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84 おやつに甘味を

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


ベアトリス「おチビちゃん、素敵なプレゼントありがとう。早速【電波】魔法をいろいろ試してみたいから、今日はもう帰るわね?」

ベアトリス「今度会うときには、胸を張れる報告ができるように、できる限りのことはしてみるつもりよ」


「うん。ビーちゃん様、がんばってね~」

「バイバ~イ、また遊んでね~」 (^-^)/~~


ベアトリス「それじゃあね~」


そう言って、【トランシーバー】を抱えた護衛さん2人と共に、片手をあげて颯爽と草むらの小道を帰っていくビーちゃん様。

なんだかとても凛々しく感じられる後姿です。


アリス「ビーちゃん様、とってもやる気だね」

アリス「それと、お顔がちょっとスッキリしてたね」


「そうだね、カッコよかったね」


アリスちゃんとそんなお話をしていると、帰っていくビーちゃん様とは反対側の草むらから、ねぇねとおにぃが現れました。


おにぃ「おチビ~、ただいま~」


ねぇね「おチビちゃ~ん、お待たせ~」


「あっ! ねぇね、おにぃ、おかえり~っ!」


お返事しながら2人に駆け寄り、すかさずねぇねとおにぃの手を取るワタシ。

本当はガバッと抱き着きたかったけれど、アリスちゃんもいることですし、ちょっと人目を気にして自重するワタシなのです。

こうして、ワタシのお留守番という名のお昼寝タイムは、全くその役目を果たすことなく終わってしまったのでした。


アリス「2人も戻ってきたことだし、私はお店に戻るね?」

アリス「また明日来るねー」


ねぇね「アリスちゃん、今日はありがとう」


おにぃ「悪いけど、明日もよろしくな~」


「アリスちゃん、バイバ~イ」 (^-^)/~~


ねぇねとおにぃと合流してアリスちゃんとお別れした後は、納品完了に向けて、今日も【三輪自転車】と【リアカー】を納品します。

戻ってきたばかりで申し訳ないけれど、おにぃにハンターギルドの受付までひとっ走りしてもらい、納品の立ち会いをお願いするため、ワタシたちの専属、アイリーンさんを呼んできてもらいます。

おにぃがアイリーンさんを連れてくるのを待っている間、ねぇねに先程までのビーちゃん様とのことをお話しておくことにします。


「ねぇね、あのね? ビーちゃん様のことなんだけどね? ビーちゃん様、全然『ハズレ』なんかじゃなかったよ?」

「ビーちゃん様の魔法、すごく便利かもしれないんだ~」


ねぇね「ん? もしかしてビーちゃん様、ここに来てたの?」


「そうなの。それでね? ビーちゃん様、ねぇねとワタシの【トランシーバー】でのお話を、頭の中で聞くことができたんだよ?」

「それってすごいことなんだ~」


ねぇね「そうなのね。おチビちゃんがそう言うのなら、きっと凄いことなんだね?」


そんな会話をしていると、待ち人プラスアルファさんたちがやってきました。


おにぃ「お~い。呼んできたぞ~」


アイリーン「お待たせ~」


マスター「よぉ!」


どうやらひとり、呼んでいない強面さんまでついてきてしまったようです。


(マスターさん、いつもお仕事大丈夫なのかな? ほったらかしにしてないよね?)


そんな心配をしつつ、早速納品作業開始です。


(レベルアップしたから、昨日より多く創り出せるはずだよね?)

(よ~っし、今日も一気に【想像創造】!)



