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第十七話 対等でいたかった

「だから昔も今もそうやって振られたんだよ」


 昔の話は浩也に喋ってはいけないこと。

 けれど友利は浩也にそう言い放った。


 浩也は当然の如く激昂して、友利は胸ぐらを掴まれる。


「うるさい、黙れ! 全部、全部お前に奪われてるんだよ、こっちは」

「奪った? 自分から無くしたの間違いじゃないの?」

「あの子に告白されといてよくそんな口が聞けるな」

「お前まだ引きずってるのかよ、だから振られるって言ってるんだよ!」


 友利は語気を上げて言い放つ。

 驚いた表情を浩也はしたがすぐにまた顔に怒りの表情を浮かべた。


 思えばこうして強くあたることはなかった。

 どうしてこんな関係になってしまったのだろう。

 

 ただ友利は浩也と一緒にいたかっただけなのにどうして憎まれなければならないのだろう。


「今も昔もお前は何も変わってないんだよ! 僕はただ浩也と仲良くしていたかった。なのになんで恨まれなきゃならないんだよ!」

「......そういうのが目障りなんだよ」


 友利は胸ぐらを掴んだ浩也の手の力が緩くなったかと思うと顔面に強い衝撃が走る。

 そのまま友利は後ろの方に飛んでいった。


「いたっ......」


 殴られた、浩也に殴られたのだ。

 鼻からは血が出ており、唇を伝い、顎を伝い、血は地面に落ちる。

 友利は血を手で拭いてゆっくりと立ち上がった。

 そして浩也の方をまっすぐと見る。


 思えばずっと浩也を見上げていた。

 それが良くなかったのかもしれない。

 対等にいたかったと言いながら対等ではなかった。


 なら、対等になるためには浩也と同じ土俵に立つ必要がある。


 友利は右手に思いっきり力を入れた。

 そして浩也の顔面に思いっきり殴り返した。


「いって......お前、何して......」

「仕返しだ。人を急に殴るなよ。口論から暴力に逃げるのは弱虫のやることだ」

「っ......こいつ......」


 浩也が殴れば友利も殴る。

 それからは殴って殴られの繰り返しだった。


 お互いフラフラになりながら殴り合っていた。


 もちろん友利は浩也よりも筋肉がない訳で浩也の方が強い。

 簡単に耐えられるし、殴った次の瞬間には重いパンチが飛んでくる。

 しかし浩也のパンチに友利はしぶとく耐えた。


 結果、浩也のパンチもだんだんと弱くなっていく。


「はあ、はあ......なんで、なんでお前はいつもいつも......!」

「っ......」


 浩也にそう言いながら友利は殴られる。

 お互い体もフラフラとしている、おそらくこれが最後の一発だろう。

 

 友利は浩也に対する様々な感情を右の拳に込めた。


「僕は友達だと思ってた......けど、けど浩也にとって僕は最初から友達じゃなかったのかよ!」

「なっ......」

 

 そして顔めがけて右の拳を放った。

 浩也はそれを腕でガードしようとする。

 しかし友利のパンチの方が早く顔に当たった。


 そのまま浩也は倒れて、起き上がらずにただ空を見上げていた。


「はあ、はあ、はあ......」


 普段、運動はしない上にひ弱だ。

 無茶をした友利もその場に座り込んだ。


 痛い、けれど今まで溜まっていた感情を出せたからかモヤモヤは晴れた。


「友利.....お前は俺のことどう思ってる?」

 

 息を整えていると浩也は弱々しい声で友利にそう言う。

 喧嘩して負けて、思考が変わったのか普段なら言わない言葉だ。


「うざい人、元は仲良かった幼馴染。それぐらいの認識」

「......だよな、当たり前だ」

「謝る気は? ......謝ってくれたらまたゆっくりやり直そう」


 友利はそう言って浩也に手を差し出した。

 昔みたいな関係に戻るつもりはない。

 ただ、たまに昔のように話せたらそれでいい。


 しかし浩也はその手を取らずに自分で立ち上がった。


 そして浩也は去っていく。

 友利は止めようとした。

 しかし浩也を止める言葉が思いつかなかった。


「俺もお前がうざくて仕方ない。お前のその優しさが一番腹立つ......最悪の日だよ、本当」


 浩也は声を振るわせながらそう言った。

 その背中は大きくも小さくもなく、友利と同じくらいの背中だった。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 正直、嫌ってても不思議ではない関係なのに、仲直りしようとしてるのが意味わからないな。 主人公は良い人間ということを表現したかったのかもだけど、思考が人間離れし過ぎてて不気味まである。
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