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86 人類の憧れ

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


ワタシの【想像創造】のレベルが10になった翌日。

午前中の早めの時間に【ジョシュア雑貨店】のいつもの納品を終え、その完了報告をするためにハンターギルドの受付にやってきたワタシたち3人。

受付カウンターにお目当てのアイリーンさんを見つけると、早速、常設依頼完了の手続きをしてもらいます。

そしてそれが終わると、ここからが本番とばかりに、ワタシはアイリーンさんを勧誘しはじめます。


「アイリーンさん、あのね? これからワタシたち、人類の憧れに挑もうと思うの」

「それでね? お仕事とは関係ないことだけどね、アイリーンさんもごいっしょし~ましょ~?」


アイリーン「え? 人類の憧れ? 何だかとっても大ごとみたいだけど、一体何をするつもりなの?」


「それはそのときまでのお楽しみで~す♪」 o(^o^)o


アイリーン「何だかよく分からないけど、もちろん専属として立ち会いはさせてもらいますよ?」

アイリーン「でも、おチビちゃんがわざわざ事前にこんなことを言うなんて・・・」

アイリーン「ちょっと、いいえ、かなり不安だわ・・・」


そんな感じでオトナの立ち会い人さん(という名の共犯者)をゲットしたワタシたちは、そそくさとハンターギルドの裏庭の広場に移動です。

その道すがら、いつもと違うワタシの言動に何かを感じ取ったのか、すれ違った職員さんに一言二言伝言を頼んだアイリーンさん。

するといくらもしないうちに、野次馬根性丸出しのニヤケ顔で、マスターさんもいつの間にやらご登場なのでした。

そんなこんなでハンターギルドの裏庭の広場の真ん中付近に到着したワタシたち一行。

そこでワタシはアイリーンさんに日頃から疑問に思っていた素朴な質問をしてみます。


「ところでアイリーンさん、魔法で空を飛んだり浮いたりすることってできるの?」


アイリーン「風で物を飛ばしたり、重力を軽減して物を軽くするぐらいなら聞いたことがあるけど・・・」

アイリーン「空を飛ぶとか浮くとか、そういう魔法があるとは聞いたことがないわね」

アイリーン「もしかして、今このタイミングでそんなことを聞くっていうことは・・・」


「そうで~す。今からワタシたち、お空へ飛んじゃいま~す」


そう言って、例のモノを、10倍1回/日の【想像創造】で創り出しちゃいます。


(今日は晴天、そして無風。絶好の空中散歩日和だね)

(よ~っし! 飛ぶ寸前の状態で、アレを【想像創造】!)



【熱気球 遊覧用大人5人乗り バルーン高さ:約25m、直径:約19m 地上固定用ロープ100m 8,800,000円】



ワタシたちの目の前に、前世で見たことがある、派手なパステルカラーの巨大なバルーンが現れました。

するとその瞬間、いつものワタシのステータス画面も登場です。



 名前:アミ

 種族:人族

 性別:女

 年齢:5歳

 状態:発育不良 痩せすぎ


 魔法:【なし】

 スキル:【想像創造】レベル11(11回/日 または、11倍1回/日)



いつものように、スキルのレベルアップをお知らせしてくれたみたいです。


(わぁ! 【想像創造】がレベル11になった!)

(1回の【想像創造】でレベルアップしちゃったよ~)

(ということは、レベルアップの条件は、創り出したモノの数じゃなくて、金額なのかな?)


