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百十九. 信頼の天国砲撃

 どんどんと闇に染まっていく光。それはまさに、水裟たちの敗北を意味していた。

 ヘブンバースターの威力は落ちていき、ヘルバースターの威力は変動なし。


「くそ……っ!」

 必死で水氷扇に力を込める水裟だが、無駄な足掻きだった。黒麻酔剣で浸食された体はもう水裟のものではない。全身が痺れ、動けども力が入らない。


 ――ここまでやってきたのに。ここまで地獄を追い詰めたのに。結局、歴代と共に散ってしまうのか。


 歴代の天国も何度も地獄に戦いを挑んだ。しかし、その全ての結果が敗北。無論、全てが揃っていた火裟時代も。

 このまま闇に呑まれてしまうと、全てが黒に染まる。天国や海極、炎石。それに地上にまで被害が及び、地球ごと地獄の物になってしまう可能性だってある。そんなものを放っておいてはいけない。


 その全員の気持ちが激しく交差するとき、やがて光は増す――。



 水裟の手にある水氷扇はしっかりと前を向いていた。自分では挙げられないはずの水氷扇が。

「久しぶりだの~、水裟~」

 この陽気な声。誰もを元気にする魔法の声。温かく、優しい、思いやりのある声が水裟の鼓膜を揺らした。

「久しぶり、水裟」

 それとは対照的な綺麗で透き通った大人しい口調。

「火裟姫……海梨姫……?」


「一人で抱えるな。みんながいるじゃろう」

「……一人で抱えなきゃ、みんなに迷惑が……」

「何も分かってないのね、水裟。誰も迷惑だなんて思ってないの。あなたが弱いか強いかは知らない。でも、彼らが幸せなのは知ってるの」

 そう言われて、水裟は振りかえって仲間の表情を見てみた。


 強く信頼している矢筈。いつも馬鹿な顔をしているのに真剣な八千代。相変わらずクールで、でもその瞳の奥は光っている冬菜。お姉さんらしく、懐かしい雛流。何事にも真っ直ぐな大牙。いつもと変わらない優しい奏。馬鹿、須永。


 みんなみんな、その表情には迷惑という二文字は書いてなかった。信頼、という二文字が書かれていたのだ。


「放ちましょう、水裟。たくさんの人々のためにも」

「痺れておろうが、私らが一緒に持ってあげるぞ!」


 ふっと手と心が軽くなる。今の今までずっと重い荷物を持たされていたかのように、スッと。

 そして、今一度、光が発射された。


『ヘブンバースター!』


 その光は闇の真ん中を貫き、ただ一直線に進んでいった。周りはまだ闇のまま。だが、真ん中だけは、強い光が広がっている。


 そのまま海極にいる全員の視界はフラッシュし、白く染まった――。

次回、最終回となります!

ぜひぜひ読んでください!

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