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拾九話 今日も平和です。

どれくらい遅れたのでしょうか。

気が付いたら二ヶ月以上も更新していないという事態に陥ってしまった今日この頃。

忙しいという言い訳はしません。

楽しみにしていただいていた読者の皆様、大変お待たせいたしました。

拾九話、少々変態チックな物語の始まりです。

拾九話 今日も平和です。





あの戦から四カ月。何事も無い平和な日々を榊達は過ごしていた。

戦の後の夜から暗殺者の影は姿形も無く消え、榊は夜の主の警護の時間がとても暇になっていた。何もすることが無いのである。

かといって、眠ってしまうと何時暗殺者が再び現れて主の命を奪うかもしれないのでおちおち眠るわけにもいかない。


ある日の午後、榊は六畳一間の元倉庫である自室で久しぶりに刀を抜いて手入れをしていた。といっても、榊の刀は何故か錆等が全く無い所為か刀身を拭く必要も無ければ斬れ味が全く変わらないので油を使うことも無い。まともに刀の手入れをしたことは今までの人生の中で一度も無い。

そんな奴が武者をやっていて良いのかと榊は時々疑問に思うが、別に手入れをしていてもしていなくても外見が武者なので武者をやっていて良いだろうと全く良い大人なのに子供のような考えで自己完結する榊は、榊の居た世界の遥か未来で言う「頭の緩い馬鹿」なのである。

 

「それにしても…………」


榊は溜息を吐く。


「暇でござるなぁ」


カチッと金属音を立てて鞘に刀を納めると榊は胡座を掻いて両手を前にぐっと伸ばして伸びをする。

ブレンダンの主はあれからずっと口を割らずにずっと不敵な笑みを浮かべている。まるでこちらの反応を見て楽しんでいるようだ。榊は尋問の担当では無いのでブレンダンの主の顔をあの戦以降見ていない。

早々に、暗殺の真意を吐いてくれればこちらもあちらも気が楽だというのに。と、榊は心の中で思う。


「だが拙者はたとえ敵に捕まったとしても口は割らんでござろうなぁ」


榊は一人、ケタケタと笑う。

主君のことを思えば、口を割るなんて馬鹿なことはしない。しかしブレンダンの主は何故口を割らない?自分が主なのに。…………もしやブレンダンの主を陰で操っているような輩がいるかもしれない―――――と、榊は頭の中に妄想を膨らませる。ありえそうな展開である為、あながち間違っているわけではないだろうと榊は思う。


「気にしても仕方が無い。今日も主の所へでも行くでござるかな」


榊はすっと立つと、近くに置いてあった草履を履くと部屋の扉を押すようにして開く。……榊の使っている部屋は和室だが、この「ユガ邸」の造りは榊の居た世界で言う西洋式なので大体西洋の建物の造りに則った

形で造られている。よって、部屋の出入り口は扉だ。

「あっ」と、榊は唐突に自分の右手についている紅い二本の剣が交差したような紋章のことを思い出した。

あの戦の後、主から教えられていたことがあった。


契約の紋章…………ユガ邸の従者なら必ずつけている二本の剣が交差したような紋章は色によって違うことがある。


ユガ邸の施設を自由に利用できること、ユガ邸の全域の部屋や施設の光景が何時でも見られること、ユガ邸の主の元へ一瞬で飛んでいけること。

紋章の色は緑、青、紅。

施設利用は緑、千里眼のような物は青、瞬間移動は紅。

榊の右手に輝く紋章の色は紅色。つまり瞬間移動ができる。

結構便利な能力なので有効活用してほしいと榊はスーに頼まれていた。


「試しに使ってみるでござるかな」


榊は右手を前に突き出すと、目を閉じてスーのことを思い描く。

眼鏡をかけた「灯り要らずの少女」の姿が頭の中にはっきりと浮かび上がると榊は短く息を吸って「主の元へ」と呟く。確かこんな感じで良いんだなと榊はスーに聞いた方法で試してみた。


「あ、榊いらっしゃい」


ふと目を開けるといつの間にか榊は真っ白な空間の中に立っており目の前に榊の主であるスーが居た。突然のスーの登場に榊はぎょっとする。

その様子を見たスーは頬を膨らませる。少しむっときたのだろうか。


「なーに?何かファンタジックな事でも起こると思ったのぉ?」

「そのとおりでござる」


何かしらのアクションが起こると思った榊にしては、少々残念な飛び方だった。普通に魔法が使われていたりする世界だからやたらと派手な演出でもあるのかと期待したのが間違いだったのかと榊は頭を軽く叩く。

「あはは」とスーは脹れ顔から笑顔になると榊にぎゅっと抱きついた。


「速度重視だもん。それにスーは派手な演出嫌いなの」

「緊急用だったりするのでござるかな?」

「あったりー!」


スーは榊の胸に顔をつっこんで猫のような何とも気持ちよさそうな表情で陽気に笑う。少し前まではこんなことを恥ずかしがってた榊は慣れの所為もあってちょっとやそっとの事は平気になった。

そんなきゃっきゃうふふな光景を見て、スーの後ろに直立している老執事は嘆息する。


「どうしたでござる、クランツ殿?」

「羨ましいなあと。出来れば私も加わりたい……」

「変態はすっ込んでいるでござる」


左手でしっしっと虫を追い払うような仕草をする榊を見てクランツはまたもや嘆息する。最近急に老けたクランツにはそう言った変態的な物が欠けているらしい。年の所為なのか?と榊は疑問に思うが少しの間だけ。変態のことなんか気にしてどうすると榊は溜息を吐く。

