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清川家の日常  作者: planet
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7/21

料理のできない女って…… by秀明

ちょっとシリアス入ります

〜秀明視点〜



「秀明さん。昨日何かあったんですか? すごい音でしたよ」



「ああ。あれは大変だったよ……。まさか床が抜けるとは……」



アンネちゃんと話す俺。



いや、でも昨日はホント酷かった……。



台所クライシスを遥かに上回ったぞ…‥。



まあ、なんとかしたけどさ。



一応、応急処置はした。



…………もちろん、母さんにメッチャ怒られました。



何故か、たまにしか帰ってこない母さんが、昨日帰ってきた。



何とか誤魔化せると思ってたのに……。



チキショー!!



……とりあえず、アンネちゃんのご両親が帰ってくるまで、俺はアンネちゃんの面倒を見ることになった。



美代ねぇと智花はそれぞれ用事があったみたいで、アンネちゃんが来た時にはすでに出かけていた。



とりあえず、ケーキを作ったので、紅茶も付けて渡すと、「ありがとうございます」と笑顔を返してくれた。



やっぱりかわえぇなあ……。



「おいしい……」



「マジか、良かった」



俺は紅茶をすすりながら、外を見た。



憎すぎるほどの晴天。



アンネちゃんと出掛けるのもいいかな、と最初だけ思った。



周囲からロリコンとか言われそうな気がしたので、諦めた。



だって今までが今までだからね……。



ああ、どうしてこうなった!!



「これどうやって作ったんですか? よければ、アンネに教えて下さい」



「ん、いいけど……。料理作れるの?」



「…………できないです」



……やっぱり。



何故か俺の知り合い(女性)はほぼ全員が料理できない。



俺が懇切丁寧に教えているが、全く成長しない。



アンネちゃんはどうだろうか?



「じゃあ、エクレアでも作ってみるか」



「はい!!」



いい返事が返ってきたのを聞きながら俺たちは台所に向かった。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆

〜秀明視点〜



「……まさか文字通り、電子レンジを爆発させる人を始めて見ましたよ。アンネさん」



「キッチンが真っ黒ですね。秀明さん」



…………台風の目だった。



まさかここまでだったとは……。



兄さんは悲しいです。



まあ、いつも智花が料理道具を壊すから替えがある。



心配ない。



……さよなら、十代目。



こんにちは、十一代目。



「じゃあ、最初から作り直そうか」



「……はい」



申し訳なさそうに縮こまるアンネちゃん。



「気にすんなって。智花とかいっつも包丁を駄目にするから」



「でもレンジは……」



「美代ねぇなんか、この前キッチンを再起不能の一歩手前までに追い込んだからな」



「えっ!! そうなんですか!?」



「そうだよ」



あれは思い出したくない。



台所クライシスだ……。



「秀明さん!? 何か明後日の方向を見つめるような眼差しなんですけど!!」



「嫌な、事件だったね……」



「いったい何があったんですか!?」



「…………うん」



「…………はあ」



察したのか、アンネちゃんはそれ以上聞いてこなかった。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆

〜秀明視点〜



「こ れ は ひ ど い」



思わずそんな言葉が出てきた。



「す、すいません」



申し訳なさそうに頭を垂れたアンネちゃん。



……今まで会ってきた女性の中で一番料理の腕が残念だった。



ホント、どうしてこうなった!!




キッチンが壊滅しました。



こればっかりはどうしようもない……。



ああ……、母さんに殺される……。



「秀明さんが真っ白な灰になってます!! 起きてください!!」



なんか揺らされてるけど、もーどーにでもなれー。



「今度は笑顔になりました!! 清々しいです!! でも逆に怖いです!!」



「アンネちゃん。…………」



俺は無言で笑いかけ



「掃除、しようか」



懇切丁寧に申し上げました。



「はい…………」




☆ ☆ ☆ ☆ ☆

〜美代視点〜



「何で今更来たんですか?」



あたしは苛立ちを隠さずに言葉を放った。



相手は少し弱ったそうに笑い、悠々とコーヒーを飲んでいる。



「元々はそういう約束がありましたからね」



あたしに笑顔を見せた。



といっても気分がいいものなんかじゃない。



営業スマイル、というものかもしれない。



「約束?」



「おや、聞いていないんですか? 通りで……」



………………腹立つ。



穏やかで、優しい性格を醸し出しているように見えるが、それはあくまで外的イメージ。



中身はとんでもない人間だ。



あたしも、騙された。



母さんも、騙された。



秀明くんも、智花ちゃんも、騙された。



「あと、1ヶ月です。それまでにはどうするか決めてください」



「…………」



「辛いのは分かりますが、あなたの母親との約束ですから」



悲しそうに顔を伏せる。



「…………」



知ったこっちゃない。



「では、お願いします」



「……待って」



私は、かつての父親を止める。



「何ですか?」



「どうして、今更引き取ろうとするんですか?」



私は男を睨みつける。



「前にも申した通り、優花との約束ですから」



優花、あたしたちの母親の名前。


「約束って何ですか?」



「…………分かっているはずですよ」



「…………」



「まあ、いいでしょう。あと1ヶ月ですから。このことを他の家族の皆さんにお伝えください」



そう言い残し、金を置いて出て行った。



…………どうしよう。



あたしはそのままテーブルを見つめることしかできなかった。



そういえば、ここの喫茶店はこの男と初めて会った場所だ。



確かに美味しいコーヒーを出す。



でも、何故か好きにはなれない。



やっぱり、この男が関係しているからか。



あたしはあの男が驕ったコーヒーには一口も口に付けず、喫茶店を後にした。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆

〜美代視点〜



どうしよう……。



お母さんはそのことを知ってるから、聞けない。



智花ちゃんには、とてもじゃないけど、言えない。



秀明くんには、これ以上負担を増やしたくない。



あたしは、どうすればいい?



誰か、教えてよ……。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆

〜秀明視点〜



ようやく片付けが終わった。



第二次台所クライシスだ……。



これからは何人たりとも厨房には入れない!!



俺はそう固く誓った。



「ただいま……」



あ、美代ねぇが帰ってきた。



な、なんか元気なさそうだな。



俺とアンネちゃんは玄関に向かった。



「美代ねぇ?」



「ん、何?」



いつもの顔だ。



あれ? いつもと同じ?



…………気のせいか?



でも、違う気がする。



確証は無いけれど。



「そうだ、美代ねぇ。美代ねぇもエクレア作る?」



「……今日は遠慮しとく」



「そう、か……」



やっぱり、なんか元気ないな……。



美代ねぇは俺たちに顔を見せることなく、部屋に行った。



俺は黙ってそれを見つめることしかできなかった。



アンネが怪訝(けげん)そうに美代ねぇを見つめている。



「じゃあ、俺たちだけで作り直そうか」



「はい」




一時間ちょいで出来たエクレア。



結構俺の得意料理だけど、何故かおいしくなかった。



いや、マズくはないけど、なんかおいしいとは思えなかった。



…………悪いことが起きなきゃいいけどな。

誤字脱字があれば何なりとお申し付け下さい

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