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拾八話 戦の後はゆっくりと……。

大変お待たせいたしました。

拾八話です。

今回はちょっと榊視点で書いてみました。誰かの視点で書くのは初めてでへたくそかもしれませんが、楽しんでいただけたら良いなと思います。


それではどうぞ。

拾八話 戦の後はゆっくりと……。



レイゼン平原での戦いはユガ軍の勝利で終わった。

ブレンダンの兵はほぼ全員(将軍のアトレンと軍師のミトレンと数名の兵士は死神グリムリーパーによって殺された)ユガ軍に捕らえられた。それはブレンダンのリーダーであるバドレンも例外ではなかった。

バドレン・ブレンダンはユガ邸地下の牢獄に入れられ手と足に魔法で鍛えられた金属製の枷をつけられ、看守数名が常時見張られている

ブレンダンの兵の大半は片足がユガ軍の将軍、榊によって斬られた為義足をユガ軍の衛生部隊につけられ、ユガ邸内にある医療系フロアに入れられた。

ユガ軍の兵は負傷者こそいたが、死者は一人も出ていなく、ユガ軍のリーダーであるスー・R・ユガは皆が無事戻ってこられたことをとても喜んだという。



レイゼン平原の戦いは勝利し、スーを狙う暗殺者はいなくなった。

暗殺者はいなくなったものの、榊はスーの眠るベッドの近くに胡座をかいて護衛を務めた。それに対し、主であるスーは「別に護衛しなくてもいいよ。……ゆっくりベッドで寝ればぁ?」と提案したが、榊は首を振って断固拒否した。

何回もスーは言ったが、止める気はなさそうなのでスーは言うのをやめた。


今宵も榊はスーの護衛のため、スーの眠るベッドの前に胡座をかいて座る。




主が寝てからどれくらいの時間が経ったのだろうか。

拙者、榊は今宵も主の護衛のため主の部屋で夜を過ごす。この世界に来てから自分の主の護衛がいつの間にか習慣になった。拙者が前に仕えていた主の護衛は十分居たため、拙者は夜はきちんと休んでいた。

無論、眠ってはいなかったが。きちんと、体を休めていた。

前の世界では護衛をする必要がなかったので拙者は夜になると武具の手入れをしたり、外で素振りをしたり、月を眺めたりしていた。

拙者は勉学はさっぱりなので勉学系の物には全然手をつけていなかった。ちなみに字は読める。これはできなければ色々と不便だと母様に教えてもらっていたからな。

そういえば、この世界に来てから一度も月を眺めたことがない。今仕えている主の護衛のため、そういうことはできないからか。

久しぶりに月を眺めたいものだ。あの美しい、丸々とした黄金の月を。


「ねえ」

「!!」


不意に、後ろから主の声が聞こえたかと思うと拙者の体に後ろから凭れ掛ってきたではないか。物思いに耽っていた所為か、全く気がつかなかった。

主の吐息が拙者の右の耳にかかる。頬が高揚するような奇妙な感覚に襲われた。


「主、どうしたでござるか?」


主の返事は無い。気になって後ろを振り向くと、やけにとろーんとした顔の主が拙者の体に凭れ掛ったまま拙者の顔を見つめていた。何がしたいのか、さっぱりわからない。

もう一度、拙者は聞いてみようと思った。


「主?……どうしたでござるか?」

「…………ねえ…………」


ねえ?だから何なのだろうかと拙者は疑問に思う。


「榊はぁ、今さっき何を考えていたの?」


なんだ。そんなことか。いつものようにやましいことを考えていなくてよかった。


「ちょっと昔のことを」

「昔?……ふーん…………」


何なのだ?どうしたのか?主の考えていることが良くわからない。


「榊。たまには一緒に月でも見る?」

「は?」


一緒に月でもみる?……まあ別に良いか。


「主は眠らなくて良いのでござるか?」

「コーヒーの飲みすぎなのかなあ……全然眠くないんだぁ」

「そうでござるか。…………なら暇つぶし代わりに見るでござるか」


そう言うと主はその場にすっくと立ち上がる。するとそのままべらんだに続く大きな硝子の扉のある壁側に歩いていき、白いかーてんを紐で縛ると露わになった硝子の扉を大きく開け放った。


「主、何か着なくて大丈夫でござるか?」

「別に寒くないから要らないかなぁ。この世界の季節は榊の居た世界の国の春と秋くらいしかないからあまり寒くないよ」


でも流石にねぐりじぇのままでは寒いのではないかと拙者は思うが主は要らないと言ったので無理に勧めないことにする。秋蓮様は無理に勧められるのが嫌いだったから。主も歳が近いからきっと嫌いだろう。

