百. 希望進路を破滅せよ!
祝! 百話達成!
いや~、ついにここまで来てしまいました。当初十話で終わらせようと思っていた作品がここまで来るとは。
まだあと少し続きますのでよろしくお願いします!
「最終希望進路調査か~」
「…………」
場所は天国のテラス。水裟と八千代、冬菜の三人は机の上に一枚の用紙を取り出していた。学校から配布された希望進路調査である。就職やら進学やらに印をつけ、担任に提出するという、受験生にとっては定番ともいえる用紙である。
「なぁ、八千代」
「何?」
「記念すべき百話をこんな地味なもので済ませていいのか?」
「同感です」
このままだとサブタイトルは明らかに『希望進路戦場』だ。こんな何を書いてもいい用紙、変なことを書くに違いない。
だが、今回はそうもいかないのだ。何しろ百話。飽きられつつある戦場をやっても無意味だ。
「何言ってるのさ水裟。今日は何をしに天国に来たと思ってるんだ」
「矢筈の言う、『核』について知るためだろ?」
「そう! だから別に地味じゃないじゃないか!」
「そこからの希望進路調査がおかしいんだよ!」
水裟たちはついさっき矢筈から核について説明されたところだった。地獄の思惑から世界の染色まで。また、地獄の力を持ってすれば地上にも被害が及ぶかもしれないという補足も。
矢筈は少し用事があると言って席を外している。もしその間に、生徒会役員選挙で遅れている雛流や、進路のことについて教師と話をしている大牙と奏が来たら説明してほしい、とのことだった。
そういうことで、水裟たちはテラスで待機しているのだ。
その時間の間、希望進路調査。早く来てほしいのが水裟の願いだ。
「では、書いていこう!」
何故だか音符マークを浮かべながらシャープペンシルをノックする八千代。このままではいけない。またとんでもなく面倒くさいループに入ってしまう。
そんな心中の水裟を察したのか、冬菜も水裟に目を合わせ、状況を理解したようだった。
「私に任せてください」
なんてことを小声で言う。水裟もここは冬菜に任せることにしてみる。
「如月八千代」
「何?」
「死んでください」
「てめーが死ねや! カス!」
これを聞いた時、水裟に衝撃が走った。冬菜の作戦。それは八千代に罵倒をしまくって時間を稼ぐという至って単純なものだった。簡単な八千代はすぐに乗ってしまう。これなら希望進路戦場しなくても免れるはず。
冬菜と八千代の攻防が幕を開けた――。
☆
やがて雛流たちが天国に到着し、冬菜と八千代が言いあっている中、水裟は淡々と雛流たちに物事を伝えた。これで希望進路戦場はナッシングだ。
「冬菜、そろそろいいよ~」
「了解しました」
すぐさま罵倒をやめる冬菜。その後、八千代が頭を抱えたのは気のせいだろう。
と、気づけばどこかに行っていた矢筈も帰って来ていて、久しぶりに、天国に護廷7が集合した。
するとそこに天等王が現れ、水裟たち全員に向かって話しかけた。
「話は聞いただろう。その状況は紛れもない事実。そして、このままでは地獄に勝てないのも事実。というわけで――」
天等王は一息ついて、
「――天国引きこもり特訓してもらう!」
と言い放った。
水裟たちは全員信じられない顔をしていたが、どうすることもできず、天国引きこもり特訓が始まったのだった。