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九十四. 開催

 門には「影月祭」と書かれた横断幕。校舎へと続く道は屋台で埋め尽くされている。

 ついに影月祭を迎えたのだ。学校に来る人たちは四十代の人たち、つまり両親が多く、祖父母や兄妹と思われる人たちもたくさんいた。今年もなかなか賑やかである。


 水裟たちはもちろん、今は教室にいる。あの究極の出し物、メイド喫茶を完全に開くために準備をしているのだ。

 メイド服を着るのもそこそこ可愛い人じゃないとだめらしい。何だか女子高生にとってはサバイバルな世界だが、選ばれなかったものは自由に遊んだり、自分たちでホットケーキ作って食べてたり。正直、誰もがそっちのほうが楽しそうと思うほどだった。

 その可愛い人は男子の総選挙で決めるという、どこかのアイドルグループのようなことを実施していた。

 選ばれる人数は8人くらいで、それほど確率が高いわけでもない。E組以外にも出し物はたくさんあるし、体育館での舞台発表。教室もそれほど広くないので、無理にやらなくてもいい、という須永の配慮らしい。いい奴なのか嫌な奴なのかはっきりしないが、変態だということは誰もが知っていた。


 その総選挙によって選ばれた午前中担当の人たちが今から出るらしい。


「本当にやるんだね、これ」

 女子更衣室でメイド服を持ちながら奏はため息をついた。奏は総選挙第2位で選ばれたらしく、仕方なくやることにしたようだ。

「須永……こんなときに有言実行しなくてもね~」

 そんなことを、パイプ椅子に座ってポテトチップスを食べている水裟が言う。ちなみに水裟はレジ係。理由は至って単純で、数学に至っては学校一の成績を持っているからだ。「お前の頭電卓じゃん!」みたいなことで選ばれたのだ。(ちなみにレジ総選挙ぶっちぎりの1位)


 それにしても奏はこの文化祭、多忙である。午前中にメイド喫茶で恥ずかしいことをしてから、吹奏楽部の発表のため、体育館に行かなければならない。


 やがて着替え終わった奏は恥ずかしそうに更衣室に立っていた。似合いすぎている、というのが正直な感想だ。黒色のツインテールに優しそうな瞳がメイド服に見事にマッチしている。

「うん、ちょっとしたセクシャルハラスメントが起きそうだ」

 そう言って水裟は更衣室を出て行った。

 またロクでもないこと言うな~……、と思いながら奏も教室の方へと向かっていった――。


 ★


「みなさん、おはようございます。生徒会長の朝希雛流です」

 一方で舞台(体育館)。生徒会長という役についている雛流は一日中舞台の司会をしなければならないので、メイド喫茶は断ったのだった。というか逃げたのだった。

 舞台の方も盛り上がるプログラムになっている。午前中は演劇部、科学部の発表があり、午後は合唱部、軽音楽部、吹奏楽部の順で進められていく。

「今年も影月祭が開催されてたいへん嬉しく思っています。昨年は校内ドミノ倒しで盛り上がりました。今年も他校にはない、独特な影月祭を予定しています。ぜひ楽しんでいってください」

 雛流がこう挨拶をする。これが本当に文化祭の開催を宣言するものである。


「それでは、影月祭、開催です!」

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