とりあえず、今日はあと1回、追加で【想像創造】できるようになりました。

そしてワタシが自分のステータス画面を確認し終えると、驚きで固まっていた周りのみんなも一斉に騒ぎ出しました。


おにぃ「うわぁ~でっけぇ~」

おにぃ「今までおチビが創り出したモノの中で、一番でっけぇ~」


ねぇね「わぁ~、すご~い。見上げちゃう大きさだね~」


マスター「なっ何だこりゃ~! 見たとこでっけぇ風船か?」


アイリーン「まさか、これは空を飛ぶ乗り物なの?」


「ぱんぱかぱ~ん! これは【熱気球】と言ってね? お空を飛ぶことができる乗り物なんだ~」 \(o^ ^o)/

「でもね、この【熱気球】は、お空に浮くだけしかできないの」

「進む方向は風まかせになっちゃうんだ~」

「だからね、風でどこかへ飛んでいかないように、ロープでしっかりつなげておきたいの」


マスター「オイオイ、それじゃホントにただのでっけぇ風船じゃねぇか」

マスター「とりあえず、ハンターギルドの建物は石造りで丈夫だろうから、その柱にでもロープをくくりつけておくとするか」

マスター「あと念のため、そこらにいる暇そうな連中をとっつかまえてくらぁ」

マスター「何かあったときのため、人手はあった方がいいみてぇだしな」


そう言うや否や、テキパキ&的確な行動を開始してくれたマスターさん。

どうやらただの野次馬さんではなかったみたいです。

そうこうしていると、見慣れたギルドの職員さんや、例の『赤ヘル』を装着した郵便屋さんと思しきひとたちが、ワラワラと集まってきました。


マスター「よ~っし、こんだけいれば十分だろう」


そんな感じで諸々準備が整ったようなので、無風の今のうちに、遊覧飛行を楽しんじゃうことにします。


「それじゃあみんな、ゴンドラに乗ってね?」


アイリーン「ゴンドラ? それって、この大きなカゴのこと?」


「そうで~す」


ワタシとねぇねとおにぃ、そして、アイリーンさんとマスターさんが乗り込んだら、早速上昇開始です。


「おにぃ、いつもの【ドライヤー】魔法をすごく熱くして、上のバルーンのお口に向けて出してほしいの」


おにぃ「ん? 髪とか服を乾かすいつもの魔法か? すごく熱くていいんだな?」


「そうで~す。お願いね?」


ボゥォ~~~


おにぃは毎日、火魔法と風魔法を巧みに操り、お風呂あがりにワタシたちのドライヤー係として活躍してくれています。

そんな日頃の訓練? の結果、以前はあまり得意ではなかった風魔法も、今ではかなり使えるようになってきました。

今日の【熱気球】によるフライトは、おにぃの火魔法と風魔法があって、はじめて実現できたのです。


(おにぃはすごいよね~。火魔法だけじゃなくて、風魔法も達人レベルで操ることができるんだよ?)

(二刀流ってヤツなのかな? カッコイイよね~) (o~ー~)


ワタシが頭の中でおにぃを褒め称えていると、そろそろとゴンドラが浮き出しました。


グラッ


ねぇね「わぁ!」


アイリーン「きゃっ!」


マスター「お? 浮いてきやがったぞ」


おにぃ「へぇー、デカい風船みたいなヤツに熱い風を送ると、こんな感じに浮くのか~」


「そうなの。熱い空気は上に行くから、それを大きな風船で捕まえてあげれば、風船ごと持ち上げてくれるんだ~」


そんなお話をしている間もゆっくり上昇を続ける【熱気球】。

しばらくすると、ハンターギルドの裏庭の広場の上空20メートルぐらいに達しました。

あまり高く行くのはいろいろと怖いので、この辺りでおにぃに送熱風を止めてもらいます。


ねぇね「わぁ~、高いねぇ~」


おにぃ「そうだな~、でも何かいい気分だな~」


アイリーン「凄く見晴らしがいいわ~。とってもステキね~」

アイリーン「あっ、見て見て! 下の人たちがあんなに小さく見えるわよ?」


ねぇね「ホントだ~」


おにぃ「スゲェ~」


ねぇねは高いところを怖がるかと思っていましたが、ニコニコ笑顔で周囲の景色を楽しんでいます。

おにぃも目を輝かせて、気分よさげに周囲を観覧しています。

それはアイリーンさんも同様で、たまにゴンドラから体を乗り出して、下の状況を確認したりしています。


マスター「お、オレは、ちょ、ちょっとばっかり、落ち着かねぇな・・・」


そう言って、ゴンドラの縁にしがみつくような姿勢になったマスターさん。

いつもの強面が引きつって、より一層アレな感じになっちゃっています。


アイリーン「あららら? もしかしてあなた、怖いのかしら?」


マスター「そ、そんなんじゃねぇ。ただちょっと、寄る辺ないというか何というか、ケツがムズムズするだけだ」


(もしかすると、マスターさんは高所恐怖症なのかな?)


そんなことを思いつつワタシも風景を楽しもうとしたのですが、おチビなワタシにはゴンドラの高い囲いが邪魔をして、清々と風景を楽しむことはできません。

所々に空いているちっちゃな覗き穴からのチラ見になっちゃいました。

それでも移り行く風景を十二分に満喫していると、この町の街壁の外側に、大きな川を見つけました。


「あっ! 大きな川があるよ?」


おにぃ「どこだ?」


「あっちあっち!」


ねぇね「あ、ホントだ~」


アイリーン「ああ。あの川は、ロータル川と言って、この国最大の川なのよ?」

アイリーン「あの川を下ると海まで行けるの。そしてその途中には王都もあるわね」


「へぇー」


そんな会話を交えつつ、しばしの遊覧飛行はつつがなく終了。

リップラインと呼ばれる下降用のヒモを引いてバルーンの空気を抜きつつ、ゆっくりソフトに着陸です。


「う~ん。楽しかったね~」


ねぇね「お空って、キレイだったね~」


おにぃ「そうだな~。それにしても、こんな簡単に空を飛べるなんて思ってもみなかったよ」


アイリーン「最初は不安だったけど、思いのほか楽しかったわ~」


マスター「はぁ~、やっと地面か~。お、オレはもう、御免こうむりてぇ・・・」


本当はもっとお空からの景色を楽しみたかったのですが、時刻はもうすぐお昼という時間。

そう、ねぇねとおにぃの内職タイムが迫っているのです。

ということで、ねぇねとおにぃには【マダムメアリーの薬店】へ向かってもらうことになりました。


「ねぇね、内職が終わったら、また【トランシーバー】で連絡してね?」


ねぇね「うん。そうするね」


おにぃ「すぐ帰ってくるから、おチビはおとなしくしてるんだぞ?」


「うん。いってらっしゃ~い」 (^◇^)/~~


そう言って、いつでも連絡を受けられるように【トランシーバー】の電源を入れたワタシ。

すると、いきなり聞き覚えがある声が【トランシーバー】から聞こえてきました。


?????『あっ! これっておチビちゃんかな? お~い、聞こえる~?』


『え? この声ってもしかして・・・』


?????『そうよ~、私よ私~』


前世の感覚だと『新手のオレオレ詐欺?』と思わなくもないセリフですが、違いました。

巧妙な手口(【電波】魔法)を使った、知り合って間もない人物(おともだちのビーちゃん様)からの着信アリなのでした。


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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