表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/110

95 急報

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


ハンターギルドでの大量の納品を終えた後、【ボードゲーム】の使い方を教えるという名のもとに、ハンターギルドの幹部のみなさんといっしょに【ボードゲーム】を楽しんだワタシたち。

おチビなワタシは、大勢のひと、特にオトナのひとといっしょにゲームをするのははじめてのことだったので、うれしさのあまり、【ボードゲーム】のレクチャーそっちのけで、必要以上にキャッキャとはしゃいでしまいました。

そうこうしていると、時刻はもうすぐお昼、そんな時間になりました。

とても充実した時間を過ごしたワタシは、やり切ったとばかりに、大変満足気な表情でお家に帰ります。

帰路の途中、ハンターギルドの裏庭の広場を通ると、例の鍛冶ギルドのちっちゃいおじさんたちは、未だに【出前機】をアレコレといじっていました。


マスター「オレは裏庭の広場に残る。午後からの【三輪自転車】と【リアカー】の引渡しがあるからな」


アイリーン「私はおチビちゃんたちのお家にお邪魔していいかしら?」


「もちろんいいで~す」


ねぇね「ぜひぜひ」


おにぃ「おチビを見ていてくれると、ありがたいです」


ねぇねとおにぃはこれから【簡易エリクサー】作成の内職があるので、お家を通り過ぎて、そのまま出勤です。

その間のワタシの子守りは、今日はアリスちゃんとアイリーンさんの2人体制になるみたいです。


「ねぇね、作業が終わったら、また【トランシーバー】で連絡してね?」


ねぇね「うん。早く終わらせて、すぐ戻ってくるね~」


おにぃ「それじゃ、行ってくるな~」


「いってらっしゃ~い」 (^◇^)/~~


そんなやり取りをしていたら、アイリーンさんから質問が飛んできました。


アイリーン「ねえおチビちゃん、その【トランシーバー】のこと、詳しく教えてくれない?」


考えてみたら、【トランシーバー】のことはアイリーンさんにちゃんと報告していませんでした。


「えっとね、この【トランシーバー】を使うとね、離れたところにいるひととお話ができるの」

「だからね、ねぇねとおにぃがお家から離れても、すぐに連絡ができるんだ~」


アイリーン「え? そうなの? てっきりベアトリスお嬢様としか会話できないと思っていたわ」

アイリーン「凄いじゃない! そんな便利な道具があるなんて」


「あっ、でもね、あまり遠すぎると【電波】が届かないから、お話できなくなっちゃうの」

「【電波】で遠くまでお話できるのは、ビーちゃん様だけなんだよ?」

「ビーちゃん様の【電波】魔法って、すごいんだ~」


アイリーン「ベアトリス様の魔法、凄かったのね? 噂では、『ハズレ』属性として有名だったに」


「違うよ! 『ハズレ』なんかじゃないよ! ビーちゃん様の魔法は、とっても便利なんだよ!」

「ビーちゃん様の魔法は、領主館にいてもワタシとお話できるし、それに【トランシーバー】のある場所がわかるみたいなんだよ?」

「すごいでしょ? ビーちゃん様の【電波】魔法は、とっても『アタリ』なんだよ?」


アイリーン「領主館にいながらおチビちゃんとお話が? それは確かに凄いわね」


そんなお話をしつつ、【トランシーバー】の電源を入れるワタシ。

するとその刹那、まさにその話題の人物から通信が入ってきました。


ベアトリス『お~い、おチビちゃんでしょ~? 聞こえるかしら~?』


『は~い。ビーちゃん様、こんにちは~』


ベアトリス『こんにちは~。おチビちゃんは、今お家にいるのよね? 何してるの?』


『えっとね、ねぇねとおにぃが帰ってくるのを待ってるんだけど、今日は久しぶりにお庭で遊ぼうと思ってるの』


ベアトリス『そうなのね。実はお父様からおチビちゃんたち宛ての手紙を預かってるの』

ベアトリス『遊びついでにそっちに行ってもいい?』


『遊んでくれるの? 待ってる待ってる~』


ベアトリス『それじゃ、今から行くわね~』


『は~い』


【トランシーバー】を使ったワタシとビーちゃん様の会話を聞いていたアイリーンさんは、ビックリ顔です。


アイリーン「本当に凄いわね。たぶん領主館にいるベアトリス様と普通に会話できてるし・・・」

