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77 億万長者

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


「ローラおねえちゃん、たくさんクッキーのおみやげ、ありがと~」


ねぇね「ごちそうさまでした」


おにぃ「ありがとうございました」


ローラ「いえいえ、こっちこそいろいろありがとうね~。またいつでも寄ってね~」


「バイバ~イ。また来るね~」 (^-^)/~~


ローラおねえちゃんのお店に急造したイートインスペース、カフェのようなその場所で、甘いパンケーキの朝食をいただいたワタシたち3人は、みんなで作った動物やお花の形をしたクッキーを手みやげにもらい、ローラおねえちゃんのお店をお暇します。

そして目指すはハンターギルド。

ハンターギルドの受付兼ワタシたち3人の専属、アイリーンさんに今朝の出来事を報告するためです。

行きと同様、3人で手をつないでの道行ですが、ローラおねえちゃんから聞いたビーちゃん様のお話の影響か、行きとは違い、ちょっとだけ気分の重い帰り道です。


「ねぇね、おにぃ。さっきのビーちゃん様のお話、なんか悔しいね・・・」


おにぃ「そうだな・・・」


ねぇね「ねぇ、おチビちゃん。私たちは、私たちのできることをしよう?」

ねぇね「ビーちゃん様が遊びに来たら、おともだちとして、笑顔で迎えるの」

ねぇね「ビーちゃん様が嫌なことを忘れてしまうくらい、一緒に楽しく遊んで過ごそうね?」


「うん、そうする! ビーちゃん様の笑ったお顔、ワタシ大好きだもん!」

「よ~っし、もっともっと笑ってもらえるように、いろいろ考えちゃうぞ~」


優しいねぇねの諭すような語り口に、俄然やる気になったワタシ。

おチビなワタシには大したことはできないでしょうが、せめておともだちとしてビーちゃん様が楽しい時間を過ごせるようにしようと、ムフンと決意を新たにするワタシなのでした。

そんな会話をしつつ気分を切り替えていると、ハンターギルドに到着しました。


「アイリーンさん、おはよ~ございま~す」


「「おはようございま~す」」


アイリーン「あら『シュッセ』のみんな、おはよう」

アイリーン「うんうん。やっぱりその衣装、可愛くていいわね?」


ねぇね「えへへ。カワイイと言ってもらえて、うれしいです」


「わぁ~い、ほめてくれてありがと~」 o(^∇^)o


昨日に引き続き、今日もお洋服を褒められて、嬉しそうにはにかむねぇね。

そんなねぇねの姿を見られて、つられてワタシも大喜びです。


アイリーン「いえいえ。それでどうしたの? 何か依頼を受けるのかしら?」


おにぃ「えっと、今朝、町のお菓子屋さんでおチビがいろいろアレだったので、その報告をしておこうと思いまして」


アイリーン「ああ、そういうことね? それじゃあ、いつもの会議室に行きましょうか」


おにぃ「お願いします」


ねぇね「します」


「は~い」


ということで、早速いつもの会議室にご案内です。

例によっておにぃに抱き上げてもらい、厚めのクッションのが敷いてあるいつもの席にポスンと座らせてもらうワタシ。

そうして全員がいつもの席に着いたところで、会議室に急なご来客みたいです。


コンコンコン


アイリーン「はい、どうぞ~」


あらかじめ知っていたのか、待ってましたと言わんばかりにお返事をするアイリーンさん。

すると、今日も銀縁丸メガネがピカリと輝く、インテリ系副支部長さんが颯爽とご登場なのでした。


副支部長「失礼します。私も少しの間、同席させてもらいますね?」


(あれ? 今日の副支部長さん、なんだかいつもより動きにキレがあるというか、キビキビしてる気がするよ?)

(昨日会った時は、かなりお疲れさまな感じだったのに、何かあったのかな?)


そんなことを考えていたら、さっそくとばかりに真面目モードのアイリーンさんがお話をはじめました。


アイリーン「『シュッセ』の皆さんからの報告をお聞きする前に、まずはハンターギルドから、お金のことについてのお話があります」


副支部長「ここからは私が説明させていただきますね?」

副支部長「まずは昨日ご提供いただいた、100台の『デンタク』についてです」

副支部長「あの後、早速商業ギルドに持ち込んだところ大変ご好評いただきまして、かなりの金額で買い取っていただけることになりました」

副支部長「最終的に商業ギルドには95台売却し、我がハンターギルドに5台残すことになりました」

副支部長「外国の新しい数字表現方法等、諸々込みで、対価は1台あたり100,000(10万)リル、ということでいかがでしょうか」


「えっと、100台だから、10,000,000(1千万)リルってことですか?」


副支部長「そういうことです」


おにぃ「いっせんまん?」


ねぇね「ん? え?」


「ほよ?」


驚きすぎて、まともにリアクションがとれないワタシたち3人です。


(はわわわ~。10,000,000(1千万)リル? それって、おいくらなのかな~)

(日本円で考えると、大体1,200,000,000(12億)~1,400,000,000(14億)円ぐらい?)

