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七十八. 銀色の矢

 奏の視界は赤で埋め尽くされた。テレビでしか見たことのない、ドロッとしたマグマ。ところどころに黒の混じった溶岩。それに囲まれては……溶けるしかない。

「って、そんなわけないでしょ!」

 奏はとりあえず後ろに下がっていた。噴火をするまでに、僅かではあったが隙が出来ていた。そこをついたのだが……結果はあまり変わっていない。溶岩は奏の走るスピードよりもかなり早いペースで迫ってくる。

 奏に解決策はなかった。迫りくる溶岩をただ待つだけ。躱したのは時間稼ぎに過ぎなかった、ということだ。

 今度こそ、奏は赤色のマグマに覆われた。それは……奏の敗北を意味していた。


 ◇◆◇


 視界は真っ暗。何も見えない、真っ暗な世界。その中、奏は一人、倒れていた。冷たい大理石の床が頬を冷やしていく。……冷たいのは奏が倒れているところだけだが。

 そのほかの場所は蝋燭のように溶けていた。ドロドロとした、それでいてしっかりと固まっているところもある、そんな床。

 奏は倒れながら思っていた。

 ――どうしても勝てない。

 ブロンズアーチェリー、ミスリルショット。二つの技を(ことごと)く攻略し、終いには奏が押される。どうしようもなかった。

 逃げてばかりでは勝てない。戦場の基本である。しかし、攻撃が当たらないのでは全く意味がない。勝機は――ほぼ〇

 だけど、奏はこう思う。ほぼ〇。まだ完全な〇じゃない。だったら、勝てる。勝てるはずだ。

 奏はゆっくりと顔をあげた。下の部分だけが少し溶けた大理石の壁。上の方は、まだ輝きを放ち続けている。その――床と壁との間。キラン、と光るものがあった。

 その光は奏の目を刺激し、やがて光は収まる。反射する光がなくなったのだ。

 奏はゆっくりとそれに近づいた。そして、それを手に取る。

「銀……」

 輝く物の正体は《銀》。鉱石の一つである。

 ――かけてみるしかない……。

 奏は腰に引っ掛けてあった《チューニングハンマー》を取りだし、銀を軽く、コツン、と叩いた。すると銀は指輪にはまるほどの大きさになる。そう、奏がとったいちかばちかの行動。銀によって発動される新技にかける。

 ゆっくりと指輪に銀をはめ、三つ目の指輪が完成した。銀は、更に輝きを増した。

「……まだ生きてるのですか」

 奏がこそこそと動いているのを見ていた火山がそうつぶやいた。そのことを知ると、再び剣を奏のほうに向けた。炎がその剣を覆っていく。――剣地噴火だ。

 剣先から放たれたのは先ほどと同じマグマ。大きな噴火が奏の前で行われた。

 奏はそれに気づいていた。これで全てが決まると言っても過言ではない。

「全てを……この矢にこめる!」

 中指につけられた指輪で、思いっきり、これでもか、というくらいに弓の弦を引く。そして、パッと離し、発射される。なおも、銀は輝き続けている。

 銀色の一筋の矢と、全てを覆い尽くすマグマ。本当のラスト勝負だ。


『シルバーアーチェリー!』

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