アイリーン「ねぇおチビちゃん、その【トランシーバー】、私たちにも使わせてもらえないかしら」


「えっとね、この【トランシーバー】も電池を使うから、【カメラ】といっしょで、あまり広められないの」


アイリーン「もちろん広めるためじゃなくて、身内というか、ギルド幹部の連絡用に、少数だけ使わせてもらいたいの」


「う~ん、それなら大丈夫かな?」


ということで、本日11回目の【想像創造】です。



【小電力トランシーバー AM送受信 送信出力10mW 単3電池3本 本体重量100g 6台セット 28,990円】×10 289,900円



いろいろ考えたワタシは、ちょっと多めの60台、【トランシーバー】を創り出すことにしました。


(ハンターギルドの幹部のひと用と、あとは、ビーちゃん様ももっと欲しいよね?)


アイリーン「え? こんなにたくさん?」


「アイリーンさんには、この1セットなの。1セットで6台あるんだよ?」


アイリーン「そうね、ギルド幹部の人数分あればいいから、足りるわね。ありがとう」


「あっ、でもね、【トランシーバー】でナイショのお話をするとね、ほかの【トランシーバー】を使っているひとにも聞かれちゃうから注意してね?」


アイリーン「ん? それはつまり、どの【トランシーバー】にも同じ会話が聞こえてしまうということ?」


「そうで~す」


そんなお話をしていたら、ワタシの子守り役、アリスちゃんもやってきました。


アリス「おチビちゃん、こんにちは~」

アリス「わぁ~、なんだか箱がいっぱいだね? また何か出してたの?」


「アリスちゃん、いらっしゃ~い」

「あっ、そうだ! アリスちゃんにも【トランシーバー】あげるね?」


アリス「これって、ビーちゃん様とお話できる魔道具でしょ? もらっていいの?」


「うん。急な連絡とかに便利だから、アリスちゃんも持っててね?」


アリス「ありがと~。大切にするね~」


アイリーン「ちなみに残りはどうするの? かなりの数があるみたいだけど」


「残りはね、ビーちゃん様にあげるの」

「ご領主さまとか、町の衛兵さんとか、連絡用にいっぱいあった方がいいでしょ?」


アイリーン「なるほど、そういうことね」


そんなやり取りのあとは、おチビなワタシはお昼寝タイム。

アイリーンさんとアリスちゃんは【トランポリン】を楽しむということだったので、ワタシは【軽パコ】のリアハッチを開け放って、『寝る子は育つ』という言葉に願いを込めて、ひとり微睡むのでした。

それからしばらくして、周りの騒がしさで目が覚めたワタシ。

眠気まなこをこすりながら起き上がると、ねぇねとおにぃがワタシの顔を覗き込んでいました。


ねぇね「おチビちゃん、目が覚めた? お話聞ける?」


「ふぅわぁ~っ。おはよ~、どうしたの~?」 ヽ(´0`)ノ


おにぃ「よく分からないけど、なんだか大変なことが起きたみたいだぞ?」


ねぇねとおにぃからそんな報告を聞いていると、いつもの護衛さんを連れたビーちゃん様が、慌てた感じで駆け寄ってきました。


ベアトリス「おチビちゃん、大変なことになったみたい。今【電波】で連絡がきたんだけど、隣の領が、我が領との領境を閉鎖したらしいの」


「領境の閉鎖?」


ベアトリス「どうやら隣の男爵領で病気が流行り始めたみたいなんだけど、その原因が我がオーレリア領だと判断したみたいで、一方的に領境を閉鎖してしまったみたいなの」


「領境を閉鎖すると、なにか悪いことがあるの?」


ベアトリス「悪いどころじゃないの。我が領は山と川に囲まれた場所にあるのだけれど、他領に出るには、その男爵領を抜けるしか道がないの」

ベアトリス「つまり、男爵領が領境を閉鎖すると、我が領は外とのやり取りが一切できなくなっちゃうの!」

ベアトリス「王都や他の町との連絡も取れなくなるし、何より物流が止まって町の経済が、町のみんなの生活が止まっちゃうの!」

ベアトリス「隣の領は、普段からちょっとでも何かあると嫌がらせをしてくるから・・・」

ベアトリス「だけど本当にこの町で病気が流行っているとしたら・・・」


とうやら思いのほか大変な状況のようです。

ビーちゃん様の説明を聞く限り、ワタシたちがいるオーレリア領は完全に孤立しちゃったみたいです。

しかも、お隣の領とは、普段からあまり仲良くない、そんな感じみたいです。


(う~ん。一番気になるのは病気のことだよね?)

