五十九. 意外な共通点
雛流は天国にある科学技術室へと入り込み、図書館から持ってきた資料などを活用して、開発を進めていた。
といっても、何から、どういう形、という、初歩的な設計が全く思いつかないのだ。
どんな物が逆にいいのか、という参考もないままに始まる開発。まるで手本がなく日本が初めて作った炊飯器のようだ。
目の前にある物は、機械的な物ばかりで、雛流が一番苦手としている分野に取り囲まれていた。
雛流は端に置いてあった小汚いイスを簡単に拭いて座り、しばらく考え込んだ……
◇ ◆ ◇
一方、水裟たちは、奏、大牙といった冬菜をまだ知らない人たちを家に呼び、紹介していた。
二人とも、最初は地獄の者が暗の水氷座という事実に驚いてはいたが、すぐに受け入れてくれた。
そこで水裟たちはたくさんのことを話した。夏休みにどこに行ったか、そこでどうしたか、とにかく思い出に浸っていた。
みんながみんな、忘れられない充実した夏休みになったようだ。冬菜はいろんな意味で重要な夏休みとなっただろう。
そんなことを話していると、奏がふとこんなことを言い出した。
「そういや冬菜ちゃん。冬菜ちゃんは学校に行ったりしないの?」
「学校……? あの、勉強するところですか?」
地獄にいたとはいえ、学校については知っているようだ。
奏に言われて初めて水裟は考えた。これから冬菜をどうするかだ。
雛流が開発の成功を前提として、ずっと水裟の家に置いておくわけにはいかない。まだ普通の感覚をうまく掴めていないため、いつ地獄の者が攻めてくるか分からないこの状況で一人にするのは危ない。そして何より、水裟の親は「いつ帰ってこれるか分からな~い。あはははは~」というので、もし冬菜が一人の時にタイミング悪く帰ってきたら説明がつかない。
そういうことを考えると、学校に入るか、雛流の開発を信じて天国に置いておくかのどちらかになる。
「それは雛流の出来次第だな~」
そう水裟は言い、雛流の開発成功を待った。
◇ ◆ ◇
そして雛流はというと……
「ああ~! 全く思いつかない!」
相変わらずこのとおりである。
苦手な機械作りや操作に入る前に、なかなか設計案が思いつかない状況だった。
図書館から漁ってきた物にも、作る方面ばかりで、設計の参考になるものは全然なかった。
最初の段階から全く進んでいない。車でアイドリングだけをしているような状況である。
ずっと悩んでいると「精進しておるの~」と、天等王がやってきた。雛流は、「すいません、精進してません」と、思いながら、どうもと簡単に返した。
「何に悩んでおるんじゃ?」
「せ……設計です……」
「なんと……」
さすがに天等王は驚いた。全然精進していなかった事実ではなく、雛流ともあろう天才がここまで苦労していたことについてだ。
すると天等王が、ピンッ、と人差し指を立てて、ヒントを与えた。
「水裟や奏といった二人は戦闘に共通してつけている物があるんじゃ。手軽だし、身動きもとりやすいな」
それで雛流はまた考え出す。
――水裟と奏が共通している戦闘に使うもの……
雛流は記憶を絞り、思い出す。
――水氷輪、水氷扇、弓矢、ブロンズアーチェリーの指輪……
そしてひらめいた答えは……
――アクセサリー……
八「次回は六十回だぜ!」
水「そうですね~」
八「主役は私か!?」
水「雛流だ」
水「次回もよろしくお願いします!」
八「ちょっと! まとめるな!」