百三. 最終調整・下
前回の後書きで書き忘れていたことを一つ。
須永君も調整してますw ああ、すっかり忘れておりましたw
ごめん、須永。
須永が連れてこられたのはビーチ。暑さはそれなりにあり、普通に汗が出る。
「何でこんなところで最終調整なんだよ……」
と言って須永は天等王に渡されていた紙を取り出す。
『君には耐久性が必要だと思うんだ。だってすぐ鼻血出しちゃうでしょ? 地獄の美人にもどうせデレデレしちゃうんでしょ? はっ、笑わせてくれる。というわけで一時間、天国生粋の美少女とプールで遊んでください。一回でも鼻血出したらやり直しだぞ★』
だんだん天等王の文面が鬱陶しくなってくるが、須永は冷静に対処する。
普通に考えてみる。美少女と遊ぶのが最終調整なんて天国じゃないか。ちょっと視界が眩むくらいで害など全くない。それどころかパラダイスじゃないか。
「堂々と遊んでやる!」
須永は思いっきりプールへと飛び込んだ。
その後、須永が何回もやり直しになったのは言うまでもない。
☆
「……ここだよね」
奏も紙の指示通りの場所へとやってきた。舞台となるのは大きな山。木が生い茂り、足場など一つもなさそうだった。
『君には三日間、この山に籠ってもらう。近距離戦にも対応できないと地獄には勝てない。食料も自分で調達したまえ。いいか、ここはサバイバルな世界だ! 生半可な気持ちでは死ぬぞ! いいか!? サバイバルというのは生きることをモットーとし……』
ここから三十行ほどサバイバルについて語られていた。ちなみに縦四十文字。もっと言うならばファ○タジア文庫約四ページ分。
とりあえずはこの山に引き籠り、ひたすら出てくる敵を倒し、食料を自分で調達して、強くなって帰ってくる。それが最大の目的なのだ。
「よし!」
奏は覚悟を決め、道のない山へと入りこんでいった。
☆
「あれ? 八千代さんじゃない」
「あ、存在薄子」
「雛流よ!」
八千代がやってきたのは雛流と同じ図書館。相変わらず本ばっかりの、面白味の欠片もない場所である。
「雛流もここなの?」
「うん、強い技を習得しろって。八千代さんは?」
「えっと……」
八千代はポケットにゴソゴソと手を突っ込み、天等王の手紙を取り出した。
『勉強しなさい』
と、今までみんなのは結構書いてあったのに、僅か六文字で終了させられた。
「え、勉強しなさい!?」
さすがに雛流もこれには驚いたようだった。自分の内容とかなり離れていたからだろう。
「あんのじじい! 私をどんだけ馬鹿だと思ってるんだ! 百次方程式くらいできるわ!」
「それは天才ね。……まぁ、無意味でその課題出すとは思えないけど?」
「…………」
八千代は天等王に嫌々従った。
☆
矢筈は大きな訓練場に一人立たされていた。足音さえも響き渡る大きなアリーナ形式の訓練場。
矢筈は紙を開いて内容を確認する。
『雷ノ鳥群を放て!』
矢筈も僅か七文字で済まされてしまっていた。そろそろ文字を書くのが疲れてきたのだろうか。
しかし、矢筈はこの調整内容の意図を理解した。
前回の地獄戦。未完成で放った雷ノ鳥群は見事、相手に大きなダメージを与えた。鳥たちもしっかりと操ることはできたのだ。ただ、矢筈にもそれなりの疲労が反作用に返って来た。
つまりは、その疲労なしで放てるよう、調整しておけ、ということなのだろう。
「雷ノ鳥群!」
そうと分かれば放つしかない。訓練場に金色の鳥が無数に飛び交い始め、矢筈は雷ノ鳥群を放ち続けた。
☆
水裟は第二グラウンドアリーナにやってきた。ちなみに大牙がいた環境設定できるのが第一グラウンドアリーナ。こちらの第二グラウンドアリーナは環境設定はできない。
水裟は紙を開いて内容を確認した
『走って』
ついには三文字で済まされるようになっていた。これには水裟も少々怒りを覚えたが、こらえておく。すると、端の方に小さく何かが書いてあった。
『P.S. 奏に熱く語りすぎて手が疲れました』
やはりサバイバル四十×三十がきつかったらしい。それならば書かなきゃいいのに、なんて思う。
とにかく水裟の弱点は体力に劣ること。海梨姫の水氷心の影響で著しく低下しているのだ。それを少しでも補うために、とにかく走れ、ということなのだろう。
水裟は紙をポケットに入れ、走り始めた。みんなのスピードについていくために。
◆
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こうして始まった最終調整。水裟たちは死ぬ気で取り組んだ。
その後日には大学試験があり、一時地上に戻って体を安静させる。
そしてついに、最終決戦の時がやってきたのだった――。
次回はいよいよ最終決戦開幕!
……なのですが、リアルの方に一学期のラスボス(期末テストとも言う)が迫っており、二週間ほどログインできません。
テスト終了次第更新していきたいと思っていますのでよろしくお願いします。