(もしかすると、昨日のレイラさんの咳、あれとも関係があるのかも・・・)

(とにかく、もっと情報を集めなくちゃだよね?)


ということで、早速ビーちゃん様に提案です。


「ビーちゃん様、あのね、すぐにこの町の状況をいろいろと調査した方がいいと思うの」

「本当にこの町で病気がはやっているのかとか、病気になっているひとがいるなら、どこにどれくらいいるとか、ちゃんと調べた方がいいと思うの」

「それでね、ここに【トランシーバー】がたくさんあるから、これを持って衛兵のみなさんに町を回ってもらって、報告してもらえばいいんじゃないかな?」


そう言って、残り53台ある【トランシーバー】を指し示します。


ベアトリス「そうね。まずは、隣の領が言っていることが本当に正しいのか、状況を正確に把握しなくちゃいけないわね」


そう言うと、ビーちゃん様は何かを念じはじめました。

たぶん、【電波】魔法で関係者に連絡しているのでしょう。

万が一、本当にこの町で病気がはやっているのなら、調査する衛兵のみなさんも感染してしまうかもしれません。

その可能性を少しでも減らすため、レイラさんにも渡したモノを、本日最後の12回目の【想像創造】で創り出します。



【使い捨てマスク 立体3層不織布 ゴム紐 ノーズワイヤー 薄青色 50枚×10箱 1,980円】×600 1,188,000円



無意味かもしれないけれど、備えあれば何とやら、やらないよりやった方がマシ、ということで、マスクを大量に創り出しました。

その数、50枚×10箱×600で、300,000(30万)枚。

この町の人口がどれくらいなのか知りませんが、これだけあれば何とかなるでしょう。


(とりあえず、これを衛兵のみなさんに着けてもらって、住民のみんなにも配ってもらえばいいかな?)


そう思った瞬間、いつものワタシのステータス画面が目の前に現れました。



 名前:アミ

 種族:人族

 性別:女

 年齢:5歳

 状態:発育不良 痩せすぎ


 魔法:【なし】

 スキル:【想像創造】レベル13(13回/日 または、13倍1回/日)



いつものように、スキルのレベルアップをお知らせしてくれたみたいです。


(わぁ! 【想像創造】がレベル13になった!)


とりあえず、今日はあと1回、追加で【想像創造】できるようになりました。

ということなので、体力アップの例のモノも【想像創造】しちゃいます。



【第2類医薬品 ドリンク剤 ユンカース栄養液DCFノンカフェイン 30ml 3本 1,470円】× 800 1,176,000円



レイラさんにも渡した、ノンカフェインのドリンク剤も大量に創り出しました。

総数は、3本×800で、2,400本。

まずはいろいろと忙しくなるだろう衛兵のみなさんに1本ずつ飲んでもらって、残りは病気のひとがいたら配ってもらうことにしましょう。

マスクと栄養ドリンクのことをビーちゃん様に一通り説明して、早速行動に移ってもらいます。


「ビーちゃん様、昨日ね、市場で変な咳をしたひとがいたって聞いたの」

「そのあたりも調べてもらってね?」


ベアトリス「おチビちゃん、【マスク】と【栄養剤】、そしてその情報、とても助かるわ」

ベアトリス「早速衛兵を手配して、いろいろ調べてみる!」


凛とした口調でそう言うと、またも何かを念じはじめたビーちゃん様。

その立ち居振舞いからは、『上に立つ者』の風格すら感じられます。


(ビーちゃん様、すごいな~。ビーちゃん様、立派だな~)

(ふれーふれービーちゃん様! がんばれがんばれビーちゃん様ー!! ファイトー!!!) (p>_<q)


おチビなワタシには、この町のおかれた状況だとか、町の経済のこととかはよくわかりません。

それでも、目の前のおともだちが、この状況をどうにかしようと一生懸命なことだけはわかります。

そんな、【電波】魔法をフル活用して自領を守るビーちゃん様に、尊敬の眼差しと共に、心の中で声援を送るワタシなのでした。


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