鬼ヶ島に住まう者は
昔々、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。
ある日お婆さんが川に洗濯に行くと川上から桃が流れてきました。
その桃を持ち帰ると、中から男の子の赤ん坊が生まれてきて、お爺さんとお婆さんはその子を「桃太郎」と名付け、大切に育てました。
大きくなった桃太郎は、犬・猿・キジと共に鬼ヶ島へ行くと鬼を退治し、鬼の所業に困っていた村人たちは大喜びしました。
鬼のいなくなった鬼ヶ島の住み心地が意外にもいいことに気付いた桃太郎は、お爺さんとお婆さんを呼び寄せ、鬼ヶ島で生活することにしました。
鬼ヶ島の風土は、農作物を作るのには適していませんでしたが、村人たちが感謝を込めて桃太郎に定期的に贈り物をするので、桃太郎たちは悠々自適な生活を送ることができました。
月日が経ち、桃太郎の子孫たちは鬼ヶ島で栄えていきました。
かつて村人たちが感謝の気持ちから自主的に渡していた贈り物は、時代の流れの中でその目的が歪曲し、いつしか税金のように強制的に取り立てられるようになっていました。
困窮する村人たちを尻目に、鬼ヶ島で栄華を誇る桃太郎の子孫たちのことを、村人たちは「鬼」と呼ぶのでした。