二十五. 雷ノ鳥群
矢筈は一大決心をした目をしていた。ある技を出すということだ。
「雛流さん、ちょっと下がっててもらえますか?」
「え?どうして……」
「今からやる技……コントロールできる自信がないからです」
矢筈の表情を見ていると、相当大きな技なのだろう。
雛流は、矢筈の言う事に従い、後ろへと下がった。
「何する気だ?矢筈の奴」
風定、そして他の3人も不思議そうな顔をしている。
「では……やりますか」
矢筈は剣を持ち、刃を下に向けた。そのまま地面に突き刺した。そして、柄の部分に黄色の魔法陣を描いた。それをし終わった後、矢筈がニッと笑った。
「風定さん。これが、力の水氷心の最大の技です!」
黄色の魔法陣から、無数の黄色い鳥たちが大空へと飛び立ち、ずっと雷を落とし続けている。
「これが、力の水氷心必殺技、『雷ノ鳥群』だ!」
上空に飛び交う鳥たちが、地獄の者たちに雷を落とし続ける。矢筈も、ずっと剣を握りながら、雷のパワーを注入している。
雷ノ鳥群は、鳥が一回雷を出すと、その鳥は消滅してしまう。よって、雷のパワーをずっと注入しないと、本当の雷ノ鳥群が出来ないのだ。そうなると、矢筈はものすごい体に負担がかかるのだ。それを覚悟した上で、雷ノ鳥群をすることを決心した。
矢筈は今も、雷のパワーを注入し続けている。
「応戦しろ!絶対死ぬなよ!」
地獄側も必死で応戦を試みる。剣で防いだり、黒暗定紋風雷斬で鳥たちを一掃したりしている。だが、鳥たちはずっと出続ける。次第に、地獄の者たちも、体力勝負となっていった。もちろん矢筈も。
そんな背景を、雛流は遠くから見ていた。
「すごい……矢筈君……」
今まであまり見なかった矢筈の本気の姿に、雛流は驚いていた。そして、本当に1人で4人との近距離戦に勝てそうという状況だったから。
だが……何だかやばい気がしている。
もちろん、今は矢筈の方が優勢だ。あまりの鳥の多さに、地獄側も混乱している。それに、何度か雷を食らっている。
でも、何だか変な感じがする……
そんな気持ちを抱きながら、雛流は戦いを見ていた……
今も鳥を出し続ける矢筈。もう体力は限界を超えていた。
やっと、鳥を出すのをやめた矢筈は、その場で倒れた。本当に苦しそうな表情だった。
地獄側では、すさまじい砂煙が巻き起こっている。
2人とも勝ったと思った……だが!
「ふい~。アブね~アブね~」
血を手で拭いた風定が、普通に立っていた。
そのほかの3人も、普通に立っている。
「あれはびっくりしたわ。だが、それも敵わなかったな」
「うそ……だろ……!?」
「終わりだ。天国護廷7、力の水氷心、知の水氷心」
4人が一斉に黒暗定紋風雷斬をした。
ボロボロの状態の2人は動けなかった。その場で大きな爆発が起こり、2人はモロに黒暗定紋風雷斬を食らってしまった。
砂煙がおさまった時に見えたのは、矢筈と雛流が倒れた姿だった……………………
次話、水裟たちに勝機は……?