九十二. 喫茶VS書道
いつも以上に短いです。
申し訳ありません。
「では、今からクラスの出し物を決めます!」
教卓をバンっと叩き、須永が大きな声で言い張った。
ちなみに実行委員の立候補を聞いてみたところ真っ先に挙手したのが須永だった。理由は言うまでもなくそういう目的なのだろうが、それ以外に挙げる人がいなかったので男子はあっさりと須永に決定していた。
ちなみに女子は八千代。とりあえず普通の文化祭が開催されないことは分かってしまったクラス御一行。
影月学園にもクラス別に出し物があり、お化け屋敷や喫茶店が定番となっている。ちなみに去年の水裟たちのクラスはお化け屋敷だった。といっても水裟は衣装を作るくらいしかやっていないが。
「メイド喫茶! 意義あるか!」
みんなの意見を聞く前にいきなり須永が大声で言う。やはりそういう目的だった。
メイド喫茶。毎年どこか一つのクラスは実行しているが、美人やブスが様々な学校でやるのは凄い、というのが水裟の毎年の思いだった。メイド喫茶に賛成する奴は自分が可愛いとでも思っているのだろうか。
「賛成!」
そんなことを考えていたら、一人の女子が勢いよく挙手をした。紗由里だ。別にブサイクというわけではないが、元気よく手を挙げる意味が分からなかった。他ならぬ、クラス全員が。
「良く言った、半田。座って良し」
「ありがとうございます!」
須永は腕を組み、頷きながらそう言った。座って良しって……みんな座ってるんだけど、は禁句。
はっきりとお礼を言って着席する紗由里。その一瞬、水裟のほうを見てニヤリと笑った。そこで水裟以外のクラスメイトが理解したのだ。水裟のメイド服姿が見たいんだ、と。
その他にも須永と同類のような男子共は元気に挙手をし、もうすぐ半分を超えそうというところまで来ていた。このままでは非常にまずい。このままメイド喫茶なんて非常にまずい。
「はい!」
そんなことを水裟が考えていると、雛流が元気よく挙手した。これは賛成というようなものではない。明らかに新たな意見を出そうとしている。
「書道の展示がいいと思います!」
水裟は心の中でよくやったぞ雛流! と言った。字を書いてクラスに貼っておく。接客などしなくていい。これほど楽で楽しいものは他にない、という水裟。
「つまんない女だな」
しかし須永もひるまない。なんて強い敵なんだ。
次第に押されていったのは雛流で、とうとう力尽き、着席してしまった。雛流でも勝てないなんて、なんて強いんだ須永。水裟はちょっとだけ驚いていた。
こうして、3-Eの出し物はメイド喫茶という暗黒のものに決まったのだった。