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クラスのボーイッシュな美女に嘘告しろと命令された結果、案の定振られたが翌日からなぜか弁当を一緒に食べる仲になった  作者: テル


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第二十八話 恋の芽生え

「ねえねえ、この部分ちょっと教えてくれない? 気づいたら寝てた」


 授業中、瑞樹はそんなことを小声で聞いてくる。

 しかし友利はそんな瑞樹の目がまじまじと見れず、瑞樹の指す部分だけを見る。


 友利はプリントを手に取って、そのままその部分を瑞樹に見せた。


「……よし、ありがと、写せた」

「いいよ、けど授業中寝ないでね」

「うーん、なるべく頑張る」

「あはは……」


 友利は瑞樹の言葉に軽く笑った。

 しかしなぜか心から笑うことができなかった。

 

 そんな友利の様子を感じ取ったのか瑞樹は心配そうに見つめてくる。


「どうしたの? なんか最近元気なくない?」

「ちょ、ちょっと疲れてるのかも」

「そっか、でもこれ終わったら昼休みだし一緒に頑張ろ……私は寝るけど」


 瑞樹のそんなボケも拾えず、友利はまた軽く笑って前を向いた。

 

 本当は別に疲れているわけではない。

 精神的に、もしくは体力的にもすり減っているわけではなく、至って普通でいつもとあまり変わらない。

 

 しかし瑞樹には絶対に言えない。


 瑞樹の前だとなぜか心臓がおかしくなってまともに話せなくなるなど言えない。

 それに言ったところで訳がわからない。

 友利自身もなぜかわかっていないのだから。


 他の人と話すときは普通なのに瑞樹と話す時は変に意識してしまう。

 前まで普通に話せていたのだが、ある日を境に急に話せなくなってしまった。


 今のままではダメだと思っても瑞樹の前だと調子が狂う。


 (いつからか忘れたけど、先週の木曜あたりからかな……ずっとこの調子だと瑞樹に絶対変に思われる……)


 このままいけば割と友達を一人失ってしまう危機があるかもしれない。

 

「悠里……助けて……」


 そうして昼休み、友利は悠里の前の席に座って悠里の机に伏せていた。

 理由は単純、瑞樹のことで相談するためである。


 悠里なら何か的確なアドバイスをくれるかもしれないと思ったのだ。


 天音に相談してもよかったのだが天音に明かすのは羞恥があった。

 大体、変な相談である。

 天音に相談したところで天音が困るだけだろう。


 (もしかしたらただただ悩みを打ち明けたいだけなのかもな……)


「ん、どうした?」

「最近、早坂とうまく話せない」

「気まずいってことか?」

「別に気まずくなったわけでもないし、特に仲は変わってない」


 気まずくなったわけではないが、気まずい空気をたまに持っていってしまうのは友利である。

 うまく瑞樹と喋れないので自然と瑞樹と距離を取ってしまっている。


「じゃあどういうことだ?」

「早坂の前だとなぜか緊張して話せなくなった……前まで普通に話せてたのに」

「風邪なんじゃないか?」

「あー、風邪か。え、早坂の前でだけ?」

「知らないけど……それか、友利、早坂に恋してるんじゃないか?」

「……恋? なんでそうなったの?」


 友利は首を横に振って否定する。


 たしかに恋は未経験だが、どういうものかは流石にわかる。

 友利のそれは恋ではないだろう。


 でもなぜ瑞樹のことを意識してしまっているのだろう。


「なんとなく」

「恋ではないでしょ、そういうドキドキじゃない気がする」

「とりあえす頑張れ」


 悠里はそうして興味なさげに素っ気なく返した。

 こちらは真剣に悩んでいるというのにこの返しは少々酷い。


 なんとなく釈然としない。

 

 (恋っていっても瑞樹は友達っていう認識で......)


 瑞樹は友利の友達だ。

 

 ただ、瑞樹へ向ける感情が悠里に向けるような友情と同じかと言われれば少し違う。

 そもそも瑞樹が異性だからというのもあるかもしれない。

 異性の友達と同性の友達で向ける感情が違うのは当然である。


 といっても友達は友達だ。


「でもどうしよ、このままだったら絶対瑞樹と気まずくなっちゃう」

「友利の状況はよくわからないが、要するに早坂さんと突然うまく喋れなくなったんだろ?」

「そういうこと」

「じゃあ逆に自分から話しかけに行って克服したらどうだ?」


 悠里は友利にそうアドバイスした。


 なるほど、たしかに逆に自分から話しかけに行けばこの状況に慣れるかもしれない。

 緊張するから喋れないわけので緊張を無くそうとせずに慣れてしまう。

 

 何とも的確なアドバイスだ。


「それいいかも、ちょっと自分から話しかけに行ってみる」

「おう、頑張れ」


 悠里はあまり心のこもっていないエールを友利に送った。

 

 興味なさげにしながらも話はしっかりと聞いてくれる。

 どうでもいいことでも相談に乗ってくれる悠里には感謝だ。


「ところでさ、友利」

「何?」

「最近、浩也とかにまた何かされてないか?」

「浩也に? 別に何もされてないよ」


 浩也と正面から喧嘩して、浩也ともう関わらなくなってかなり日が経った。

 といっても三週間くらいだろうか。


 あれ以降、浩也には何もされていないし、関わりがなくなった。

 浩也自体の性格もおとなしくなっていて、教室で馬鹿騒ぎしたりしていない。


 静かな普通の男子生徒。


 友利から見た今の浩也はそんな感じだ。


「本当か?」

「うん、特に何も」

「なんか噂流れてたから、浩也とか友利に関する」

「あー、急なことだったし驚きはするよね。ていうかもう三週間くらい経ってるのに噂とかあるんだ」

「もう何もされてないならよかった……じゃあちょっとお手洗い行ってくる」


 悠里は席から立ち上がって教室を出て行った。


 浩也にいいようにやられていた友利を悠里は心配してくれていたのだ。

 助けようともしてくれていたし、悠里への借りは大きい。

 

 (今度、お金貯めて昼飯くらい奢ってあげようかな……)


 友利はそんなことを考えながら自分の席に戻った。


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