(ここまで来ると、もう意味がわからない金額だよね~)

(なんだか頭がグルグルしちゃいそうだよ~) (*_*)


すごい金額にワタシが目を回していると、今度はアイリーンさんがお話を続けます。


アイリーン「そして私から、先日のご領主さまとの謁見ついての報告があります」

アイリーン「そのときの納品物と献上品への対価についてなんですけど、領主館から、『謝礼として大金貨100枚を下賜する』との連絡がありました」


おにぃ「え?」


ねぇね「大金貨?」


「ん? 大金貨100枚? それって、おいくらリルなの?」


アイリーン「大金貨1枚が100,000(10万)リルなので、100枚だと10,000,000(1千万)リルですね」


おにぃ「ま、また、いっせんまん?」


ねぇね「もう大きすぎて、桁がよく分からないかも・・・」


「ほよょょょ~」


さきほどの電卓100台の代金と合わせると、20,000,000(2千万)リル。

そんな大金が、一気に手に入っちゃうみたいです。


副支部長「ちなみに双方とも依頼ではありませんので、税金や手数料は引かれません」

副支部長「まあ、どちらもあまり表沙汰にしたくない内容なので、御内密にお願いしますね?」


アイリーン「お金の処理は今まで通り、4等分して個人とチームに分けて預入するということでいいですか?」


20,000,000(2千万)リルを4分の1しても、5,000,000(500万)リル。

日本円で600,000,000(6億)~700,000,000(7億)円です。


「いいで~す。お願いしま~す」


(いや~ホント、もうこれ以上お金を稼ぐ必要ないよね?)

(というか、こんな大金もらっても、逆に困っちゃいま~す)


ということで、不相応な大金は、さっさとオトナのひとたちに丸投げしちゃいましょう。


「えっとね? ワタシの分のお金は全部郵便屋さんに使っちゃってくださ~い」


おにぃ「それなら、オレもおチビと同じで」


ねぇね「わ、私もおチビちゃんと同じにしてください」


アイリーン「分かりました。では、そのように対応しますね?」


副支部長「すいません。その『ユービン』事業への投資のことで、『シュッセ』の皆さんにご相談があるのですが、よろしいでしょうか?」


お金のお話がやっと終わったと思ったら、さらに副支部長さんからなにやらご相談されちゃうみたいです。


「ご相談?」


副支部長「ええ。今回お預かりする金額があまりにも多額なため、『ユービン』事業だけでは使いきれないかもしれません」

副支部長「ですので余剰分は、ハンターギルド【オーレリア】支部のために有効活用させていただければありがたいのですが、いかがでしょうか?」

副支部長「もちろん、『シュッセ』の皆さんに不利益が生じるようなことはいたしませんので」


「もちろんいいよね? ねぇね、おにぃ」


おにぃ「おチビがそう言うなら、オレはいいと思うぞ」


ねぇね「私もおチビちゃんの思う通りにしたらいいと思う」


「ということなので、いろいろ良きに計らっちゃってくださ~い!」


副支部長「ありがとうございます。このイーサン、昨日いただいた『元気が出るソーマ』に見合った仕事をさせていただく所存です」

副支部長「それでは次の仕事がありますので、私はお先に失礼させていただきますね?」

副支部長「いや~、仕事が捗る捗る!」


そう言って、颯爽と会議室を退室していく副支部長さん。

昨日とは打って変わり、帰る姿も元気溌剌、今にもスキップしだしそうな勢いです。


(う~ん。副支部長さんのあのご様子、あれはきっと例の24時間戦っちゃうヤツがかなり効いちゃってる感じだよね~)


この世界には未だ定義されていない『ブラック労働』や『社畜』という概念。

図らずも、その先駆者をワタシ自らプロデュースしてしまったようです。


(副支部長さん、あまりがんばりすぎてお体を壊さなければいいけど・・・)


副支部長さんにバリバリ働いてもらおうとドリンク剤を渡しておきながら、その効果覿面っぷりにちょっと後ろめたさを感じちゃう、ちょっと自己矛盾気味なワタシなのでした。


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