【オトナの三輪車 マウンテントライク24インチ 7スピードギア リアショッピングバスケット付き 赤色 43,900円】×18 790,200円


【オトナの三輪車 マウンテントライク24インチ 7スピードギア リアショッピングバスケット付き 青色 43,900円】×18 790,200円


【オトナの三輪車 マウンテントライク24インチ 7スピードギア リアショッピングバスケット付き 黄色 43,900円】×18 790,200円


【アルミ製折り畳みリアカー ノーパンクタイヤ仕様 全長240×全幅116×全高81cm 質量40kg 耐荷重350kg 89,800円】×8 718,400円



連続4回の【想像創造】で、色違いの【三輪自転車】を各々18台ずつ、そして【リアカー】を8台、一気に創り出しちゃいました。

これで今日は7回【想像創造】したことになります。

今日の追加納品で、【三輪自転車】は、赤色、青色、黄色の各々合計46台ずつになりました。

【リアカー】は、合計22台になりました。

【三輪自転車】に比べて【リアカー】の台数が少ないと思ったワタシは、本日最後、8回目の【想像創造】で、【リアカー】を追加納品することにします。



【アルミ製折り畳みリアカー ノーパンクタイヤ仕様 全長240×全幅116×全高81cm 質量40kg 耐荷重350kg 89,800円】×8 718,400円



これで【リアカー】は、合計30台になりました。

すると、毎度お馴染みのワタシのステータス画面が出てきました。



 名前:アミ

 種族:人族

 性別:女

 年齢:5歳

 状態:発育不良 痩せすぎ


 魔法:【なし】

 スキル:【想像創造】レベル9(9回/日)



またまた、スキルのレベルアップをお知らせしてくれたみたいです。


(やったね! 【想像創造】がレベル9になって、これで1日9回使えるようになったよ!)


今日は8回【想像創造】したので、あと1回、追加でなにかを創り出せます。


(状態は【発育不良 痩せすぎ】のままだね~。残念)



そんな感じで、今日の納品作業は完了です。


「納品かんりょ~」


ワタシがそう宣言した瞬間、どこからともなく可愛らしいハーモニーが聞こえてきました。


クゥ~ッ

キュゥ~ッ

キュルルル~ッ


その音の発生源は、ワタシ、ねぇね、そして、おにぃのお腹。

示し合わせたかのような絶妙なタイミングで、3人同時にお腹が鳴ってしまったのです。

今朝はメアリーさんとアリスちゃんにも朝食の炊き込みご飯をおすそ分けしたので、朝食がいつもより少なめだったワタシたち3人。

一仕事終えて午後を迎えた今、小腹がすいてしまったのです。


「ねぇね、おにぃ、ワタシね? ちょっとお腹が空いちゃった」 (゜¬゜)


おにぃ「オレも」 (^^)


ねぇね「わ、私もなの・・・」 (。-_-。)


