二十三. 守り通す約束
予告どおりです。
二十三話どうぞ!
黒暗定紋風雷斬をモロに食らった矢筈と雛流は、地面に倒れたまま立ち上がることが困難な状態になってしまった。絶体絶命の状況だ。
「矢筈、やっぱりお前らに地獄に勝つのは無理だ。攻撃大国の地獄にはいつになっても勝てない」
風定がそう言った。それを聞いていた矢筈は、悔しそうな表情で歯をくいしばっていた。雛流も同様に歯をくいしばっていた。
「まだ……まだやれる……」
剣を支えにして、矢筈は立ち上がった。
「そこまでやる必要ないだろ矢筈。これ以上やったら……死んじゃうよ?」
「このまま倒れたままだと……姫が殺されます……僕が……姫を守るって……約束……しましたから」
そう言って、矢筈は剣を構えた。足がとても震えている。立っているのがやっとの状態でも矢筈は戦おうとした。姫を守るために……
矢筈は、風定に向かって突進した。スピードは全然ない。
あっさりと剣で受け止められ、弾き飛ばされた。
それでも、また立ち上がって攻撃を続ける。
そして、また弾き飛ばされる。
それからも、何回も矢筈は攻撃を続けた。だが、全て弾き飛ばされた。それでもまた立ち上がる。これを繰り返していた。小匙、菅鬼、由良は、退屈そうにそれを見ていた。王と海梨姫は、じっと見ていた。全く助けようとしなかった。あの時と同様、素直に矢筈の背中を見ていた。赤色に染まった背中を……
矢筈が戦っているのを見た雛流は、意地で立ち上がった。そしてツインガンを風定に向ける。
だが、由良がすぐに反応して、雛流の元へやってくる。
「今も風丸矢筈と同様だよ。このままやり続けても勝てない。やらなかったら死なないから、諦めた方がいい」
そう言われた後、雛流はニッと笑いながら言った。
「仲間が頑張ってるんだ……1人の人間を……守るためだけに……1人より2人の方が……何もかも楽でしょ……?」
ツインガンを由良に向けて、発砲しようとした。しかし、力が入らず、引き金を引くことすら出来なかった。手のひらで全力で押しても……
「やっぱり無理なんだって。勝てるわけがない。武器も使えない人間は……」
その時、引き金が引かれた。雛流が引いたわけではない。矢筈が精一杯の力を振り絞って引いたのだ。
「雛流さん……勝ちましょう……」
「分かった……この1発、無駄にしない」
「雷剣!」
雷をまとわせた剣を、ツインガンに注入する。その状態で、ツインガンを由良と風定の2人に向けた。
『電磁砲!』
一直線にビームが発射された。目の前の由良と、遠くにいる風定に向かって……
由良の前では大きな砂煙が捲き起こった。風定は距離があったため、あっさりとかわしてしまった。
「そんな……電磁砲が……」
由良は普通に立っていた。パッと見、傷はなかった。
「万全の状態だと、黒暗定紋風雷斬に匹敵する威力も、死にかけじゃあんなものか」
由良がそう言った。
もう、勝てることは0%になった。電磁砲より強い技が、2人にはない。
「矢筈君……やっぱり諦めるしかないのかな?」
雛流が問いかける。
「諦めるのは……早いですよ?」
「へ?」
雛流は不思議そうな顔をした。
「あの技を……出すしかありません」
矢筈の目つきは鋭かった。何かを心して決めたように……
次話は水裟たちのほうです。