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八十六. 状況整理

「ああ~、世界がぼやける~」

「奇遇ですね。私もです」

 場所はバーロンの部屋の端あたり。寝転びながら貧血気味の奏と冬菜が話していた。

「ああ~、赤色の錠剤がほしい~」

「奇遇ですね。私もです」

「状況分からないから説明して~」

「奇……分かりました」

「今奇遇ですねって言おうとしたでしょ?」

 なんてやり取りをする。そう、奏はいまいち今の状況を理解出来ていなかった。

 やっとの思いでこの部屋に辿り着くも、あの大きな獣が大牙に襲い掛かろうとしていて。矢筈が行こうと決心していて。とりあえず、ピンチなんだな、ということしか分からなかった。そして、無意識に矢を放っていたのだ。

 冬菜も倒れてはいたが、状況は普通に理解している。

「というか……何で冬菜ちゃんはここで休んでいたの?」

「あの獣に押しつぶされました」

「……よく無事だったね」

「まぁ、それなりに鍛えていますから。それより、状況の説明ですね――」


 ――今の状況は矢筈、大牙、八千代が大きな獣、バーロンと交戦中。しかし八千代は、バーロンの背中から放たれたチェーンで大きなダメージを負ってしまい、今は奏や冬菜と同じような状態にある。いや、八千代の方が酷い。

 そして雛流は一人で炎道紅蓮と戦っている。相手は剣を使う。近距離で圧倒的不利だが、僅かな利点、命中率の増加にかけて戦っている。

 須永は水裟の元へと行くための道を作っている……というのもおかしな話かもしれないが、水裟は炎石の王に指輪を渡されていた。まだ抵抗して受け取っていないようだったが、時間の問題ではある。あんなに狭い部屋で逃げるなんて無理だ。

 水裟たちがいる部屋と冬菜たちがいる部屋はガラス一枚でしか区切られていない。そのガラスに特殊な効果があるとは思えなかった。

 その理由としてはバーロンの行動から。須永がドルフィンブーストでガラスを突き破ろうとすると、バーロンが腕を振ってその進路を塞いでしまった。特殊な効能があるなら、別に防ぐ必要はない。となると、おそらく普通のガラスだろう。


「――まぁ、こんなところですね」

「さすが。いろいろ分かりやすいね~。で、私は何をすればいいの?」

 奏は寝転んだ体勢から体育座りになり、冬菜に問うた。それに冬菜は淡々と答える。

「あなたがするのに適任しているのは、須永さんの手伝いでしょう。消耗もそれほど激しくありませんし、遠距離が得意。撃つのも多い方がバーロンを惑わせられるでしょう」

 それを聞いた奏はスクッと立ち弓を構えた。それほどには動けるようだ。

「冬菜ちゃんはどうするの?」

「私はもう少し休みます。私の役目は……他にあります」

「なるほど。じゃあ、その前にガラス突き破るよ」

「お願いします」

 奏は小指で矢を引き、狙いをガラスに定めた。幸い、バーロンは矢筈の攻撃で少しひるんでいる。っこれほどにないチャンスが巡っているのだ。

 奏はしっかりと引いた矢を、勢いよく離した。


『ミスリルショット!』


 無数の矢が部屋中を飛び回った――。

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