おにぃはいつもどおりの表情ですが、ねぇねはちょっと恥ずかしそう。

アイリーンさんとマスターさんを気にしているのか、下を向いてお顔を赤くしてしまいました。


「あのね? また、ローラおねえちゃんのお店に行かない?」


おにぃ「昨日行ったばかりなのに、今日も行くのか?」

おにぃ「何だかローラさんに悪くないか?」


「でもローラおねえちゃん、毎日来ていいよって言ってたよ?」


ねぇね「う~ん。手ぶらだとさすがに気が引けるから、何かおみやげを持っていこうか?」


「あっ! 今日、【魔法瓶】をたくさん創り出したから、お茶を作って、それに入れていく?」


おにぃ「【魔法瓶】って、アレだろ? 作ったポーションの一部をもらうために持って行った、銀色の水筒のことだろ?」


「うん。アレに入れておくとね、温度が変わらないから、ずっと温かいままなんだ~」


ねぇね「それいいかも。それじゃあ、私たち2人でお茶を作ってくるね」


そんな訳で、ねぇねとおにぃがお茶を作りに戻っていくと、アイリーンさんがワタシに話しかけてきました。


アイリーン「『まほーびん』というモノも気になるけど・・・」

アイリーン「ねえ、おチビちゃん。もしかして、例の【ホケミ】で作るお菓子屋さんに行くのかしら?」


「そうで~す! おやつを食べさせてもらいま~す」


アイリーン「それなら、私もついて行っていいかしら」

アイリーン「前に『シャッシン』で見せてもらったパンケーキ? アレ、ずっと気になってたのよね~」


マスター「そういうことなら、オレもいくぜ! というより、【三輪自転車】と【リアカー】で、その店まで送ってやるぞ?」


ということで、マスターさんによる送迎付きで、みんなで【ガレットのお店 ローラ】へ行くことになりました。

そしてお出かけの準備が整ったら、みんなで『マスターさんタクシー』に乗り込んで、ローラおねえちゃんのお菓子屋さん【ガレットのお店 ローラ】に横付けです。


「ローラおねえちゃん、こんにちは~」


「「こんにちは~」」


ローラ「やあ! おチビちゃんたち、いらっしゃい」

ローラ「あれ? 今日は大人のお客さんも連れてきてくれたの?」


「そうで~す。ハンターギルドのアイリーンさんとマスターさんで~す」


アイリーン「ローラさん、こんにちは。先日ぶりですね」


マスター「邪魔するぜ」


そんなご挨拶をしていると、ローラおねえちゃんの横に、ローラおねえちゃんより見た目も雰囲気も少しふくよかな女性がいることに気がつきました。


ローラ「ん? ああ。こちらはレイラ。ウチの姉でね、お店の手伝いに来てもらってるの」


レイラ「どうも~、妹がお世話になってま~す」


「「「はじめまして~」」」


レイラさんの自己紹介によると、レイラさんは普段、牛乳や卵をこの町の市場に卸しているとのことでした。


レイラ「私ね、実家を継いで酪農をしてるんだけど、ローラがどうしても手伝ってほしいと言うから、午前の配達が終わった後、少しだけお手伝いすることになったの」

レイラ「妹共々、よろしくどうぞ~」


そんなレイラさんとのご挨拶の後、みんなでお店の奥のカフェスペースへ進むと、とても興味を惹くモノが目に入ってきました。

寸胴鍋のような大きな入れ物と、割れたりひびが入ったりした卵が入った深皿が、調理台の近くに置かれていたのです。


レイラ「ん? おチビちゃん、アレ、気になっちゃう?」

レイラ「アレはね、売れ残りの牛乳と、商品価値がない卵なの」


どうやら市場で引き取ってもらえなかった売れ残りの牛乳と、輸送中に割れちゃった卵のようです。


レイラ「卵って、どうしても輸送中に何個か割れちゃうのよね~」

レイラ「卵はいいお値段で売れるから、今日みたいに割れた卵が多い日は、結構厳しいのよね~」


そんなレイラさんの愚痴ともぼやきともとれるお話を聞いたワタシは、チャンスとばかりにもちかけてみます。


「レイラさん、あのね? 卵が割れにくい入れ物があるんだけど、もらってくれる?」

「その代わりね? その売れ残りの牛乳と割れた卵を使わせてほしいの」


レイラ「もちろんいいわよ~。売れ残りはどうせ処分しなければならないし」


ローラ「なになに? もしかして、またおチビちゃんの新しい提案がはじまるの?」


「そうで~す!」


ということで、本日ラスト、9回目の【想像創造】です。



【プロテクターツールケース 波型ウレタン(軟質)・切れ目入ウレタン(硬質)の混合緩衝材入り 防水 ポリプロピレン樹脂製 寸法350×280×150mm 質量1.7kg 11,900円】



前世で【カメラ】やレンズを輸送する際に使っていた、精密機械運搬用のケースです。

このケースにしまったモノは、中にびっしり詰まったウレタンの緩衝材に包まれて、ちょっとやそっとの衝撃ではびくともしなくなるという逸品です。


「はい、卵をこの【ケース】に入れて運べばね、馬車でガタガタ揺れたとしても大丈夫だと思うよ?」


レイラ「へぇー、それはすごく助かるわ~。ありがとうね。早速明日から使ってみるわね」


ということで、売れ残りの牛乳と廃棄寸前の卵をゲットしたワタシ。

いつもねぇねがボディバッグに忍ばせている小袋入りのはちみつを追加して、早速レッツクッキンです!

