五十五. 水氷黒暗の旋風陣
「冬菜……」
自分は勝利したものの、肝心な冬菜が大きく傷ついてしまった。
水裟はすぐさま冬菜の元に駆け寄り、水氷輪の力を使って回復させる。その様子を見た風定が水裟に言った。
「ロクに人も守れない姫か。本当にお前は天国護廷7に頼ってばかりだな。地奈姫とは大違いだ」
「…………」
水裟はそれに反論しなかった。なぜかというと、それが真実だからだ。水裟もどこかで思っていた。自分は弱い。人に頼っている力なき者。ただ権利を持っているだけの人。その言葉が水裟の全身を駆け巡る。
水裟は勝てるかもしれない勝負を投げようと今思った。力ではなく、精神面でやられたのだ。
「そうかもしれない。私……力も心も弱いな……」
そう言ったとき、水裟の足元から声が聞こえた。
「それは……間違いです……」
何と冬菜が精一杯の力を振り絞ってそう言った。冬菜は自力で立ち、震える足に耐えながら水裟の肩を持ちながら、まっすぐに見つけて言い放った。
「あなたは敵である私を信じてくれた! 罠かもしれないのに助けた! そんな人の心が弱いだなんてありますか!?」
水裟には分かった。冬菜は自分の体を心配するよりも水裟の方を気にした。これは冬菜なりの恩返しだと。冬菜の目は「これはあなたから学んだものです」と語っていた。
「そういうことで、死んでもらうぜ」
風定はすでに剣を振り上げ、水裟に斬りかかろうとしていた。
「黒旋風!」
それを冬菜の黒旋風で弾く。手からでた爆風が剣を飛ばし、拾えないところまで飛ぶ。背中を見せたら危機一髪という状況を風定に突きつけた。
その技を見て水裟はあることにひらめいた。
それは天国で引きこもり特訓をしていたとき、休憩中に図書館により、本を読んでいたときのことだ。
少しでも暗の水氷心のことについて知っておきたかった水裟は、色々とそれに纏わる本を読んでいた。そのときに見つけた技がある。
『水氷黒暗の旋風陣』
暗の水氷心を持つ者と和の水氷心を持つ者との連携技。2人で旋風陣を放ち、真っ黒な旋風陣と水色の旋風陣が合わさってできる暴風の必殺技。その威力は計り知れないと書いてあった。
それをこんな不利な状況で思いついた水裟。
恭賀も起き上がり、「殺してやる」といって近づいてくる。風定も力の黒暗座につく者。剣を弾いたところで戦力は変わりない。
(やってみるしかないか……)
水裟は冬菜の手を握り、水氷扇を高らかに上げた。
「和月姫……?」
「倒そう、あいつら」
「……はい!」
冬菜もしっかりと水裟の手を握り、左手を大きく上に挙げた。
そして2人で旋風陣を発動させる。真っ黒な旋風陣と水色の旋風陣が合わさり、綺麗な紺色の爆風へと姿を変える。そしてそれを2人に目掛けて発射する。
「おいおい、何ですかあれ!?」
「…………っ!」
「暗の水氷心と和の水氷心の連携必殺技!」
『水氷黒案の旋風陣!!』
大きな爆風が2人に襲い掛かった……
八「お久しぶり! みんなのアイドル、八千代だよ!」
水「ストレスの塊、八千代だよ」
八「地獄に落ちるがいい! 水裟!」
水「生憎私は天国の姫だ。地獄に落ちない」
八「ぐぬぬ……やっと更新再開したかと思えばポンコツ作者がまた長期活動休止するだと!? 私の出番なしに活動休止するつもりか!?」
vaz「はい、そうです」
八「おのれ……」
水「まぁ、いいじゃないか。後書きでさえ出してもらえないやつが5人ほどいるんだから」
八「そ……それに比べればましか……」
水「ああ、むしろ恵まれている。さあ、次回予告を!」
八「次回、(五十六. 入ってきた少女)。作者は少女をタイトルに入れたいようだ!」
水「では……」
八&水「次回もよろしくお願いします!」