chapter1 俺の退屈な日常 第二小節
―キンコーン―
ん?客か?でもこの時間だと多分どっかのセールスマンだろうな。すまん、他の人を相手にしてくれ。玄関に向かおうとしたがすぐ引き返した。どうせ応対したところで無駄な話を延々と聞かされるだけだろう。
「そこで彼女は言う。『逃げちゃだめよ。逃げちゃだめよ。逃げちゃ・・・』」
―キンコーン―
またか。ええい、適当にごまかして帰ってもらおう。それにしてもこんな時間に・・・
「夜分すみません。マサトさん宅はこちらでよろしいでしょうか?」
表札みりゃ分るだろうが。いかにもここはマサト宅だ。それでお前は誰だ?
「マサト・ハルキ(仮名)さんはご在宅でございませうか?」
いかにも俺だとも。台詞が少々古いのが気になるがな。それで、俺に何のようだ?
「それでは、今後ともよろしくお願いいたします。いつまで滞在するかは未決定ですが・・・」
ちょいまち。何の話だ。
「いやですね、この前決めたじゃないですか。学術研究の対象としてこの辺境のこの惑星にすむ
生物が太陽系と呼称する星団の第三惑星に生息する高次知能所有生物を観測するための観測施設としてこちらの家屋を使用させていただくと。忘れたんですか?」
・・・・・この近くに神経内科ってあったか?こいつのぬかしてることは全く頭には入ってないが、少なくとも通常ではない事を口にしていることは確かだ。
「あれ?・・・・でもたしかにマサトさんと・・・あっ、そうか・・・」
そこ、なにがわかったというのだ?俺にもわかるように百文字以内で説明してくれ。
「だから、私はマサトさんと契約したんですけど、この時間軸のマサトさんではなかったんですよ。詳しくいうと、今から三時間前の別の時間軸でのマサトさんですね。」
ますますわからん。だいたい三時間前の俺と契約したのなら、何故今の俺が覚えてないんだ?
「えーとそれはですね。私は今回の観測の下準備に少し過去に遡ってそこで契約したんですけどね、どうやら未来に戻ってきた時にまたこの時間軸に戻ってきたみたいで。てへ♪」
なんか頭が痛くなってきたのは気のせいだろうか。
「スマン、今取り込み中なんだ。じゃあ」
「あぁ、ちょっと待・・」
問答無用に扉を閉める。はぁ・・・なんだったんだ。明日は久しぶりに外へ出てみるか。また今日みたいなのが出てきたらかなわん。
それは俺の杞憂ではなかった・・・・orz