九十八. 初詣戦場
また戦場です。
季節真逆ですがスルーしてくださいw お願いします。
「新年あけましておめでとうございます!」
「今年もよろしくお願いします!」
「……よくリアルと真逆の季節にそんなこと言えるな……」
上から八千代、奏、水裟の順で言っていく。シーズンはお正月を迎えていた。誰が何と言おうがお正月のシーズンだ。
時間は正午前。天国関係全員で初詣に行こうということになり、水裟たちの住んでいるところから一番近い、『それなりに大きいんだけども小さくもある。それが遠近法となって目に映るのは人間の錯覚だろうか寺』、略して遠人寺での集合ということになっていた。
今がちょうど集合時間で、みんなそろそろ来てもいい頃なのだが、到着しているのは先ほどの会話からも分かるように、水裟、八千代、奏の三人だ。
「ていうかさ~、初詣って何の意味があるの~?」
八千代が急に気だるそうに問うてくる。それに奏は「そうだね~」と少し考えていたが、水裟にはすぐ答えが出ていたらしく、ズバッと回答した。
「八千代が試験に落ちないため」
しばしの沈黙。
「そういえば私たち受験生じゃん!」
「今頃!?」
「やっぱりノー勉強か」
そう、誰もがお忘れかもしれないが、天国関連の人たちは全員受験生である。雛流や水裟、矢筈に奏といった辺りはきちんと勉強をこなすし、大牙はスポーツ推薦を狙っているらしく、ノー勉強。まぁ、大牙の実力なら入れると思うのだが。冬菜はノー勉強でも普通に賢い。それなのにしっかりと勉強している。
実際、勉強していないのは八千代で、していなさそうなのが須永なのだ。
「水裟~、教えてぇ~」
「……嫌だ」
「えええええ~」
八千代は半泣きになりながら普段着の水裟の袖を握ってくる。知らぬ間に奏は少し距離をとっていた。
そうこうしているうちに雛流、冬菜、須永、矢筈、大牙といったメンバーが集まり、早速始まろうとしたのだ――。
――お参りが!
なぜダッシュとエクスクラメーションマークを使って強調するか? 前話を参照にしてもらえば良いのだが、お参りはお願いをするのだ。キャラが立ったり立ってない奴らの集団。きっと変なお願いをするに違いない。
お賽銭を入れ、ガランガランと揺らし、手を二回ほどたたいて目を瞑る。そして脳内でお願いごとをし、祭壇から降りた。そして定番の質問を八千代が投げ出した。
『みんなは何をお願いしたの?』
ある意味チャレンジャーな八千代が問う。
さぁ、珍回答は炸裂するのか。
「私は受検成功しますようにって」
「俺も」
「私も」
上から雛流、大牙、奏。意外と普通だった。特に大牙。もっとおかしなお願いをすると思っていたのだ。大牙と言えば熱血なので『地球温暖化が進みますように!』みたいな。そんなお願いしていたら全員からの必殺パンチを食らってもらうが。
「私は地獄戦に勝利できますように、と」
「私もです」
続いて矢筈と冬菜。天国関連の人間では一番二番を争うほどの天国・地獄の知識を持つ二人はそうお願いしたのだった。らしいと言えばらしいが、今はそんな状況ではない。存在の薄い矢筈がここで一発くらいギャグをしておかないとまずいだろう。
となると、後は珍回答の最有力候補、八千代と須永。
「私は受検が滅びますように! って」
「俺は……ふふふふふ……」
気にしないでおく。
ここまで全く珍回答は炸裂していないが、我らが主人公、和月水裟姫に任せることにする。
「水裟はなんてお願いしたの?」
「ん、受験が終わりますようにって」
みんなは顔を見合わせて笑顔になる。そして大きく空気を吸い込み、振動させながら吐き出す。
『バカァアア!』