四十四. 地獄の使者
突如グラウンドに現れた地獄の使者。目的は何かは知らないがとりあえず生徒達を危険な目にさらすわけにはいかない。そう思った水裟と矢筈は武器を持って地獄の使者に向かっていった。
「おお、やっと登場か、天国」
その地獄の使者は振り返り水裟たちを見た。鋭い目つきで人間をカスとしか思ってないような目だ。
「今日はお前らに用はないが……こうでもしないと用がすまないんでね!」
そう言うと男は一本の剣を取り出し、剣先を空に向けて構えた。その剣はやがて黒い妖気で包まれて、水裟たちに向けて思いっきり振った。そう、この技は……
「黒暗定紋風雷斬!」
黒い大きな斬撃が水裟たちに向かってはしってくる。これは現在の地獄最強の技、『黒暗定紋風雷斬』だ。地獄戦の時、その圧倒的な威力に水裟たちもすごく苦戦したのだ。水裟の記憶ではこいつは地獄護廷7の一員ではない。そんなやつでも使えるくらいに発展してきたのだろう。
――――だが、発展してるのは地獄だけじゃない!
水裟は水氷の指輪をはめた右手で水氷扇を高く上げた。すると水裟の足元から冷たい風が発生し、凍りつくほどの温度になった風が斬撃にぶつかっていった。
「氷の旋風陣!」
すると黒暗定紋風雷斬の斬撃はみるみると凍っていき、水裟の目の前で止まった。そのまま斬撃は地面に落ちた。
「へ~、結構やるじゃん」
「感心してる場合じゃないと思うよ?」
男が斬撃に気をとられているうちに矢筈が後ろに回っていた。そのうえ剣も構えている状態だ。
「雷剣!」
雷に包まれた剣で思いっきり斬った。男は肩の部分を斬られ、地面に膝をついて肩を押さえた。
「ここまでやるのは予想外だったな。おい! 悪いが助けてくれ!」
「ったく、一人で大丈夫とか言っておきながら……」
男が空に向かって叫ぶと、一人の女性が降りてきた。その姿を見て水裟たちは驚いた。何とそいつは日向祭りで戦った女性だった。
「あの時の……女!」
「女って言うのやめてもらえる? 瑠璃っていう名前があるんだから」
どうやら瑠璃という名前のようだ。
――――つくづく思うが地獄の奴って結構名前可愛いよな。交換してくれないかな。
水裟は全く戦いのことを考えてなかった。考えていたのは地獄の使者の名前のことだった。
「じゃあ瑠璃。あの技で一気に片付けてやろう」
「そうだな裕史。本当の目的にもこれで近づくだろう」
さっきから本当の目的といっているが一体何のことなのかさっぱりだ。地獄側としてもここで天国を潰さなくてもいいとは思っているだろう。実際、その行動が彼らにも表れている。だったら他に何の用事がある? 地獄がここにくるのは天国を潰すことぐらいだろう。本当に謎だ。
それとあの技も気になる。相当な技だということは会話から分かる。水裟と矢筈は攻撃に備えた。
「くらえ! 爆発パンチ!」
瑠璃が音を出し、水裟たちの手前で爆発を起こす。それの影響でもちろん水裟たちは後ろに下がった。すると正面から一気に裕史が突っ込んできた。その裕史は剣をしまいナックルを構えていて、そのナックルには爆発で纏った熱気があり当たったらやけど程度では済まないかもしれない。避けたいものだがあまりのスピードにかわせない。
「氷の舞!」
水裟は咄嗟に氷の舞を発動させた。やけどは逃れたものの凄い威力のパンチを受けてしまった。水裟たちはその場でぐったりと倒れた。
「さ~って、本題にいくか!」
裕史が目的地に行こうとしたとき……
「ヒーローは後から登場するものだ! 須永竜輝参上!」
ヒーローではないが何かやってきた。何か秘策でもあるのだろうか……
次話、須永が新必殺技!