ふと、何か胸が異様に熱くなったなと榊はスーの顔を見る。


「ふ…………ふふふふ」

「お嬢様!?」


クランツはスーの元にすっと寄ると榊からスーを引き離す。


「ふふ……へへへへ」


ぷしゅーと顔から蒸気が出そうな程…………というか既に出ているスーは顔が茹でたタコのように赤くなっていた。

クランツは懐から長方形のシールみたいなものを取り出すとスーの額に張り付ける。それからスーを抱き上げると大きなベットに寝かせる。


「オーバーヒートしておられる…………それほどの破壊力があれにはあったのか……恐ろしい、いや素晴らしい」


何が素晴らしいのだろうと榊が頭にクエスチョンマークを浮かべる。くくくとクランツが不気味な笑い声を出す。小刻みに震える体はとても気味が悪いと榊は思う。


「何が素晴らしいのでござるかクランツ殿?」


スーの額からシールを優しく取ると、近くにあった冷蔵庫から氷をありったけ出すとクランツは薄茶色の袋に入れてスーの額にのせる。

冷蔵庫の隣にあったゴミ箱にシールを捨てるとクランツはくるっと体を回転させて榊の方に頭を下げてそのままの姿勢でつかつかと歩み寄る。傍から見たら奇人だ。


「榊嬢の…………おふっ」


クランツは頭を上げて榊を見た瞬間、両手で鼻を押さえた。ぐっと力が体から抜けていくのが傍から見ても分かるくらいに弱弱しく、その場に崩れ落ちる。


「クランツ殿!」


榊は崩れ落ちたクランツを片膝をついた姿勢で抱き起こす。


「大丈夫でござるか!?」


榊はクランツを揺する。クランツの瞳は焦点を失ってあさっての方向を向いていたが、やがて焦点が合うと榊の顔に視線が向かう。

ふっと、クランツは笑う。


「大丈夫でござるか!?」

「わ……………ざと…………か?」

「は?」

「わざとか……?」

「何が言いたいのでござるか!?しっかりするでござる」


榊はクランツを揺する。榊の瞳は涙が零れ落ちそうな程潤んでいた。こんな変態爺でも良い人だった。一番の年長者としての貫録もあった(?)、自らの命を投げ出す覚悟で主であるスーを守ろうとしたこともあった、戦の時は戦って敵の大将を捕らえた。たくましくて、笑顔溢れる優しい執事の命の灯が今にも消えそうで榊は悲しかった。瞳が閉じかかっているクランツを見た榊はまだ逝かないでくれ、まだ逝かないでくれ!!とクランツを激しく揺する。

ごふっと、両手を鼻に押さえたままクランツは口から息の塊を吐き出すと、榊の顔を見た後に榊の胸元を見て溜息を吐く。


「立派なものだ。…………なあ」

「……………………」


遺言だと思った榊は叫び、揺するのを止めて静かに耳を傾けた。


「立派なものだ。…………その大振りで丸い果実のようなそれは雪のように白く、先についた桃色の程良い大きさのそれはとても淡く、美しい」


クランツはゴホッと咳をすると同時に少量の血を吐く。榊はクランツの瞳をしっかりと見据えている。


「それを、こんな間近でこの老いぼれの眼に焼き付けることが出来たなんて…………私は幸せ者だ。ただ…………」

「ただ…………?」


クランツは静かに微笑むと榊の今にも泣きそうな瞳を見つめて静かに息を吸った。


「最後に、私はそれを…………むしゃぶりつく……すことが出来なかったのが…………がはっ…………残念だっ……」


ふっとクランツは口を開いたまま静かに目を閉じた。

榊はクランツを静かに横たえると、床に正座をして両手を合わせ、黙祷をした。





クランツが逝って数分後、部屋の扉が勢いよく開け放たれ、ドタドタという荒々しい足音と「大丈夫ですか!?」というサヨの声と共に数人の従者が部屋に入ってきた。

榊は黙祷を止めるとサヨの方に振り向く。と、榊が振り向くとサヨの後ろにいた重装備の衛生兵と思われる人物たちの被っていた透明のヘルメットが赤く染まり、その場に崩れ落ちた。


「大丈夫ですか!?…………」


一人の従者の元に駆けつけるとサヨは従者の左手首を取ると自身の右手人差し指をあてる。


「脈はあるみたいだから大丈夫みたいですね」


ふうと溜息を吐くサヨ。サヨは残りの従者の様子を確認した後榊の方を向くと、顔を真っ赤に染めて息を短く吸う。


「大変申し訳にくいのですが―――――――」

「何でござるか?」

「榊様。前。貴女様の至宝が丸見えです」

「は?」


榊は自分の胸元を見下ろす。

ちゃんと収まっていたはずのそれは、重力に逆らってその形を保持し、部屋の明かりに照らされて神々しく輝いていた。

榊はサヨの方を見る。サヨは鼻を押さえて溜息を吐く。


瞬間、ユガ邸に甲高い少女のような悲鳴が響き渡ったのは言うまでもないことだ。







どうも白鳩です。皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを深く反省しております。

といってもそこまで大きくないなと思ったり(殴

お前ふざけんなよと友人に怒られて更新した次第であります。なんて自分勝手な作者でありましょうか。



今回の話は少し変態チックであり、多くの血が流れました。

この小説の「中身」はとても平和です。

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