六十一. 最後の夏
雛流は白い翼を羽ばたかせながら地上に降り立った。白い雲を突き抜け、住宅で並ぶ日向町へと近づいていく。
そして薄い茶色の水裟の家についた。
「出来たよ~」
「不法侵入~!」
完成を報告してきた雛流に水裟がドロップキックをかました。そこでようやく水裟は入ってきた人が雛流であることに気づいた。
「ん? 何だ雛流か」
「いきなり何すんのよ……」
「人の家に入るときはインターホンを押せ」
「はいはい。すいませんでした」
雛流は適当に謝って家に入り、水裟の部屋に向かって歩いた。
雛流がコトンと机の上にネックレスを置き、冬菜に説明を始めた。
「これが、作り出したネックレス。ダークアイのような遮断機能をつけたからフィットもしやすいと思う」
冬菜は無言でネックレスを首につけた。
それと同時に水裟がカーテンを開ける。
三日ぶりくらいに水裟の部屋に光が差し込む。夏の厳しい日差しが差し込む。
「……どう? 冬菜」
水裟はカーテンを開けながら聞いた。
見る限り、冬菜には何の害もないようだ。余裕で日差しのほうを向いている。
「何の害もないです。とても楽ですね」
その感想を聞いたとき、雛流の表情が明るくなった。
「よし、天国に行くか!」
『おー!!』
水裟たちは翼を広げ、天国へと向かった――
◇ ◆ ◇
水裟たちは天等王の前に集合して話を聞いた。
冬菜は天国でも害はなく、通常と変わらずにいた。
「今ここに、天国護廷7が集結した。力、風丸矢筈。知、朝希雛流。明、如月八千代。笑、須永竜輝。音、氷川奏。体、柊大牙。暗、愛沢冬菜。お前達が活躍することを祈る」
天等王がそれぞれの名前を呼び、そう言った。
天国護廷7のみんなはただ頷いた。
これで地獄戦への準備が整ったわけではない、という思いをかみ締めながら。誰もが、ここはスタートラインと思っている。
揃っただけでは地獄と同じだ。しかし、それぞれの弱点が多すぎるのは天国である。
矢筈は力を持っているが、責任感が強すぎるため、すぐに個人戦に持っていってしまう癖がある。雛流と八千代は、他の人の協力がないと本当の強さを発揮できない。奏と大牙はまだ戦闘にそこまで慣れていない。冬菜は普通の体に感覚が戻りきっていない。須永はバカすぎる。水裟は個人の力を最大限には活かせていない。
それぞれの弱点を見据えての特訓した。
天国にも夏の日差しが降り注ぎ、汗を流しながら、過ごした。
奏や大牙も最後の夏の大会を終え、天国に引きこもり生活となる。
こうして全てを注いだ夏は終了し、世間は秋を迎える――――
八「次回はついに新学期だぜ!」
水「秋か~」
次回、新学期です! よろしくお願いします!