そして、十二時ほどまでパソでサーフィンしてから就寝。
もうこれが日課になっていた。これでまた明日を普通に過ごして終わりだと思っていた。
午前二時三十四分、目が覚めた。
|(頭ガ働カナイガ、ヤルコトハ分カッテイル。)
本棚に入っているファイルの間から、通販で買ったサバイバルナイフを取り出す。
「チョット出カケテクル。」そうつぶやいて家を出た。
どうだったでしょうか?
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