百十. 生半可な光
海極のど真ん中で繰り広げられる戦い。その戦いの中には天国護廷7の矢筈、八千代、雛流、大牙、須永がいる。それらと相手するのは風定、雷紋、小匙、明莉、菅鬼の五人である。
「……だいぶ技に磨きがかかっているな」
風定は剣をするりと払ってから、矢筈の方を見て言う。
前回の戦いでの雷ノ鳥群は、バラバラで、威力はそこそこにあったものの命中率が悪かった。しかし、今の雷ノ鳥群は威力も命中率も上がっている。やはり、風定の考えは正しかったのだ。生半可な気持ちで挑むとやられるというのは。
「一気に攻めましょう! 八千代さん! 須永さん!」
『おう!』
天国護廷7は最初から攻撃の姿勢を変えない。どんどん地獄護廷7の方へと走っていき、ビー短とブーメランを構える。
その途中、八千代はビー短に光を纏わせ、須永のブーメランに注入させる。そのまま八千代は走る。須永は足を止め、大きく振りかぶって上空へブーメランを投げた。
ブーメランが限界まで上に上がった時、八千代はそのブーメランの前でビー短を構えていた。
「シャイニングブーメラン!」
太陽のように輝くブーメランが地獄護廷7の面々を襲う。
地獄護廷7の五人はシャイニングブーメランの光に目を閉じかけている。やはりいつまで経っても克服できない弱点、光。今この戦いには暗の黒暗座に着く者はいない。だから、少なくともこの攻撃は当たる。
「……だから生半可じゃダメなんだ」
しかし、そんな光に負けず、立っている人がいた。その人が持っている剣は黒色に輝いており、今にも爆発しそうな雰囲気を醸し出している。
「黒暗定紋風雷斬!」
その黒の波動はしっかりと、天国護廷7の方へと飛んでくる。技を発動させたのは風定。ダメージを受けるどころか、眩んですらいない。
不意を突こうとした攻撃なためか、威力はそれほど高くなく、とにかく当てることを重視したものだった。矢筈たちは普通に躱したが、あまり楽には勝てないことを改めて教えられた。
光が風定には効かないといっても過言ではない状況。天国護廷7の完全有利はなくなったわけだが、それでも勝てる確率は十分にある。
「雷球銃!」
雛流は二つの電気ボールを銃口から地獄護廷7の方へと発射させる。
「俺たちもコンビネーションと行こうか、風定」
「ああ」
雷紋が急に雷球銃の方へと向かって駆けだし、腰に納めていた剣を引き抜く。その後ろには風定がついている。
雷紋は電気ボール二つをスパッと切ってしまう。その場で電気ボールは消滅し、後ろにずっと着いていた風定が急に飛び出して天国側に迫ってくる。
それにいち早く反応したのは矢筈だった。漆黒の剣を純白の剣が受け止め、その場で火花を散らす。
「矢筈……!」
「もう負けませんよ! 世界のためにも!」
矢筈と風定はずっと睨め合ったまま、力の押し合いを繰り広げた。