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79 自転車教習コース

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


【三輪自転車】の教習コースを作るため、ワタシは必要なモノを考えてみます。


(えっと、コースを作るなら、地面に道とかを描く必要があるよね?)

(ということは、地面に線を描けるアレを創り出せばいいかな?)


ということで、本日最後、7回目の【想像創造】です。



【陸上用ライン引き(ライン幅50mm) シロライン(石灰)20kg セット 13,000円】×10 130,000円



前世の記憶の中で、学校の運動会の準備で大活躍していた、コロコロ走らせると石灰粉の白線を引いてくれる、赤いボディの二輪の手押し車、それを10台創り出しました。


(これで裏庭の広場に線を引いて、教習コースを描けばいいよね?)


そんなことを考えていたら、目の前に、お馴染みのワタシのステータス画面が出てきました。



 名前:アミ

 種族:人族

 性別:女

 年齢:5歳

 状態:発育不良 痩せすぎ


 魔法:【なし】

 スキル:【想像創造】レベル8(8回/日)



どうやらいつもどおり、スキルのレベルアップをお知らせしてくれたみたいです。


(やった! 【想像創造】がレベル8になって、これで1日8回使えるようになった~!)


今日は7回【想像創造】したので、あと1回、なにかを創り出せることになります。


(状態は【発育不良 痩せすぎ】のままか~)

(もっともっと、いっぱいおいしいものをたくさん食べるぞ~)


そんなことを考えていると、アイリーンさんがワタシが創り出したモノに興味を示してくれました。


アイリーン「何かしら? この赤い手押し車」


「えっとね、これは【ライン引き】で~す。これをコロコロ転がすとね、地面に白い線が引けるの」

「まずはこの白い粉、石灰の粉をね、この蓋を開けて、ここに入れておくの」


アイリーン「ふ~ん。これを使って、広場にコースを描けばいいのね?」


「そうで~す」


そんな会話をしていると、いつもの聞きなれた野太い声の主がやってきました。


マスター「よお! 裏庭で何にかやってると聞いてきたんだが、今日も【リアカー】と【三輪自転車】の納品だったのか?」


御存知、食堂の強面マスターさんが、片手をあげつつ今日もご登場です。


「うん。納品もしたけど、今から教習コースを作るところなんだ~」


マスター「ん? 教習コースだぁ?」


「えっとね、実際に町中で【三輪自転車】を走らせる前に、たくさん練習して――」


という感じで、マスターさんに今までの経緯を説明しちゃいます。


マスター「なるほどな。するってーと、実際の町の一角をこの広場に描いちまえばいいってこったな?」


アイリーン「そうね。その方がより実践的かもしれないわね」


そんな会話が行われていると、あれよあれよという間に、見知らぬオトナのひとたちがワラワラと集まってきました。


マスター「よ~し、みんな聞いてくれ」

マスター「今からこの赤い手押し車を使って、広場に白線を引く」

マスター「白線で町の一角を描く予定だ」

マスター「一同、オレの指示通り動いてくれ!」


「「「「「「「「お~!」」」」」」」」


ワタシの目の前で、10人弱のオトナのひとたちが、見事な連携プレーを見せてくれています。

さながら軍隊、とまではいきませんが、前世の記憶で例えるなら、全国大会を目指している強豪校の野球部員ぐらいの統率はある感じです。


(なんだか今にも、『バッチコーイ!』とか『ピッチャービビってる~!』とか言い出しそう)


