四十一. 自分だけの必殺技
部分 朝、生徒たちは普通に登校してくる。友達と仲良く話しながら。
そんな様子を本館4階にある生徒会室から見ていた雛流は、修学旅行で聞いたあの言葉が頭から離れなかった。
『それと、個人の必殺技とか必要かな』
これは修学旅行の部屋で水裟と奏の水話のときに聞こえた内容だ。これを聞いてから雛流は悩んでいた。
――――私は、矢筈君がいないと強い技が出せない。地獄戦の時も、矢筈君がわざわざ戻って来てツインガンに雷を注入してくれた。私が1人で戦う力があれば、矢筈君もちょっとは威力の高い雷ノ鳥群を撃つことができたんじゃないだろうか……
実際雛流が使える技は電磁砲しかなく、それも矢筈がいないと発動できない技だ。ツインガンで簡単に弾を撃つことはできるのだが、あんな威力では地獄には通用しない。
――――特訓でもしてみようかな……
その時チャイムが鳴り、SHRが始まる5分前となった。雛流はすくっと立ち、教室に向かった。
*
ここはSHR中の3-E教室。ミスター・チョークが連絡事項を話す中、全く耳に入らず……というかいつも入れる気がないが、八千代は机と向き合ってボーっとしていた。八千代も雛流と同じで、水裟の『それと、個人の必殺技とか必要かな』が気になってしょうがなかった。
八千代も使える技はシャイニングブーメランのみで、これは須永との合体技だ。光剣が使えるが、はっきりいって眩しいだけだし、何かに注入するような技だ。よって八千代は相手にダメージを与える自分の技を持っていない。普通にビー短で斬ることも可能だが、これも雛流と同じく地獄に通用する威力ではない。
――――水裟も天国の図書館で氷の旋風陣のやり方を見つけたし……今日図書館に行って、それから特訓を……
「如月! 机とにらめっこしてんじゃねぇ!」
必殺チョーク投げ発動! (最近飛んでくる回数多い)
――――必殺技を身につけたら1番最初にこいつを殺す!
心の中でそう思った八千代だった。
*
学校が終わった後、八千代はすぐさま天国に行った。そして天国に着くと、図書館にダッシュしていった。
「あれ? 八千代さん?」
「雛流ちゃん!」
そこには雛流もいた。手に取っているのは資料で『知の水氷心』という題名だ。おそらく代々の知の水氷心のことについて書いてあるのだろう。
「八千代さんはどうしてここに?」
「自分だけで使える技のことについて、ここならいろいろあるかな……って」
「そっか……私と一緒ね。私も、矢筈君がいなくても十分戦える技を得るためにここに来たんだ」
「そうだったんだ……」
同じ気持ちをお互いに持っていて、少し驚いた八千代と雛流。その後、雛流はある場所に指を指した。
「あそこに明の水氷心の資料もあったわ。一緒に勉強しましょ!」
「うん!」
八千代は資料をすぐに取りに行った。
しばらく2人は資料を読んだ。簡単な漢字で何度も聞いてくる八千代に雛流は少しイラッとした。
それからまたずっと読んでいた。そしたら2人ともやっと必殺技のようなページを見つけた。
「私はこれがんばってみようかな」
雛流が選んだ技は雷球銃。2つの銃口を合わせて、そこから電気エネルギーを発生させ、大きな雷の球を作る。それを相手にぶつけるという技だ。
「私はこれ! えっと……とら……ひょう……」
「虎豹短斬じゃない?」
八千代が選んだのは虎豹短斬。ビー短を強く光らせて、精一杯にグリップの部分を握り、思い切り放つ。すると、虎と豹の幻が現れて、たちまち相手を襲ってしまうという技。威力はかなり高いと書かれている。
「よし! 八千代さん。明日から一緒に特訓ね!」
「了解です!」
こうして2人の特訓が始まった。
え~、来そうな質問を先に答えておきます。
Q. 電気エネルギーをためるのにどうして雷球銃には矢筈君は必要ないの?
A. 雛流のツインガンには、多少の電気エネルギーがあります。そういう特性を持ったツインガンなんですね。お忘れかもですが、一応雷電銃という名前ですから。で、電磁砲にはツインガンでは補えない莫大な電気エネルギーが必要です。それには矢筈君が協力し、雷球銃にはツインガンの電気エネルギーだけで足りるということです。
次話、矢筈が水裟に対して気になることが……