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推敲・修正

――「書いたあとの仕事」が作品の質を決める


小説を書き終えた瞬間、それはまだ“完成”ではない。

むしろ、そこからが作品を「読まれる文章」に仕上げていく作業の始まりとも言える。


どれほど素晴らしい物語でも、読みづらければ読者の心には届かない。

逆に、内容はシンプルでも、文章が洗練されていれば驚くほど印象は変わる。

だからこそ、「書いたあとにどう直すか」「どこを見るか」は、創作において欠かせない技術の一つだ。


この章では、誤字脱字の基本的なチェックから、読者視点に立った読みやすさの確認、長編における整合性の保ち方まで、推敲・修正に必要な視点を整理していく。


1. 誤字脱字チェック、文の流れ、言い回し

まず基本中の基本として、誤字脱字・タイプミスの修正がある。

これは機械的な作業だと思われがちだが、読み手の没入感を守るという点では非常に重要である。


一文の中にたった一つミスがあるだけで、読者は意識的にも無意識的にも「物語から一度離れてしまう」。

テンポの崩れは、興味の喪失につながりやすい。

したがって、公開前の校正は習慣にしておきたい。


ツールとしては、以下のようなものが役立つ。


WordやGoogle Docsの校正機能


「Enno」や「日本語校正サポート」などのWebツール


スマホで読み返してみる(文脈の違和感に気づきやすい)


次に見るべきは文の流れとリズムである。


一文が長すぎないか、主語と述語の対応が取れているか、接続詞に頼りすぎていないか――

こうした部分は、一度離れてから再読することで客観視しやすくなる。


「同じ語尾の連続」や「同じ言い回しの繰り返し」も気づきにくいポイントの一つだ。

たとえば、


「〜だった。〜だった。〜だった。」


といった形が三行続けば、読者は単調さを感じてしまう。

バリエーションを持たせることで、読み口は自然になる。


また、比喩や表現のくどさにも注意が必要である。

書いているときは気持ちが乗っていた描写も、冷静に読み返すと冗長に見えることはよくある。

一度「削れる部分はないか?」という視点で読み直すことが、文章を磨くコツになる。


2. 読者視点で「読みにくくないか?」を確認

自分の作品を「他人の目」で読むことは、簡単なようでいて最も難しい。

だが、これは推敲において最も大事な視点でもある。


読者視点に立つということは、以下のようなことを意識することだ。


スムーズに状況が理解できるか?


説明の順番は論理的か?(いきなり専門用語が出ていないか)


登場人物の感情が読者に伝わるか?


会話のやりとりに無理がないか?


場面転換が分かりづらくないか?


とくに読者にとっては、「読みやすいかどうか」が最優先の基準になる。

どんなに深いテーマや優れた構成があっても、読者が「理解できない」「読み進められない」と感じれば、作品は届かない。


一つのコツとして、章と章のつながり・段落の切れ目・会話と地の文のバランスを「読み手の視線の流れ」で確認してみるとよい。

読者は紙の本よりもスクリーン上で読むことが多いため、視覚的なリズムも重要になる。


具体的には、


一文が長くなりすぎないようにする(40〜60文字程度)


2〜3行ごとに段落を切る(特にスマホでは見やすさが変わる)


会話文と地の文のメリハリを意識する


読者目線で「引っかかるところ」を見つけるには、一度時間を置いて読み返すことが非常に有効である。

執筆直後は自分の意図が頭に残っているため、誤読の可能性に気づきにくい。

1日置く、1週間置く、他の作品を読んだ後に戻る――そうすることで、初めて見えてくる「読みにくさ」がある。


3. 書き溜め方式の場合、全体の整合性チェックも

長編や連載作品を「書き溜め」ていくスタイルの場合、全体の整合性を見直すことも推敲の重要な一環となる。


最も多いのが、「初期の設定と後半の設定が食い違っている」という事態だ。


キャラの性格や話し方が途中で変わっている


魔法やルールの仕様が矛盾している


特定の出来事の記憶が、前後で違っている


時系列が合わない


本来は知っていないはずの情報をキャラが知っている


など、小さなズレの積み重ねが読者の違和感を生み、「この作品、よく読めばおかしいな」と思わせてしまう。


これを防ぐためには、作品の「設計メモ」や「人物相関図」「年表」などを残しておくことが効果的である。


特に、キャラの「感情の変化」や「成長の軌跡」には注意が必要だ。

キャラクターが成長したのに、それを無視するような描写が後に出てくると、読者は物語の説得力を失ってしまう。


また、連載型の執筆では「物語の流れを変えたくなる瞬間」が必ず訪れる。

そのときに「前の部分をどう直すか」「今からでも間に合うか」を冷静に判断できるよう、定期的な通読チェックを取り入れるのが望ましい。


場合によっては、「完結後に通して再構築する」ことも視野に入れてよい。

その際、作品の初期から読み直し、読者として一気読みしてみることが、最大の整合性チェックになる。


まとめ

誤字脱字だけでなく、文の流れや表現のバランスを確認する


読者視点で「理解しやすい」「読みやすい」構成を意識する


長編では整合性のチェックを忘れず、設定ブレを防ぐ


時間を置いての再読や、通読による全体確認が有効


推敲・修正は「作品を磨く最後の工程」である。

どれだけ荒削りでも、そこで丁寧に整えられた作品は、読者の心に届く力を持つ。


完成とは、ただ書き終わることではない。

読者に届けるために整えたとき、はじめて作品は完成に近づくのだ。

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