四十三. 体の水氷心
水裟と矢筈は今日も部活動体験に行くことにした。矢筈は野球部にも行ってみたいといったので、今日は野球部に行くことにした。
水裟からしての野球部の印象は、毎日とっても熱心に練習していて、一致団結して同じ目標に向かっている。青春真っ盛りなイメージがある。
矢筈はうきうきした気分で野球部の練習場に向かった。
*
2人は影月高校のグラウンドにやってきた。野球部の練習はもう始まっていて今はジョギング中のようだ。
「おおー! あれが野球部ですか! 何か青春って感じですね!」
おそらく野球部は夏の甲子園を目指して毎日の練習を頑張っているのだろう。改めて本当に熱心だと思う。
しばらく見ていると紅白試合が始まった。大会も近いので実戦経験をつもうということなのか。試合となるとただの見学とは違ったように感じる。
試合が始まりピッチャーが渾身のストレートを投げた。だが初球打ちでボールは大きく飛んでいった。
「あっちゃー! あれは取れませんね~」
矢筈が手で頭を軽くたたいて言った。
あれだけ飛んだら誰も取れるわけがない。下手したらグラウンドから飛び出るくらいの強さだ。どうせ1点取られるなと思った水裟。……だが……
「アウト!」
「え!?」
まさかの言葉が聞こえた。今確かに審判はアウトと言った。あんな距離でキャッチできる超人がどこにいるのか……
そいつは赤色の髪の毛で少しボサボサした髪型、締まった体にスラッとした身長。
「ああ、柊か……あいつ運動神経いいもんな~」
柊大牙、野球部のキャプテンで、足が早く体力もあり、リーダーシップもあるというばりばり体育系の男子だ。結構イケメンで女子のもモテる。
あんな球を取れるとは凄い運動神経だなと水裟は思う。
それを矢筈は目をキラキラさせながら見ていた。試合を楽しんでいるという目ではないが……
「姫」
「どうした?」
「大牙さんって体の水氷心持ってますよね!」
「お前もそう思ってたか……」
体の水氷心の特徴は、運動神経がよくリーダーシップのある人だ。大牙は運動神経はとてもいいし、野球部の部長だからリーダーシップもそれなりにあるはずだ。
「スカウトしてみる価値はありますね」
「そうだな」
この後終わったら早速考えようと思ったその時……!
『誰か助けてくれーー! キャプテンが何かに殴られて血が出てる!』
その声に1早く反応した水裟と矢筈はすぐにグラウンドに入ってその場所へと向かった。するとそこにいたのは……
「ったく、ピーピーうるせぇな。ちょっと黙れ!」
そこにいたのはナックルを持った地獄の者だった……
次話、突如現れた地獄の者と戦う!