chapter2 何気なくむかえた朝
朝というのは実にすがすがしいものだ。少しだけあけた窓から木漏れ日が空中に舞う埃を雪の如く映し出す。車の排気ガスもないから空気は実に美味しい。小鳥のさえずりが俺の耳に・・・
「・・・届かねぇ」
いやはや、どうしたものか。俺は布団にこもっているようだが、布団のほかに重みを感じる。それはまるで・・・
無理やり飛び起きてみる。でやぁっ、と。
「ひやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
昨夜の電波少女がいた。いつの間にか俺に添い寝してくれていたようだ。ってつっこむ所はそこじゃねぇ!
「じゃあどこなんです?」
と電波少女が聞いてくるから教えてやろう。俺の部屋に不法侵入していることだ。だいたい追い出した後二重に鍵をかけて、チェーンまでつけたんだぞ。
「あー、それはですね。周囲に見られないように半径5メートルより外の時間を止めましてね、それから玄関からマサトさんのところまでの空間を歪曲させて・・・」
いや、もういい。それ以上しゃべるな。ますます頭が痛くなってくる。えーと、この電波少女は昨晩なんていってたっけ?地球人を観測するからその観測地としてこの家を提供しろっていってたよな?
「あー、それだけじゃないです。マサトさんを観測対象として観測させていただきます。」
「・・・・・・はぁ?」
思わず溜息がもれてしまった。俺を観測する?Why?どうして?
俺に何の特徴がある?俺は・・・ゲームオタクでアニメオタクで、日常に退屈しているただのひきこもり学生でしかない。
「ご心配なく。あなたの迷惑になるようなことは極力避けますから。それに今通学なさっている高等学校には不満があるようですし、今日から別な学校に通って頂いて構いませんよ。」
無視かい。まあそれはいいや。で、どういうことだそりゃ?別な学校に通っていい?少し嬉しい申し出ではあるが転学にはいろいろな書類手続きもあってだな・・・
「私を誰と心得になっておられます?この惑星の生息する高次知能生物が俗に言う宇宙人様ですよ。」
お前が宇宙人であるということを信じるにしてももう少し簡単にしゃべってくれ。文字数の無駄でもある。
「まあ簡単に言うと時間軸にちょいちょいっと手を加えたんですよ。あなたが常々行きたがっていた学校に最初からいたという情報を書き加えて、今の学校にいるという情報を削除しました。
あ、なるほど。そういやどこ探しても制服が見当たらないや。そのかわりに違う服が棚に飾ってある。
「あ、でも授業を欠席したということまでは変えてませんからね。単位はあぶないままですよ。」
そんな殺生な。確か今の状況じゃ年内であと二週間分しか休めないことになってるんだぞ。そこくらいついでにやってくれよ。
「ですが・・・そうなるとマサトさんの記憶まで改変しないといけなくなるので・・・またここに滞在させていただく手続きをやる羽目になっちゃうので・・・」
つまり自分が面倒くさいからやらなかったってことか。・・・かったるい。っていつまでこんな応酬をしてるんだ俺は。
「早く出て行けよ!ここは俺の家!俺の部屋!そしてお前は不法侵入者!どこの誰とも知れない奴をおいておけるか!警察呼ばれる前に早く出て行ったほうがお前のためだぞ!」
俺は鬼の形相で脅しかけたつもりだった。これだけいえばビビって出て行くだろうからな。だがこの電波少女は腰を抜かすどころか、逆に微笑みを見せて俺に言った。
「いいえ。不法侵入者ではないですますよ。私はあなたの従妹ということになってます。」
・・・ナンデスト?オレノイトコダッテ?馬鹿言うな。
「いいえ。これが証拠であります。」そういって電波少女は手帳のようなものを差し出した。
それは俺がここにしときゃよかったと思っていた高校の学生手帳である。そしてそれには「スバル・ミサキ(仮名)」という名前が書かれていた。確かに俺の叔母の名字だが・・・
とそのとき電話が掛かってきた。携帯電話じゃないってことは、誰だろ?と思いつつ受話器を取る。
いやな予感バリバリだが。
―あ〜、もしもし?―
「もしもし、ハルキくん?おばさんだけど〜、ごめんねいきなりおしつけて〜。でもどうしてもその高校に転校したいって聞かなくて。その子の生活費なら送るからミサキのことよろしくね〜」プツッ。
「どう?これで信じる気になったですか?」
信じたくないね。・・・でも今の電話で信じざるを得なくなったな。どうしてこんなことになったのか・・・
「ふつつかものですが、よろしくお願いしますです!」
俺の日常がこうして非日常へと変化しようとは・・・・ていうか人の金で生活するなよ。