表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/120

七十一. 英国の剣士

 悠斗は緑色の妖気を発生させ、一気に昆を冬菜たちのほうに突き出した。

幻覚突(げんかくとつ)

 さきほどと同様に悠斗は地面を思いっきり蹴って冬菜たちのほうへと飛んだ。昆の先を冬菜たちに向けながら。

 しかし、今回は普通に反応が出来る。しっかりと警戒していたのもあるし、黒暗定紋二刀流剣で双剣がパワーアップしているため、攻撃にも十分耐えられる――はずだった。

 真正面から冬菜は昆を受け止め、その重い一撃を払いのけた。悠斗は向い側の壁にぶつかった。

 冬菜が勝ったはずだったのだ。悠斗は壁に叩きつけられてがっくりとなっている。その光景が冬菜と八千代にはしっかり見えていたのだ。

 なのに、冬菜の背中から血が流れ出した。苺のように赤い血が。

 おそるおそる後ろを振り返る。そこにいたのは、悠斗だった。

 これが、悠斗の必殺技、幻覚突なのだ。

 冬菜と八千代が見たあの悠斗は、幻覚だ。倒れたように見せかけた悠斗。本物の悠斗は冬菜の真後ろで昆を構えていた。そのまま突撃。あの攻撃をモロに食らった冬菜は、その場にぐたりと倒れこんだ。

 次はお前だ、と言うように、悠斗はすぐさま八千代へと視線を変えた。八千代はビー短を構える。

 しかし、八千代でさえも分かった。今のままでは負ける。黒暗定紋風雷斬も発動できない。八千代の光撃斬は発動できるにしても、偽者に撃ってしまったときには、それこそおしまいだ。

 偽者は何体もいる。冬菜が倒れた瞬間に、更に6体くらい増加しているのが事実だ。

 悠斗はどんどん昆で突いてくる。八千代はそれをビー短で弾き返すだけ。防戦一方だった。


 しばらくその攻防が続いていると、ガチャリ、という音がした。その音の発信源は冬菜だ。

 ふらふらになりながら、双剣で体を支えて立ち上がった。そして、壁際のほうへと足を運び、双剣を支えにするのではなく、攻撃の物、武器として構えをとった。

「冬菜……?」

「……どれが幻覚か分からないのであれば、すべてを破壊すればいいだけです……。英国のナイトのように……華麗に……」

「…………」

「あなたは少し()けてください。このままではあなたを巻き込んでしまいます」

「頼っていいんだね?」

「任せてください……」

 いつもの脱力感に浸った目ではなく、鋭い目つきで冬菜は技を発動させた。

 自分の手前で、双剣をクロスさせる。するとバツ印に描かれた斬撃が現れた。

 それの次にはプラスに剣を振り、プラス印の斬撃がさきほどと同様に現れる。

 その二つの斬撃が合わさり、形が整った。その形は、紛れもなくイギリス国旗だった。

 その斬撃にありったけの力を注ぎ込み、巨大化させていく。最終的には壁の端から端にとどく大きさにまでなったのだ。それを発射すれば、かわせる余地はない。冬菜はそれを躊躇いなく発射した。


『ユナイテッドキングダムソード!!』


 そのイギリス国旗のような強大な斬撃が悠斗に襲い掛かった。八千代は危機一髪で冬菜のほうへと回りこみ、その攻撃から逃げるのに間に合った。

 逃げられる場所はない。このフィールドは冬菜のものと化した。

 その黒い斬撃は悠斗を切り裂き、真っ赤な血を噴出させた――。


 ◆◆◆


「はぁ……はぁ……」

 さきほど発動させたユナイテッドキングダムソードの反動が、冬菜に大きく負担をかけた。景色が歪んでいく。血が足りていないのだ。

 悠斗の攻撃を食らっただけでも大量の血を失ってしまっていた。もう冬菜は極限状態だ。

 倒れそうな冬菜の体を八千代が支える。

「ありがとね。今は休める場所を探そう」

 八千代は冬菜をおぶって、先に続く道を歩みだした――。

次回から雛&大です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