四十二. 陸上部の恐ろしい奴
今日も普通に学校だ。
最近、矢筈はあることが気になっていた。それを今日聞いてみた。
「姫って、部活動やってないんですか?」
「部活?」
矢筈は一応帰宅部だ。雛流は弓道部。八千代は意外と美術部。須永は落語研究会。奏は吹奏楽部。天国護廷7の皆も様々な部活に入っているのだが、水裟の部活動だけは知らない矢筈は、そのことがずっと気になっていたのだ。
「何言ってるんだ矢筈。こう見えても私はその部活のエースなんだぞ!」
「ええ!? 本当ですか!? 一体何部なんですか?」
「帰宅部のエースだ!」
自慢げに言われても……と思う矢筈。
「最近帰るのが遅いから驚かれているんだけどな」
特に驚かれたのは、雛流と一緒に八千代と矢筈の勉強会をしたときだそうだ。あの時帰った時間は6時くらいだった。翌日には、『おい和月! お前が6時下校なんてどうしたんだ!?』や『もしかして具合悪いの?』とか色々といわれたそうだ。その上影月新聞に『エースがまさかの不調!? 和月水裟、ありえない6時下校』という見出しで載ったこともある。それほどに水裟はいつも早く下校する生徒だったのだ。
「僕も今は帰宅部ですが……ちょっと今日部活見学しようと思ってるんです。一緒に行きませんか?」
「ああ、いいぞ」
こうして放課後に部活見学が決定した。
*
それで放課後。ほとんどの生徒が部活動に向かう中、水裟と矢筈はどの部活に行くか考えていた。
「というかここ、部活動めっちゃ多いですね」
「それなりに人数もいる学校だからな」
体育系では、野球部、サッカー部、バスケ部、バレー部、陸上部、ラグビー部、弓道部、アメフト部、テニス部など、他にもたくさんある。文化系だと、吹奏楽部、美術部、落語研究会(?)演劇部、家庭科部などがある。これを全て回るのは時間の問題だ。
「矢筈はどこに行きたいんだよ。文句言わずついていってやるから」
「ん~、陸上部ですかね」
「絶対嫌だ!」
「いきなり文句言ってるじゃないですか! 自分で言ったんだから陸上部に行きます!」
「さ~て、私も部活動するか~」
「帰らないでください」
こうして水裟はむりやり陸上部の活動場に連れて行かれた。
それで陸上部の活動場にやってきた。とりあえずめちゃくちゃ走ってる。と、水裟たちが来た途端に陸上部女子が休憩時間となったようだ。すると、水裟はもっと帰りたがった。陸上部のキャプテンが水裟の存在に気づき目をキラキラさせながらこっちに走ってきた。
「水裟ちゃ~ん!」
「く……来るな~~~!!」
矢筈に捕まって逃げられない水裟はもがいて、意地でも逃げようとした。しかし逃げることはできず、キャプテンに捕まってしまった。キャプテンは水裟に抱きついた。
「水裟ちゃん! やっと陸上部に入ってくれるんだね!」
「絶対入らん! しつこすぎるぞ紗由里!」
「否定する水裟ちゃん……可愛い。さぁ! 入部届けはここにあるよ!」
「だから陸上部は嫌だったんだ!」
陸上部キャプテンの半田紗由里は、足が速くて毒舌でSで可愛い顔の水裟が大好きなのだ。つまり紗由里は、ドMで女好きという変態なのだ。
――――陸上部は、こういうことになるから嫌だったんですね……
矢筈は心の中で謝った。
翌日。
「姫! 陸上部の次はどこに行きます?」
「どこでもいい……陸上部以外なら……」
水裟の心は折れていた。
次話も部活見学。
そこで大発見が……?