まずは、牛乳と卵とはちみつを、おにぃの魔法で少しずつ温めながら混ぜ合わせます。

そして、ねぇねの魔法で完全になめらかになるまで混ぜてもらいます。


(ねぇねの魔法で混ぜてもらうと、裏ごししたみたいにとってもなめらかになるんだよね~)


そして器に入れて、あとは蒸すだけ。

ローラおねえちゃんにお鍋を用意してもらい、ねぇねの水魔法と、おにぃの火魔法で蒸すことしばし。

牛乳と卵とはちみつだけで作った、甘さ控えめ、シンプル【プリン】の完成です。

おいしくいただくため、完成した【プリン】は、ねぇねの水魔法で出した冷たいお水で冷やしておきます。


ローラ「ねぇおチビちゃん、これは何ていう食べ物なの?」


「これはね? 【プリン】という、甘くておいしいお菓子なの」

「食べるとちゅるんとしてね、なめらかでとろける感じで、ワタシの大好物なんだ~」


ローラ「おチビちゃんの大好きなお菓子? それは期待しちゃうね」


アイリーン「おチビちゃん、あなた、お料理もできたのね?」


「お料理はねぇねとおにぃがやってくれたんだよ? ワタシはなにもしてないよ?」


マスター「いやいやいや、何もしてねぇということはねぇだろう」

マスター「作り方から分量まで、指示してたのは全部おチビだろうが」


レイラ「う~ん。とっても甘くて美味しそうな匂いね~。細かいことはどうでもいいから、早くいただきましょうよ」


マスター「お、おぅ・・・」


おっとりとした見た目と違って、意外と性格強キャラな感じのレイラさんの音頭で、早速実食タイムです。


「う~ん。程よく甘くて、おいしぃ~」 (*^~^*)


ねぇね「あま~い。でもただ甘いだけじゃなくて、コクもあってなんだかやさしぃ~」


おにぃ「うめぇ~。柔らかくてなんだか口の中が変な感じだけど、とにかくうめぇ~」


マスター「スゲェなコレ。あんな簡単な作業と材料だけで、これほどの甘味になるとはな・・・」


アイリーン「美味しっ。これ、今までで最高のお菓子かも」

アイリーン「それに、この黒茶色のお茶の苦みともよく合うわ~」


おにぃ「あっ、それは、タンポポモドキのお茶です」


アイリーン「これが前に話に出た、野草のお茶なのね?」


ねぇね「そうです。これもおチビちゃんが教えてくれたんです」


レイラ「へぇー、おチビちゃんって凄いのね~」

レイラ「それにしても美味しいわ~、この【プリン】」

レイラ「今日は割れた卵が多くて大損だと思ってたけど、でもそのおかげでこの【プリン】と出会えたみたいなものだし、むしろ感謝しなくちゃね~」


ローラ「おっ、おチビちゃん。こっ、これ、ウチのお店でも真似してもいいかな?」


「もちろん・・・いい・・・おいし・・・い・・・お菓子・・・いっぱい・・・作って・・・」 (っ_-。)。o○


おにぃ「おっと。あ~、おチビもうダメだな~」


おやつタイムの語らい中に、やおらコックリコックリしだしたおチビちゃん。

【プリン】の入った容器にお顔からダイブしそうでしたが、すんでのところで、おにぃが抱きとめてくれました。


ねぇね「おチビちゃん疲れちゃったのかな? もしかして、今日はちゃんとお昼寝できなかったのかな?」


アイリーン「あら、おチビちゃんにはいろいろ聞きたかったけど、今日は無理そうね?」


マスター「明日はハンターギルドでいろいろ納品があるだろ? その時に聞けばいいんじゃねぇのか?」


アイリーン「それもそうね、そうしましょうか」


マスター「ということで、そろそろ暇させてもらうぜ」


アイリーン「急に押しかけてしまって、ごめんなさいね?」


ローラ「いえいえ、いつでもお越しください。おチビちゃんたちなら、大歓迎なんで!」


レイラ「・・・ねえローラ。牛乳と卵なんだけど、明日から市場へ卸す量を減らして、この店に持ってくることにするわね?」

レイラ「【プリン】を作って売った方が、何倍も利益になると思わない?」


ローラ「ねぇちゃん、そういう話は、お客さんがいない時にしてくれよ~」


マスター「【プリン】の作り方はオレも覚えた。いっちょ、ハンターギルドでも売り出してみるか」


レイラ「ふふっ。ライバルってことですね? その勝負、受けて立ちますよ?」


マスター「おう! 望むところだぜぇ」


おチビちゃんが電池切れでスピスピしている間に、そんな新たなる戦いの火ぶたが切られようとしていたのでした。


(むにゃむにゃ・・・) (*´~`*)。o○


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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