六十六. 灼熱の部屋
雛流と大牙はそのまま上に続く階段を行き、一番高いところにある部屋を目指した。どこの部屋も真っ暗な通路から明るい部屋へと繋がっているようだ。
雛流たちがその部屋に辿り着くと、今度は一人の女性が立っていた。
「炎石へようこそ。私は灼羅熱刃。炎石護廷7の一人」
「炎石護廷7……?」
やはり炎石にも天国や地獄と同様、護廷があるようだ。簡単に言えば炎石で8番目以上には強いという事である。姫などの強さも含めてだ。
「さぁ、灼熱地獄へいざなってあげる♪」
そう言って熱刃は手に持っていたスナイパーライフルを構えて、発射口を雛流たちへ向ける。そしてそのまま発射する。すると大きな炎が部屋を包み込んだ。ガソリンをかけた程度のレベルではない。
部屋は炎で埋め尽くされた。雛流たちはどうしようもなく、少しでも炎の少ない場所へ向かって走り続けた。
「おい生徒会長。何か対策とかねぇの?」
大牙が走り続ける雛流に聞く。
「あるわけないでしょ! 正常に戦えるフィールドじゃないんだから!」
当たり前である。天国の者とはいえ、炎に包み込まれたら火傷しないわけがない。冷却シャツも蒸発して水蒸気へとなりつつある。
大声で雛流がそう言った後に大牙は「なら……」といって手に装備している爪を構えた。
「どんなものであれ、やっておいたほうがマシだな?」
「……方法があるなら」
「よ~し!」
大牙は両手の爪を胸の前でクロスし、爪先に炎を集めた。そう、これが大牙の言う方法である。今から放とうとしている技は、炎を一点に集中させて、打撃と共に放出する技。この大炎上している環境は緊急事態だが、裏返せば大ダメージを与えるチャンスだった。
大牙はそのクロスした手を一気に開き、熱刃の元へ向かって勢いよく地面を蹴った。
そして急接近し、両手同時に熱刃を切り裂く。
『ダブルファイアクロウ!』
多くの炎が取り込まれた爪の技が熱刃にクリーンヒットした。ここからの攻撃は絶対にないと思っていた熱刃はそのまま壁に打ち付けられた。
大牙が大きく炎を吸収したおかげで、部屋中で燃えていた炎も小さくなった。
熱刃は頭を押さえながら立ち上がり、狂った目つきで大牙を見た。
「へぇ、意外と強いんだね~」
軽い口ぶりで熱刃はそう言った。
雛流もある程度自由に動けるようになり、大牙と熱刃のところへと走ってきた。
熱刃は表情を変えず、そのまま話し続ける。
「でも、灼熱地獄は終わらないから~」
再びスナイパーライフルを構え、また部屋を炎の部屋へと化してしまった。
「何度やっても同じだぜ!」
そう言って大牙も再びダブルファイアクロウの構えを取る。
しかし、先ほどと違って、熱刃ももちろん対策は打ってくる。
不意に頬の辺りに足が見えた。その足は大牙を思いっきり蹴飛ばし、今度は大牙が壁に打ち付けられてしまった。
「私の得意なのはこっちなんで~」
そう熱刃が言う。
炎はたちまち燃え上がり、雛流と大牙を包み込む。
果たして、熱刃に勝つ対策は見えてくるのか――
矢「次回は私たちですね」
須「そうだな。何で相手が美少女じゃないんだ」
矢「しっかり考えた結果です」
次回もよろしくお願いします!