七十五. 光の雨
右陽と左陽の拳が綺麗な金色に光る。無論、矢筈たちはどんな技を仕掛けてくるかは分からない。ただ、先ほどの会話から、大きな技だ。ということは判明していた。
「本当にこの技を出すんですか? 右陽さん」
「しょうがないでしょ。出さないまま負けても意味ないじゃない」
この会話は明らかに、あまり出したくない大きな技、ということを表している。
矢筈は真っ白な天井に向かって伸びる剣をしっかり握った。須永も防御の体勢をとる。
右陽と左陽の拳が、太陽くらい光ったところで、技が発動される。
二人は天井に向かって拳を突き上げ、そこから発射される光線を一点に集めた。そしてその光線が集まったところから、矢筈たち目掛けて発射。それも無数。そう、まるで豪雨の如く、矢筈たちに襲い掛かった。
『ライトニングシャワー!』
正直に、こんな技避けられるはずがない。逃げ場はない、どこかにいても一滴は当たる雨だ。そんなの基本に過ぎない。
「雷剣!」
ならば力で粉砕するしかない。そう考えた矢筈は剣に雷を纏わせ、ライトニングシャワー目掛けて薙ぎ払った。しかし、一滴ではない。矢筈の周りだけでも数えきれないほどの光線が降り注いでいる。そう簡単に祓えるものではなかった。
天国護廷7では大牙の次くらいに力のある矢筈でも、これには対処できなかった。
それは須永も同じである。そもそも、ブーメランという遠距離武器ではこの攻撃に対処できるはずがなかった。
そうして二人はライトニングシャワーの餌食となってしまったのである。
あたりはすっかり焦げてしまった。光線とはいえ、とてつもない熱力を持っている。それに焦げないほうがおかしい。
その焼け野原のような部屋にあるのは、少し傷ついた右陽と左陽。そして光線にやられてしまった矢筈と須永だけ。
「ふぅ……さすがにもう立てないでしょ」
と、額から出てきた汗を拭いながら右陽が言う。それに左陽もコクリと頷いた。
このままやられてしまうのか……それは、矢筈たち次第となった――。
☆
真っ赤な絨毯に真っ黒な壁。血を連想させられる部屋に連れてこられた水裟。そこにいたのは炎石の王と思われる男性。真っ黒な髪の毛が少しはねている天然パーマ。服装は炎石特徴の赤いシャツにキングコート。
その王の前に水裟は正座させられた。王はそのあと頷き、水裟に話しかけた。
「初めまして、かな。お姫様」
「…………」
水裟は何も言葉を発せられなかった。決して話したくない、という意志ではなく、喉が思うように動かないのだ。この炎石の異常な気温の中、一度も水分補給をしていないので無理もない。体温は水氷輪の影響で何とか保たれているのだが。
「ちょっとお話があってね。返事がなくても進ませてもらうよ」
「…………」
「僕ね……見つけちゃったんだ。水氷輪を外す方法」
「……!?」
水裟は声にならない驚きの声をあげた。水氷輪を他人が外すなど、できないはずだ。
王の口が吊り上がったのを、水裟は見てしまった――。