chapter8 決心
衝撃告白を受けたあと、俺はある決心をせまられていた・・・
―「もし扉が開くと、この世に生きる精神生命体がどっとあの世へと流れていくことになります。それはすなわち、この世から生命が消えることを意味します・・・」―
いきなりそんなこといわれても信じられるか。あの宇宙人、ミサキがこの地球にやってきたことが原因らしい。だから、
―「もし、彼女がこの地球から去るようなことがあれば、あるいは・・・」―
要するに、俺があいつを追い出せば済む話なんだそうだ。それはそれで利害は一致している。別に俺の生活費を食いつぶしているわけではないが、常に付きまとっているあいつは正直邪魔なのだ。だが、
「でも、あいつがきてからかなり生活変わったのは確かだよな・・・」
そうなのだ。それまで、俺は退屈な日常に飽き飽きしていた。いつまでこんな生活が続くのかと見切りをつけて妄想の世界に耽っていたのである。それが、ミサキがきて一変した。実の所、毎日が楽しくなった。宇宙人、精神生命体、ネコミミメイド・・・どれも非常識で今まではありえないと、物語の中くらいでしか存在しないと思っていたのだ。それが今、当たり前のように俺のすぐそばにいる。俺の手が届く。しかし、いつまでもそれは続かないのだ。
―「このままでは、あなたを含め、この世の生命が消えることになりかねません。いえ、そればかりか、あの世の生命も対消滅してしまうかもしれないんです。だから・・・彼女を説得してください。」―
ミハルはそういった。ミサキさえ消えてしまえば済む話なんだそうだ。だからってすぐ納得できない。いや、俺の心がしたくないと言っている。また退屈な生活に戻ってしまいかねないから。
そのとき、俺の部屋の扉が開いた。振り向くと、ネコミミメイド・ツクヨミが盆の上にティーカップを載せていた。
「いつまでも悩んでいると、喉が渇きますよ。お茶をどうぞ。」
「ああ、悪いな。」
「・・・ご主人様?・・・その悩み事は、解決しそうなんですか?」
いきなりつっこんだ質問をしてくるな。
「まぁ・・・まだだな。」
「・・・そうですか。」
・・・そんな冷たい反応をしなくても。一緒に悩みましょうくらいいってくれないのか。
「解決する方法ならわかってると思いますが?」
「・・・・・え?」
何を言い出したのかわからなかった。ツクヨミさんからこんな言葉が出てくるとは思ってもみなかった。
「確かに彼女がいなくなるということは、今までの生活に戻るということです。私ももとのプログラムに戻ってしまうでしょう。ですが、それもやむを得ないのでは・・・」
いや、そうなのだが・・・・
「・・・・私たちのことを忘れさえしないでいただけたら、嬉しいです。何かの形で残してさえいただけたら、私は文句は申しません。」
その言葉を聞いたとき、俺の中で何かが変わった。何かの形で、想い出を残す・・・
次で終わらせます。