百十六. 爆龍の波
速い。目にも留らぬ速さでどんどん傷を付けられていく。
少し良い気になっていたのかもしれない。自分は強くなった。頼らずとも戦えるようになった。そう思い込んでいたのが、最大のミスだったのかもしれない。
水色がメインの和服はところどころ破れており、水裟はその場で膝をついてしまっている。
水裟も天国護廷7のメンバーと同様、地奈姫に戦いを挑んだのだが、正直レベルが違う。水神打撃などの威力の高い技を何度も試みたが、そのたびに躱され、威力の高い技で反撃されてしまう。
「やっぱりあなたじゃ無理なのよ。力もなく、地面に膝を付く姿が似合っているわ」
それにあまり否定できない自分がいる。やっぱり敵わなかった。その言葉だけが自分に重く圧し掛かる。
しかし、現時点でとても動けないほど苦しいというわけではない。少しでも、少しでもダメージを与えるしかない。
先ほどから騒がしかった護廷7同士の戦いも治まっている。ということは、どんどんこちら――水裟の方に近づいてきているのだろう。それまでに、やはりちょっとでもダメージを蓄積させておくしかない。
水裟は再び立ちあがり、水氷扇を構える。水氷心の受け継ぎの影響で長期戦にはあまり持ちこみたくはない。それもあってか、自分の想像より勢いよく走っていた。
「氷の旋風陣！」
足元から水色の冷たい風が発生して水裟を包み込んでいく。やがて周りからは姿が見えなくなり、旋風の先端は地奈姫の方へと向かっている。
その風に乗って地奈姫に急接近し、一気に攻撃を仕掛ける。
「水神打撃！」
大きな魔神が水裟の背後に出現し、大きく振りかぶって拳を降ろす。
しかし、地奈姫は手に持っていた剣でそれを軽く払ってしまい、魔神は水となってしまう。
やはり、どうしても今までの技では貫くことが出来ない。ということは、最終調整で身につけた技で立ち向かうしかないのだ。
水裟は自分に向かって振られてきた剣を流し、水氷扇を手と手の間に挟んで合わせる。すると水裟は青色に光り出し、やがてその手から水が回転しながら溢れだす。
さすがに見たことのない技で動揺したのか、地奈姫もすぐさま剣を振りかぶり、黒い妖気を纏わせる。
そのまま水裟は水を発射させる。それと同時に地奈姫も黒暗定紋風雷斬を放ち、対抗する。
「水神爆龍波！」
「黒暗定紋風雷斬！」
しかし、水裟にとってはこれこそが狙いである。ただ技を当てるだけではまず勝てない。しかし、相打ちで爆発を起こすことによって少なからず大きなダメージを与えられるはずだ。自分も受ける捨て身の技になってしまうのだが。
水裟と地奈姫との間で大きな爆発が起き、二人の姿は煙に包まれた――。
あと三、四話で終わる予定です。
お付き合いください！
