五十八. 知の本業
「雛流が鍵となるってどういうことだよ?」
矢筈の言ったことをもう一度繰り返し確認して、水裟は言った。
「まぁ、知の水氷座に着く者の本業というやつです。元々知の水氷座に着く者は開発等をメインにやっていた人たちです。魂の墓を発明したのも、火裟姫時代の知の水氷座の者が作ったものですし」
知の水氷座の本業という物は、開発をメインとしている。それを象徴するように、魂の墓を作り上げたのも知の水氷座だ。
矢筈は知の水氷座に着いている雛流に、冬菜が害なく天国へ入れるような道具を作ってもらうという考えを示したのだ。
「だけどさ……雛流にそんなことできるかな? 確かにあいつは賢いけど……えぐいほど機械音痴だぞ?」
水裟は昔から雛流と遊んでいた。いわゆる幼馴染というやつだ。
水裟が、雛流が機械音痴なのを知ったのは六歳ごろ、小学一年生のときだ。
そのくらいの時期の子供はゲームにはまり出したりする。無論、水裟と雛流もそうだった。
そのころはゲームガールアドバンスというものが流行っていた。その中でもペケモンというゲームが流行っていた。その流行に乗って水裟と雛流もペケモンを買ってプレイしていた。
ボタンはABボタンに十字ボタン、スタートボタンとセレクトボタンという、少ない操作で楽しく遊べるという利点があった。そう、水裟も操作自体は簡単に覚えることができ、序盤から楽しく進めることに成功した。
しかし雛流はというと、移動はどんな初心者が考えても十字ボタンなのに、ABボタンで移動すると思っていたらしい。また、決定ボタンは明らかにAボタンなのにスタートボタンだと思っていたり、とにかく心配なほどに操作ができなかった。
それ以来雛流はメディア関連の物には関わらずにやっている。
生徒会の仕事も紙にシャープペンシルと、現代人とは思えない装備である。
「……そうだったんですか。何でも出来そうな人でしたけど」
「メディア系は全くダメだな」
そう言って水裟は立ち上がり、受話器をとり、電話番号を押した。もちろん、雛流の電話番号だ。
『もしもし?』
「おお、雛流か。ちょっとお願いがあるんだが」
『何?』
「作れ」
『何を!?』
「冬菜が天国に害なく入れる装置」
『ちょっ……誰!? 冬菜って!? 色々状況が掴めなんだけど!?』
ちっ、頭の悪いやつめ、と水裟は思った。
そして今すぐ水裟の家にやってくるように言い、電話を切った。
◆
雛流がやってきて、状況を説明し、雛流は一回で理解した。そこら辺が八千代と違って楽だ。
「つまり、知の水氷座の本業である開発を活かして、地獄の使者の冬菜ちゃんが苦しいことなく天国へ入れる装置を作って欲しいと」
「ああ、そういうことだ」
「でも……水裟は知ってるとおり、機械系は全く持って無理よ?」
「バカヤロー! ここでやらなかったら出番がなくなるぞ!」
「やるわ」
あっさりOK。やはり十話ほど出ていないと出番が欲しいそうだ。
こうして開始された開発。果たして雛流は完成させることが出来るのか?
雛「ここで大切なお知らせをします」
水「あれ? 何で雛流?」
雛「八千代さんだと重要なお知らせを任せられないという作者の考えによって」
水「なーる」
雛『というわけで、お知らせをします
この和の水氷輪を定期更新にします。毎週金曜日18時に更新されます。本格的に受験に入る前に3月分まで投稿できるよう頑張ります、と作者が言ってました』
では、次回もよろしくお願いします。