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五十一. いらない迎え

 何もかもが暗の水氷心に当てはまる……しかも地獄の者が。

 水裟にとっては考えられないことだった。水氷心って地獄の者にも当てはまる物なのか……そういった疑問を持たざるを得なかった。

 今、冬菜は水裟のベッドで寝ている。外に出た途端に倒れて、それっきり目を覚まさずただ寝ていた。大量の汗が冬菜から出ていた。

 ――しかし……何でいきなり倒れたんだ? 倒れていたにしろ、顔色は決して悪くなかった。外に出た瞬間にいきなり倒れだす……確か冬菜は地獄の中では光に強かったはずだ。光の影響じゃないのか……?

 そんなことを考えていると、ゆっくりと冬菜が起き上がった。さっきと同じようにきょろきょろしている。

「びっくりしたよ。いきなり倒れるんだから」

「……すいません」

「別にいいって。まだ苦しいんだったら家にいなよ」

「いえ、体は大丈夫なんですが……光が……」

「光?」

 冬菜によると、地獄の者は黒暗座に着くことで力を得る物らしい。水氷座みたいに着いても強くはならないの真逆だ。冬菜は今、黒暗座についていないがために、光の強さに負けてしまったと。

「てことはさ、冬菜って外に出られないんじゃ……」

「夜に出れます。街灯くらいの光なら大丈夫です」

 そう言って冬菜は夜に出て行くことを決めた……


 *


 あっという間に夜が来て、今度こそ冬菜は出て行くことにした。

「では、改めてお世話になりました」

「いいって別に。気をつけてね」

「はい」

 小さく返事をして冬菜は水裟の家を出て行った。

 その後に水裟が大きな声で冬菜に呼びかけた。

「冬菜! 苦しくなったらまた来いよ!」

 それには返事をせず、冬菜は暗い道を歩いていった。


 *


 ――これからどうしよう……

 冬菜は道を歩きながら考えていた。

 もちろん行く場所なんて無く、ただ水裟に迷惑をかけたくなかったから出ただけだ。

 それに敵である天国に助けてもらうというのは、地獄にとっては恥じるべき行為だ。捨てられたはずなのに地獄の事を引きずってしまっている。冬菜は本当の1人ぼっちだ。

 冬菜は店などに行くことも出来ずに、お腹が空き、眠たくなる。これこそが本当の地獄だ。今まで普通にやってきたことが何1つ出来ない。

 ――やっぱり泊めてもらえば良かったのかな……

 そんな甘いことも考えてしまった。それほどに苦しかった。(こんなのただのやせ我慢だ)と冬菜は思った。そんな自分が嫌で嫌で仕方がなかった。

「お! こんなところにいたか」

 突如、後ろから声が聞こえた。普通に振り返ったが、信じられない人がそこにいた。

「恭賀……!」

 冬菜の後についた暗の黒暗座に着いている男、恭賀だった。

「……何しに来たんですか?」

「決まってるでしょ~。冬菜さんを迎えに来たんだよ」

「迎えに?」

「そうそう。俺ってさ、自分より弱い先輩って嫌いなんだよね~。それなのに以前の天国戦では大活躍をしている。自分より弱いくせにそっちの方が名に残る。これが1番嫌だからさ……死んでもらいます」

 そう言って恭賀は1本の剣を振り下ろしてきた。何とかかわした冬菜だが、以前よりもだいぶ体が重い。勝てる気がしなかった。

 それでも戦うしか道が無いと思った冬菜は、双剣を取り出して、戦う覚悟を決めた。

水「次話、戦いの果てに冬菜が恥じるべき決断を……?」

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