拙者は刀を腰に差すと主の待つべらんだの方へ向かった。




広大な屋敷の中では珍しく人が一人か二人しか入れないべらんだに出ると、主が端によってくれた。拙者は申し訳ないと思い主に謝ろうとするが「別にいいよぉ」と笑いながら止められた。優しい方だと改めて実感する。


「あ、今日の月は満月だぁ」


主の一言で拙者は斜め上の空を見上げる。雲一つない夜空に大きな丸い月が光り輝いている。他の細々とした星よりも一際輝いているその月は拙者の故郷の空で見た月と同じように黄金色に輝いていた。


「……美しい。…………何日ぶりだろうか。この満月のように美しい月を眺めたのは」

「この世界の月は綺麗だよ?特に満月はね。…………榊の元居た世界の月はどうなの?」

「拙者の元居た世界の月は綺麗というか…………美しかったでござる。どんな形の月でも」

「へえー……いいなあ」


主の顔が好奇心丸出しの年相応の可愛らしい子供の顔になる。今の主は眼鏡をかけていない所為かいつもよりも可愛らしい。


「ねえ榊?…………ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかなぁ?」

「?……どうしたでござるか?別に……良いでござるよ」


いきなり如何したのだろうか。頬を少し赤くしてもじもじとした主はさっきよりも可愛らしく感じた。


「じゃあ……榊って、正直今の主であるスーと前の主の娘の秋蓮って人のどちらが好きなの?」

「!!?……どのような意味で?」

「どのようなって…………うーん……一人の……じゃなくて、意味はあまり無いけど、榊の思ったとおりに」


なんだか訳の分からない質問だなと拙者は困った。どのように答えようかと。好きとは色々な意味があるから答えにくい。


「主は優しくて、面白くて、可愛くて人間的に好きな方でござる。……秋蓮様は、可憐で今にも折れてしまいそうなほどに儚く、本当に護ってあげたい……そんな意味で好きな方でござる。……どちらが好きというか、拙者は二人とも好きでござるよ」


拙者は思ったとおりに話した。拙者の気持ちとしてはこれが事実だ。途中主の悲しそうな顔を見て心が痛んだ。

主はうんうんと頷く。拙者が疑問に思っているうちに主は突然拙者の胸にとびこんできた。


「!?……どうしたでござるか?」

「いや…………榊の正直な気持ちが聞けて嬉しかったなと思ったらなんだか抱きつきたくなってつい」


なんじゃそりゃと拙者は思った。…………まあ主の顔が笑顔だったから本当に嬉しかったんだろうなと思う。

「はあ」と主は拙者の胸の中でため息を吐く。


「それにしても、妬ましいねぇ。何を食べたらこんなになるんだか」

「主?そろそろ離れてくれないか?」

「やだ。だってぇ榊が暖かいんだもん。……それに眠くなって来ちゃったから体が言うこと聞かないの」

「ふう……。ではそろそろ部屋に戻るでござるよ。全く世話がかかる人でござるなぁ」


拙者は主を背負うとべらんだから出て硝子の扉を閉め、かーてんを閉める。


「抱っこがいいなぁ」

「我が儘言わないでござる」

「ぶー。スーはこの屋敷の主なんだよぉ?偉いんだよぉ?」

「だからといって我が儘を許すと将来ろくな大人にならないでござる」


脳裏にクランツ殿の顔が過ったが気にしない。気にしたら負けな気がする。


「よっと」


べっどに主を降ろそうとした瞬間主に胸を掴まれたが、平常心を保って主の手を引き剥がし、布団を被せる。取り乱したら主の思うつぼだ。

全く。今からこれじゃあ将来が心配だ。


「けち」

「けちじゃないでござる」


ここから寝かしつけるのに数十分も時間をかけてしまった。全く。




冬休みになっても暇が無いってどういうことじゃー!


……はい。白鳩です。大変遅くなってすみません。

覚えてくれている方はいらっしゃいますかね……。


最新拾八話投稿です。 夏頃?に書きはじめたこの「ある武者の希有な物語」が結構続いていることに作者である白鳩自身もびっくりしております。


今年もできる限りたくさん更新したいと思っております。

見守っていただけたら嬉しいです。


誤字脱字、感想等の一言お待ちしております。


それでは。

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