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百十五. 雷炎と電気網と虎と豹

サブタイトル、「と」が多くてすいません^^;

 あの技を放つしかない――。


 もう行く道は一つしかなかった。普通に斬り合って投げ合ってしていても、人数の関係もあるし、力の面でも勝つことはほぼ不可能。

 だったら、この未完成の技で立ち向かうしかない。矢筈と須永は今一度地獄護廷7を視界に収める。

「……行きますよ?」

「おお……!」


 矢筈は思い切り地面に純白の剣を刺し、握りの部分に力強く雷の力を注入させていく。すると柄頭から黄色の魔法陣が出現し、無数の鳥が飛び交い始める。

 正直、この時点では地獄護廷7も見飽きた技だ。コントロールできるようになって更に厄介にはなっているが、それでも何度も見た技に引っかかることなどはない。

 地獄護廷7の面々は剣を構え、矢筈の方へと急接近していく。元々は人間だということを忘れさせる速さで向かってくる。


「今です! 須永さん!」

「行くぞ!」

 しかし、この技はそれだけでは終わらなかった。後ろで構えていた須永のブーメランは赤色に煌めき、炎を上げていた。そのブーメランを純白の剣の柄頭にある魔法陣に向けて投げる。すると魔法陣の上でしっかりとフィットし、ブーメランが回転し始める。

 やがて魔法陣の色は黄色からオレンジ色へと変化し、徐々に雷の鳥もオレンジ色になっていく。

 これが、矢筈と須永の協力技、『雷炎(らいえん)ノ鳥群』だ。


 雷炎ノ鳥群は不規則に地面に向かって炎と雷を放って行く。コントロールが出来るようになった雷ノ鳥群よりも、ある意味対処し辛い。

 地獄護廷7もどこか慌ただしくなってきた。簡単に躱せていた雷ノ鳥群からいきなり、こんなに対処し辛い技が発動させられると無理もない話なのだが。


 そのうえ、鳥の数が次第に増えてきている。それは矢筈の最大限の力を注いでいるからなのだろうか、はたまた須永がこの技に加わった影響なのか、それも分からない。

 しかし、どんどん地獄側のテリトリーは減っていった。今となっては大ぶりの雨を躱すような状況になっている。


 風定を除く地獄護廷7はこの技の前にひれ伏した。全身が焦げて、もう立てないような状況になっている。

 唯一立っている風定は、他のメンバーと同じくらい体が焦げているが、訓練の影響のためか、まだ立っていた。


 矢筈もとうとう力がなくなり、雷炎ノ鳥群は消え去ってしまった。

「……まだ立っていられるのですか……」

「こいつらとは鍛え方が違うからな……」

 しかし、その二人とも、息を荒くして疲れた様子だった。そして、須永も多大な力を先ほどの技に注ぎ込んだため、もう技など出せない状況だった。


「悪いが……お前たちには負けてもらう」

 風定は黒い妖気をこれでもか、というくらい剣に注ぎ込んでいく。黒暗定紋風雷斬が来ることなど、百も承知のはずだが、もう矢筈と須永には対抗する力が残っていない。ここで待つしかないのだ。

「俺たちの勝ちだ! 黒暗定紋風雷斬!」


 驚くほどの大きさ。これが一つの家なのではないかと思えるくらい。こんなのを直に受けてしまったら、敗北どころか命まで消えてしまう。

 だが、対抗も出来ない。ここで運命は尽きたのだ――。


『虎豹短斬!』

『エレクトリックボルテージ!』


 ――そう、諦めて瞬間だった。矢筈たちの背後から可愛らしくも逞しい声が鼓膜を揺らした。すると、矢筈たちを通り過ぎた虎と豹の幻。それと、網状になった電気のトラップが黒暗定紋風雷斬に立ち向かっていった。

 網状の電気がまず黒暗定紋風雷斬を包み込んで、動きを止める。それに虎と豹の幻が黒い衝撃波を壊そうとする。

 相打ち……いや、若干虎と豹が押している。黒い衝撃波はみるみる縮まり、やがて、黒い光を辺りに散ばせて消えてしまった。


「雛流さん、八千代さん!」

 その技を放ったのは黒麻酔剣でしばらく戦線離脱していた雛流と八千代。お互い、新しく身につけた技で黒暗定紋風雷斬を消し去ってくれた。

「で、どうする? 地獄護廷7で一番強い人~」

 と、八千代が偉そうに風定に向かって言う。こう、調子に乗り出す八千代は本当に鬱陶しいのだが、風定は両手を挙げて、

「降参だ」

 と言った。


「しっかしまぁ、あれからよくここまで来たもんだ」

 風定は腰を降ろして矢筈たちに言う。

「珍しいですね。降参なんて」

「生憎もう戦う力は残ってないしな。それに、そっちにはまだ戦力があるみたいだし。なぁ、冬菜?」

 と、風定が言われて初めて気づく。ずっと前から傍に冬菜は来ていたのだ。

「あれ、冬菜さん、いつの間に……」

「その前に、あなたたちはもっと周りを見て技を放ってください。私が間に合わなければ八千代とかいう馬鹿と他二人は黒焦げでした」

「馬鹿言うなぁあああああああ!」

 と、何だかいつもどおりの盛り上がりを見せる天国護廷7。

 それに風定はスクッと立ち上がり、更に海獄の端を見る。

「……言っておくが、まだこの戦いが終わったわけじゃないからな。勝つのは……地獄だ」

 そう言って風定は仲間三人を抱えて行ってしまった。


 そう、まだ戦いは終わっていない。水裟と地奈姫の戦い。そして、全精力を注ぎ込む、天国と地獄の争い。

 矢筈たちも水裟の元へ向かって駆けだした――。

次回は水裟と地奈姫です!

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