76 カフェで雑談
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
「う~ん。朝から幸せ~」 (*^~^*)
ねぇね「ん~、ふんわり甘くっておいし~」
ローラ「このパンケーキ? このボリュームなら、食事として十分満足できるよね~」
ワタシとねぇねとローラおねえちゃんは今、先程【想像創造】したソファーセットに腰かけて、自分で焼いた動物型のパンケーキに舌鼓を打っているところです。
もちろん、ねぇねのボディバッグに忍ばせてあった小袋のはちみつをたっぷりと上から垂らしているのは言うまでもありません。
そしておにぃはというと、
おにぃ「お~い、こっち向いてくれ~」
カシャ(パッ)
ウィーン
おにぃの学習能力は、ワタシのそれを遥かに凌駕しているご様子で、
おにぃ「この椅子とかテーブルとか、どうせまたアイリーンさんに報告しなくちゃならないんだから、今のうちに『シャッシン』しておこうぜ」
と提案してくれました。
しかも自分が言い出しっぺだからと、現在おにぃは自発的にカメラマンをやってくれています。
口だけ出して後は知らんぷりではなくて、言ったからにはキッチリその責任は負うおにぃ。
有言実行、言行一致、さすがワタシの大好きなおにぃ、カッコイイです。
ローラ「う~ん、どのお茶にも合うけど、この甘いパンケーキとなら、ウチはタンポポモドキのお茶が一番好きかな~」
「タンポポモドキの根のお茶はね、一番手間がかかるんだよ?」
ローラ「そうなの?」
「タンポポモドキの根を掘り出して、キレイに水洗いして乾燥させて、そのあと細かく刻んで、甘く香ばしい香りがでるまで炒って、そしてやっとお茶になるんだ~」
「ねぇねが水魔法で洗うのと乾燥させるのをやってくれるし、おにぃが程よく炒るところまでやってくれるから、ワタシは全然大変じゃないんだけどね~」
ねぇね「魔法でなんとかできることは、私たちが担当だもん」
おにぃ「そこは役割分担ってやつだな」
おにぃ「指示とかそういうのはいつもおチビが担当だもんな、オレ達」
ねぇね「どの野草のどの部分が食べられるとか、そういう知識はいつもおチビちゃんが教えてくれるの」
「え? そうだっけ?」
ねぇね「そうよ? 若いタンポポモドキの葉っぱは生で食べてもあまり苦くないとか、いろいろ教えてもらったよ?」
おにぃ「そうだな。そのおかげで今まで何とか食いつないでこれたよな、オレ達」
ねぇね「うん。おチビちゃんがいてくれたから、私たち、今まで生きてこれたの」
おにぃ「まあ、おチビに教えてもらっても、未だにオレはタンポポとタンポポモドキの違いがよく分からないけどな」
ねぇね「どっちも食べられるんだし、それはあんまり気にしなくていいんじゃない?」
ローラ「ふぅ~ん。上手く作業分担ができてて、なんだかいいね? そういうの」
(え~? ワタシそんなことしてたの?)
(もしかしてワタシ、前世の記憶が戻る前から、前世の知識を使ってたのかな?)
そんなことを思っていたら、今更ながらとても大変なことに気が付いてしまいました。
(およよ? そういえばワタシ、前世の記憶を思い出す前って、どんなことしてたっけ?)
なんということでしょう。
ワタシ、前世の記憶が戻ってから、それ以前の記憶のかなり重要な部分がスポーンと飛んでしまっているのです。
(あれれ? そういえばワタシって、いつ、どこで、ねぇねとおにぃに会ったんだっけ?)
(そもそもワタシ、なんでスラムにいるの?)
(ワタシの両親はだれ? どこにいるの? どんな顔だったっけ?)
(あれれ? う~ん、全然思い出せないや・・・) (?_?)
