二十九. 水氷心大作戦!
天国へと帰って来た水裟は、皆に全てを話した。海梨姫の死、かばった思い、水氷の指輪のこと、とにかく全てを……
海梨姫の死体を、王が背負い、どこかに連れて行った。どこかは分からないが、お墓だろうなと水裟は思った。
そのまま、皆はその日を終えた……
*
翌日、春休みに入っている水裟たちは、1日中天国にいることもでき、楽に過ごしていた。そんな中、水裟、雛流、八千代、須永の4人は、矢筈に呼ばれたため、テラスにいた。呼んだ本人が1番来るのが遅いという定番のものになっていた。
「遅いな……矢筈」
水裟が腕時計を見る。約束の時間はもうとっくに過ぎている。
そんな時、やっと矢筈がやってきた。たくさんの資料を持っていたので、それを探すのに手間取ったのだろう。
「すいません皆さん。なかなか探してた資料が見つからなくて……」
「いいって。でさ、話って何?」
水裟が早速本題を聞く。ここに呼んだ理由を矢筈に聞いた。
「今日、皆さんには話そうと思っていることがあるんです。その内容は、残っている『音』『体』『暗』の水氷心の特徴についてです」
「なるほどな……」
「新学期が始まってくると、なかなか一緒にいられる時間がないと思いましたので、特徴に当てはまる人を見つけたら、他の皆に報告を。というわけです」
新学期からが、水氷心スカウトの本格的な始動となるだろう。3月は、須永で手一杯だったが、ここからは1年という期間がある。色んなイベントを考えると、かなりやりやすい方向にはいけるだろう。
「で、特徴は何なの?」
雛流が矢筈に問いかける。
「まず、音の水氷心ですが……絶対音感の持ち主で、リズム感がとてもある。体の水氷心は、運動神経がとてもよく、リーダーシップがある人。暗の水氷心は、ずっと静かでクール。本当に一人ぼっちで、表情に出ることは滅多にないが、どこかで助けを求めている人……以上です」
それを聞いた途端、雛流がひらめいた表情を浮かべた。
「音の水氷心は……吹奏楽部や軽音楽部、ジャズ系とかがあるから、幅広く見ることができるわ」
雛流の考えは、音の水氷心は、まず、音楽系の部活を見ていくのがいいと判断したのだ。普段から音に触れている人なら、絶対音感を持っている人もいるかもしれない。
影月高校は、部活動がとても盛んで、たくさんの部活動がある。
体の水氷心もそう考えると、少しはやりやすい……だが。
「暗の水氷心……これがどうにも……」
矢筈が困った表情を浮かべる。
ずっと静かな人はもちろんたくさんいる。だが、それでも1・2人は友達がいて、ちゃんとした話し相手がいる人が多い。助けを求めたりする人がいるのだろうか。
これまで考えて、音、体はイベント的にはやりやすそうだ。あとは、暗をどうするか……
「まぁ、まだ時間はあるんだし、ゆっくり考えよう」
水裟がそう仕切り、水氷心の話は終わった。
しかし、矢筈は新たな資料を取り出した。
「姫。これも見てもらいたいんです」
「何の資料だこれは?」
「水氷の指輪についての本でして……」
矢筈が取り出したのは、水氷の指輪についての本だった。
「これに詳しく書いてあるそうです」
「そっか。借りていいか?」
「ええ、もちろん」
「ありがと」
そういい、水裟は本を受け取った。
その夜、水裟の部屋……
水裟はしっかりと水氷の指輪についての本を読んでいた。
(ここに、強くなる秘訣が載っているかもしれない……)
そう思いながら……
次話、いよいよ三十話だ!
……結構早くたどりついたな……
次話、ちょっと急展開の予定です。