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第一話 少年時代

 この地に冬がやって来た。雪が宙を舞っている。その宙を舞う雪が、少年が走る勢いの風によって勢いよく浮き上がる。

 少年はりんごやジャガイモやらを抱えて走っている。そしてその少年の後方には長い木の棒を持った中年ぐらいのお男が走って、少年を追いかけてきている。

「おーい、クソガキ!俺の大事な商品返しやがれ!」

 少年は前に、障害物になりそうものがないかを確認してから後ろに振り向いて走り出した。

「あんな風に、いつでも盗れるようにしてるお前が悪いんだよ!悔しかったら、捕まえてみろよ!」

「このクソガキが!」

 中年の男は、思いきり振りかぶると、持っていた木の棒を勢いよく少年に向かって投げつけた。棒が投げられた瞬間、ビュンと風を切る音がなった。棒はものすごい速さで飛んでいく。

 少年は目の前から飛んでくる棒を見て、横へ体を捻る。体を捻ったことにより、投げられた木の棒は少年井ぶつかることなく、地面へと落ちた。カコンと音が鳴って、地面に落ちる棒を見た少年は体の向きを前に変えた。そして後ろの方に視線をやりながら、走り続ける。

「あっぶねぇ。今の当たってたら、結構やばかった。にしても、どんな肩してんだよ、あの親父」

 ふと少年が視線を前に戻す。するとそこには、到底子供では乗り越えられないぐらいの高さをした壁が現れた。その壁が中年の男にも見えたのか、男はニヤッと笑った。

「堪忍しろよ、ガキ。今、とっ捕まえてボコボコにしてやるよ!」

 少年と男の前に壁がある。なのに少年は走るスピードを落とすことなく、走り続ける。

「この程度の障害で俺が捕まえられると思ってんのか?舐めんなよ!」

 そう言いながら、少年は思いきり壁に向かってジャンプをした。そこから壁についた左足で、横側にある建物の壁に飛び移る。そして次は建物の壁を右足で上へと蹴った。少年の体は壁を余裕で超えられる高さまで宙に上がった。その様子を男は唖然と見ていた。

 少年は抱えている盗んだ商品を落とすことなく、見事に壁の上へと着地を決めた。そして壁の下で、どうにかして少年を捕まえようとジャンプする中年の男を見下した。

「俺を捕まえるには100年早いよーだ。そんじゃあ、ありがたくお宅の大事な商品、頂くぜ!」

 そう言い残し、少年は壁の向こう側へと飛び降りた。中年の男は怒りに任せ、壁を殴る。すると男が壁を殴る様子をちょうど見る建物の住人がいた。住人は窓を開けてから、男に届くような声で聞いた。

「何か悩みでもあるんですか?」

 その声を聞いて、中年の男はびっくりしてから、上を向いた。そして苛立った様子でぶっきらぼうに答えた。

「うるせぇ!お前には関係ない」

 住人はビクッと体を震わせてから窓を閉めた。

 中年の男は壁にもたれながらその場に座る。そして大きく息を吐いてから、空を見上げた。

「噂には聞いてはいたが、まさかあそこまでとは……。今度から十分、気を付けねーとな」

 そう言うと男は、下を向きながら自分の店へと戻っていくのであった。

 一方のヘルは盗んだものを抱えて、どこかに向かって走っていた。市街地を抜け、山の方角へまっすぐ走っていく。山の中へ入ると、山道にある木をひとつひとつ数えながらゆっくりと進み始めた。そして、数え始めてから27本目の時、ヘルは足を止めた。山道から外れ、木の真横に立つとそこからまっすぐ歩き始める。時折、立ち止まっては後ろの方を確認して、また歩き始める。そんなことを数分繰り返していると、ヘルの目の前に大きな湖が現れた。

 湖の水は透明で透き通っている。湖の中では魚が群れになって、優雅に泳いでいる。そして、その湖の横には、つぎはぎに作られた小屋が建ってある。ヘルは小屋の目の前まで歩くと、足でコンコンと扉を蹴った。

「おーい、帰ったぞ!」

 すると、扉からガチャっと音が鳴り、扉が内側に開かれた。小屋の中にはヘルと同じぐらいの背丈をした少年がいた。ヘルは自慢するかのように、手一杯に抱えた盗んだものを少年に見せつけた。

「どうだすごいだろ?」

 ヘルの目の前にいる少年は目をキラキラと輝かせながら、大きく頷く。

「お腹減ったし食べようぜ。なぁ、シャズ」

「うん、食べる!」

 ヘルはりんごを1つ手渡し、自分もりんごを1つ取ってから、残りの物は地面へ置いた。

「いただきます!」

 シャズはそう言ってから、りんごをひとかじりする。それを見て、ヘルもりんごをかじった。

 果汁が口の中に溢れ、甘い蜜が口の中を埋め尽くした。美味しいと言うこともなく、2人はりんごを食べ続ける。

 時間はとっくにお昼を過ぎて、陽は傾き始めていた。

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