そんな光景を目にしつつ、レベルアップでもう1回使えるようになったので、ワタシはさらに追加で必要と思われるモノを【想像創造】しちゃいます。



【カラーコーン 低密度ポリエチレン製 高さ700mm 幅380mm 750g 赤 990円】×500個 495,000円



白線で描いただけでは、教習コースとして少し物足りないというか、立体感がないと思ったワタシ。

なので、ワタシの目の高さぐらいあるカラーコーンをたくさんご用意してみました。

その数なんと500個。

これを描いた白線の上に等間隔に置いていけば、よりリアリティある教習コースになるのではないでしょうか。


マスター「うお! なんだなんだ? 赤いとんがり帽子みてぇのが、スゲェたくさん出てきやがったな。またおチビが創り出したのか?」


「うん。これはね? 【カラーコーン】という目印なの」

「これを白線の上に等間隔に置けば、立体的なコースになるでしょ?」


マスター「ほうほう、なるほど。それはアリだな」


アイリーン「そうね。その方がただ線を引いただけのコースより、ずっと本格的ね」


マスター「よしみんな~、聞いての通りだ。白線を引き終えたら、その上からこの赤いとんがり帽子を等間隔に置いてってくれ~」


「「「「「「「「お~!」」」」」」」」


そんな感じで、白線を引き終えたオトナのみなさんが、今度は【カラーコーン】と格闘しはじめました。

その隙を見て、役割を終えた【ライン引き】をちょっと拝借するワタシ。

その【ライン引き】を使って、教習コースの邪魔にならない場所に白線で小さめのマルを多数描きます。


おにぃ「ん? 何やってんだ? それ」


ねぇね「おチビちゃん、地面にお絵描きしているの?」


「えっとね? これでね? 『ケンケンパ』ってするの」

「マルの中だけ足をつけていい遊びなんだ~」

「マルがひとつだけのところは片足で、ふたつ横並びのところは両足で立ってね?」

「マルから足がはみ出たら失敗だよ?」


ワタシがはじめたのは、前世の記憶にあった子供のお遊び、『ケンケンパ』の省略バージョン。

おチビなワタシには石を投げたり拾ったりする動作は難しそうだったので、そういった部分はごっそり端折って、ただぴょんぴょんと飛び跳ねてマルの中に足を置くだけで遊んでみることにしました。


「まずはワタシがやってみるね?」


ケンケンパ

ケンケンパ

ケンパ

ケンパ

ケンケンパ


自分で地面にマルを描いただけのことはありました。

ワタシの体格にあった小さいマルばかりだったので、おチビなワタシでも見事に成功です。


おにぃ「へぇー、うまいもんだな~」

おにぃ「『ケン』が片足で、『パ』のときが両足なのか?」


ねぇね「なんか楽しそうだね。次、私もやってみていい?」


「いいよいいよ~」


オトナのひとたちがテキパキと作業を進める中、ワタシたち3人だけは、広場の隅っこでぴょんぴょんと楽しい時間を過ごしたのでした。

そんなこんなで小一時間。

400メートルリレーができそうな学校の校庭ぐらいの広さがある裏庭の広場には、その4分の1ぐらいの面積に、赤い【カラーコーン】で作られた教習コースができあがりました。

おチビなワタシから見ると、ただただワタシと同じぐらいの高さの赤い壁があるだけに見えるその場所。

きっとワタシがひとりでそこに入り込むと、迷路に迷い込んだ感じになっちゃうことでしょう。


マスター「よ~っし、できたな~」

マスター「確認のため、みんな【三輪自転車】で実際にその中を走ってみてくれ~」


「「「「「「「「お~!」」」」」」」」


とっても良いお返事をして、見知らぬオトナのひとたちは、ワタシが納品した赤い【三輪自転車】にまたがりはじめました。


(よよ? みんな赤い【三輪自転車】に乗りはじめたよ?)

(ワタシ、赤い【三輪自転車】は郵便屋さん用だって言っておいたよね?)

(ということは、このひとたちは郵便配達のひとなのかな?)

(でもなんていうか、郵便屋さんっぽく見えないんだよね~)


ワタシの目の前では、性別も体格も、そして服装もバラバラなオトナのひとたちが、赤い【三輪自転車】を漕いでカラーコーンでできた教習コースを目指していますが、そこからは郵便屋さんらしさは微塵も感じられません。


(う~ん。やっぱり郵便屋さんは、誰が見ても一目でわかるようにしたいよね~)

(郵便屋さんと言えば赤色だよね~。あれ? 赤は消防かな?)

(ん? でもそもそも消防みたいな組織はあるのかな?)

(ねぇねみたいに水魔法が使えるひとがいれば、消防はいらないのかな?)

(でもきっと、ねぇねみたいに優しくてかわいくて、すごい水魔法を使えるひとは、なかなかいないよね~)

(うんうん。やっぱりワタシのねぇねは最高だよね~) (^ー^)


ポフッ


ねぇね「ん? おチビちゃんどうしたの? 急に抱き着いたりして」


「えへへぇ~。なんでもないよ~」


郵便配達のひとだと一目でわかるようにしたい、はじめはそんなことを考えていたはずでしたが、途中でアレコレ脱線してしまい、なぜだか最後は近くにいたねぇねに思わず抱きついちゃうぐらい、ねぇね称賛の思考に変わってしまったワタシ。

いつでもどこでもどんなときでも、ねぇね大好きなおチビちゃんなのでした。


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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