ひとり悶々と思い悩んでいると、ローラおねえちゃんが別のお話をはじめました。
ローラ「でもいいよね~、火魔法だとか水魔法だとか、有名で便利な魔法が使えるのってさ~」
ローラ「ウチなんて『ハズレ』属性だよ? ホントついてないわ~」
「『ハズレ』属性?」
ローラ「そうなの。使い物にならない属性だから不遇属性だとか『ハズレ』属性だとか呼ばれててさ~」
ローラ「なんていうか、神様も不公平だよね~」
「ローラおねえちゃんは、どんな魔法属性なの?」
ローラ「教えてもいいけど笑わないでよ? ウチの魔法属性は【塊】属性なの」
「かたまり?」
ローラ「そう。いろいろな【塊】を操る魔法なんだけどさ~、何それって感じだよね~」
ローラ「これ、お菓子の生地をまとめるぐらいにしか使えないのよ~?」
ローラ「ホントもう、『ハズレ』でしょ?」
「それじゃ、さっきのクッキーの生地も魔法を使って作ったの?」
ローラ「そうよ? 【塊】属性魔法でまとめたの」
「すっご~い! お仕事につかえる魔法なんて、すごいよ~!」
ローラ「え? そうかな~」
「そうだよそうだよ! ワタシなんて、魔法属性【なし】だよ? 魔法使えないんだよ?」
「それなのにローラおねえちゃんは魔法を使ってお仕事できるなんて、いいな~、うらやましいな~」
ローラ「いやいやいや。おチビちゃんってば、物凄いモノをポンポン出してるよね?」
ローラ「アレって、どう考えても魔法でしょ?」
ローラ「仮に魔法じゃなかったとしても、むしろ普通の魔法以上に凄いヤツだよね? アレ」
おにぃ「まあ、おチビのアレは、どう考えても異常だよな」
ねぇね「おチビちゃんは特別だもん」
「え~、そうかな~、魔法を使える方がすごいと思うけどな~」
「まあ、たしかにワタシのスキルはとっても便利でありがたいけど」
ローラ「でもさ、『ハズレ』属性と言えば、有名なのはご領主家のお嬢様だよね~」
「え? ビーちゃん様のこと?」
ローラ「ん? ビーちゃん様?」
おにぃ「そのお嬢様のことを、おチビは『ビーちゃん様』と呼んでるんです」
ねぇね「私たちもそう呼ばせてもらっています」
「ビーちゃん様はね、ワタシたちのおともだちなんだ~」
ローラ「え? そうなの? それじゃ、滅多なことは言えないじゃん」
ローラ「でも有名な話だよ? お嬢様の魔法属性は『ハズレ』だって」
ローラ「ウチも具体的にどんな属性なのかまでは知らないけど、なんたって『ハズレ姫』なんてあだ名されるくらいだからね」
「「「え!?」」」 (゜Д゜;)!!
おともだちのビーちゃん様が、そんな悪口めいたあだ名で呼ばれていると聞いて、とってもショックなワタシたち3人。
ビックリ驚いて、固まってしまいます。
ローラ「例え『ハズレ』属性でもさ、ウチみたいなド庶民なら、他人からどうこう言われることなんてないんだけど」
ローラ「でもお貴族様ともなると政敵とかやっかみとかいろいろあってさ、あることないこと言われちゃうんだろうね」
ローラ「しかもご領主さまと奥様の魔法属性がかなり有名だから、尚更なんだろうね~」
おにぃ「なんだよ、それ」
ねぇね「ひどいよ・・・」
「むぅ~、むぅ~、ムゥ~ッ!」
(も~! 魔法が使えるだけでもスゴイことなのに~!)
(なんでそんなイヤなこと言うの~!) \(*`∧´)/
おともだちのことを悪く言うひとがいると聞いて、悲しくて悔しくて、ムカムカぷりぷりしちゃうおチビちゃん。
この町のことをアレコレ一生懸命考えて、元気にいろいろ動き回っているビーちゃん様の笑顔を思い出すと、はちみつたっぷりのパンケーキのおかげで甘いはずのお口の中が、ちょっぴりしょっぱく感じられちゃうワタシなのでした。
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