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六十三. 体育祭~吐き気に耐えながら~

「俺が団長の柊大牙だ!」

 誰もがいきなりの会話文でうっとうしいと思う中、大牙が高らかに自己紹介をした。

 団長決めというのは、はっきりいって簡単ではない。誰もが嫌がるようなものである。

 それとは対象的に、大牙は推薦でも圧倒的、おまけに立候補しちゃったので開始三秒で決まった。

 そんなこんなで簡単な体育祭までを語ったが、体育祭は本番を迎える――――


 ◇     ◆     ◇


 九月七日。快晴の中、体育祭が開催された。

 今は入場行進をやっている。奏が吹奏楽の演奏をしながら前を歩いている。

「あ~、だるいな~」

 相変わらず水裟はやる気がなかった。そのままだらだらと入場行進をして、開会式へと移る。

「え~、皆さん。本日は天気に恵まれ、非常に体育祭日和となっております!」

 校長の長い話が始まり、水裟以外の人もそこそこだるさが出てきていた。

 そして、影月高校の旗がポールの頂上に昇り、正式に体育祭が幕を開けた。


 ■


「まずは3年生競技、学級対抗リレーです!」

 いきなり水裟たちが出場の競技がやってくる。しかも定番のリレーがこんなにも早くにだ。

 三年生のみんなが待機場所につき、走順を確認する。

 水裟は30人中の16走者目。真ん中辺りなのでそれほどプレッシャーは感じない。

 それも水裟はそれなりに走り、次の八千代へとバトンを渡した。

「あとは任せて。一位を奪ってくるよ……」

 八千代はそう親指を立てて言った。

 そして水裟は思った。

 ――今、私たちは一位だ。


 □


 それからもみんなが一生懸命取り組み、協力し合って、水裟たち青組は総合でも二位につけていた。それも、次のラスト競技で抜けるという。

 最後の競技は影月高校恒例、色別対抗リレーだ。それぞれの学年と同じ色の組と協力し、優勝を狙う白熱のリレーである。各学年から男女二名を選出し、一年生から順に走っていく。

 水裟たち3-Eからは、男子に大牙と矢筈、女子は紗由里と雛流が選ばれている。どちらもそこそこ早い。

 水裟や八千代といった人はもう全ての競技に出場し、あとは応援するだけだった。

「あ~、何で私を選ばないかな~」

 そんなことを八千代が言う。

 そりゃあ、50m走が10,9だからだよ、と水裟は思った。実際、「一位を奪ってくるよ……」と言ったあのリレーでも、一位を奪われていた。

 もうすぐ色別対抗リレーが始まるといった時間になっている。その時……


「紗由里ちゃん! 大丈夫!?」


 そんな声が聞こえた。かなり大きな声で、誰もがそっちを向いた。

「助けて~! 紗由里ちゃんが階段10段とばしに挑戦して足をくじいちゃった!」

 八千代級のバカが他にいるとは思っていなかった水裟にとっては衝撃だった。普通10段なんて飛ぼうとするなんて、どこのロシア人だ、と水裟は思った。


 結局、紗由里はリレーを走ることは無理となり、代わりを入れることにした。

 それに、一斉にみんなが水裟のほうを見る。

 水裟はクラスの女子で1,2位を争うほど、足が速い。今回の選抜は、最後だしということでやる気のある雛流と紗由里が選ばれていた。

 その代表の紗由里が怪我をして出れないとなると、もう水裟に頼るしかない。

「水裟、別にいいでしょ?」

 雛流がそう言う。それにつられて、矢筈と大牙も見てくる。

「……分かったよ」

 水裟はそう言って、鉢巻を巻いた。


 ■


 各生徒が準備を始める。一年生から始まるので、三年生はそこそこ後になる。

 ピストルが学校に響き渡り、リレーがスタートした。


 そして、一年生、二年生とバトンが渡り、ついに三年生にバトンが回ってきた。


 水裟が第二走者目。まずは雛流が走り出す。

 現在青組は三位を走っている。現在総合一位の黄組は一位を走っている。

 雛流はかなり速いペースで走り、二位を走っていた赤組を抜いて、二位へと上がった。

 そして水裟へとバトンが回る。

 水裟もどんどん黄組との差を詰めていき、急接近した。

 しかし、後半に差し掛かってくると、一気にペースが落ち始める。

 というのも、水裟は海梨姫から水氷輪で受け継がれているという、誰もが忘れているような設定を受けているため、極端に体力が無くなる。

 やる気がないよりも、こっちの方が心配で水裟は辞退したのである。

 後半では逆に大きく離され、矢筈へとバトンを渡す。

 水裟はその場でぐったりと倒れた。


 ――姫の分も……頑張らなければ。

 矢筈はそう思いながら走り出した。我が姫が必死になって繋いでくれたバトンを、しっかりと握って走っていた。

 しかし、黄組の走者もかなり速く、矢筈でもなかなか詰めることが出来なかった。

 その上、黄組のアンカーは陸上部で最も速いと言われている陸上好男(りくじょうすきお)で、大牙でも勝てる保証は無かった。

「大牙さん! お願いします!」

 そして、矢筈から大牙へとバトンが回る。そして、みんなは衝撃を受けることになる。


『大牙速ぇえええええええええ!』


 陸上好男をあっさりと抜いてしまい、そのまま独走優勝。みんな、開いた口が塞がらなかった。そして、水裟、雛流、矢筈の三人はこう思った。

 ――私たち意味ねぇえええ!


 □


 大牙の大逆転の影響で、青組が総合優勝。何ともパッとしない優勝である。

 しかし、どこか雛流、八千代といった幼馴染は嬉しそうだった。

「久しぶりに見たよね。水裟があんなに頑張ってるとこ」

「そうね。本当に久しぶり」

 こうして、体育祭は幕を閉じた。


 そして、長い長い二学期が本格的に始まる――

八「描写に悩んだ体育祭が終わったな!」

水「そんなリアルな締めくくりしなくても……」


次回もよろしくお願いします!

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