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73 おめかしして

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


【リアカー】と【三輪自転車】の初納品を終えた翌朝。

念願のアイリーンさんとのスキンシップに満足したからなのか、昨夜はぐっすり高枕だったワタシ。

おかげで今朝はとても良い目覚めでした。

前日の反省から、1回だけ炊き込みご飯を炊いて美味しく朝食を済ませたら、その良い気分のまま、ワタシは早速行動開始。

今日は朝から気合を入れて【想像創造】しちゃうのです。



【全国標準型学生服上下 ベルト セット 中学生用 収縮・撥水・形態安定加工 145A体 黒 21,250円】



【長袖セーラー スカート 水色ネクタイ セット 中学生用 収縮・撥水・形態安定加工 Sサイズ 濃紺 24,000円】



【子供服 女の子入学式用フォーマルセット 紺色ブレザー 白色シャツ 灰色ワンピース 灰色リボン 100号 7,180円】



朝からせっせと【想像創造】したモノ、それはお洋服。

今日はある目的のために、ドレスアップしちゃうのです。


「ねぇね、おにぃ、今日はこのお洋服を着てね?」


おにぃ「ん? 真っ黒の服か?」


ねぇね「わぁ~、綺麗な紺色だね~。でもこれ、新品のお洋服でしょ? 着ていいの?」


「今日はこれを着てお出かけしましょ?」


そして、いつも移動中の手荷物をどうにかしたいと思っていたワタシ。

せっかくの機会なので、いろいろなバッグのセットも【想像創造】して、ねぇねとおにぃに使ってもらうことにします。



【リュックサック ボディバッグ ショルダーバッグ トートバッグ ミニショルダーポーチ 5点セット ベージュチェック柄 5,060円】



「ねぇね、おにぃ、このカバン、好きなのを使ってね?」


おにぃ「お? これは背負うカバンなのか? けっこう大きくて、これならいろいろ持ち運べるな!」


ねぇね「このカバンは、斜めにつけるんだね? なんだか面白いね?」


おにぃには、一番大きくてたくさん持ち運べ、かつ両手が空くリュックサックを。

ねぇねには、両手を自由にできてオシャレなボディバッグを。

そしておチビなワタシは、お財布とかちょっとした小物を入れられるぐらいの大きさのミニショルダーポーチを装着です。

3人が選んだバッグはタイプは別々なのですが、ベージュのチェック柄が共通しています。


ねぇね「みんな同じ色と模様なんだね?」


おにぃ「こういうの、なんかいいよな」


「でしょでしょ? みんなでお揃いだよ?」


はじめての3人お揃いの装いで、朝からちょっとウキウキなワタシなのでした。

早速バッグに必要なものをいろいろ詰め込んで、朝も早よからワタシたち3人はお出かけです。

今日はいつもの【ジョシュア雑貨店】への納品の日なのです。


「「「おはようございま~す」」」


ワタシたち3人がご挨拶すると、ジョシュアさんがちょっと慌てた感じでお店の奥から出てきました。


ジョシュア「おお君達、大丈夫かい? 教会と何かあったのかい?」


ジョシュアさんのお話を聞くと、昨日から教会の正面に、【子供の3人組ハンター『シュッセ』を異端者と認定する】と記された告示板が立てられている、とのことでした。

この町で異端者認定が出るのは何十年ぶりということもあり、町中でそれなりに話題になっているみたいです。

異端者認定のことは、ワタシ的には正直どうでもいいと思っていたこともあって、すっかり忘れかけていました。

なので、ジョシュアさんからもたらされた今回の情報を聞いても、「へぇ~そうなんですね~」程度にしか思えません。

そんな会話をしていると、ジェーンさんもお店の奥から出てきました。


ジェーン「あら、いらっしゃい。おや? ちょいとあんたたち、今日はなんだか見慣れない服装だね?」


「はい。今日はお願いがあってこの服装できました~」


ジェーン「お願い?」


「えっとあの、ワタシたちと一緒に、記念の写真を撮ってくれませんか?」


ジェーン「ん?、『シャッシン』? そりゃ一体何なんだい?」


「この【カメラ】を使って、短時間で絵を描くんです」


ジョシュア「ほう、つまり我々と一緒の姿絵を描くということかな?」


「そうで~す。こんな感じですぐに済みますんで」


カシャ(パッ)

ウィーン


ジェーン「わぁ!」


ジョシュア「おぉ!」


ねぇね「きゃっ!」


おにぃ「まぶしっ!」


写真撮影のお願いをしながら、予行演習とばかりにみんなの4ショット写真をパシャリと撮影。

おチビなワタシが撮っただけあって、言わずもがなの見事なローアングルショットができあがりです。


「こんな感じになりま~す」


ジョシュア「おお! こんな短時間で見事な極彩色の姿絵だ」


ジェーン「へぇー、きれいなもんだねぇ~。さっきのピカッとしたときに描いたのかい?」

ジェーン「こんなに簡単なことなら、いくらでもつきあおうじゃないか」


ということで、ちょっとおめかししたワタシたちと、ジョシュアさんとジェーンさんの写真撮影会がはじまりました。


カシャ(パッ)

ウィーン


カシャ(パッ)

ウィーン


カシャ(パッ)

ウィーン


・・・


カメラマンを変え、撮る対象を変え、いろいろな写真を撮影します。

ジョシュアさんとジェーンさんは、ワタシたち3人が最初にお世話になった、言わば恩人です。

スラムにいたころから助けてくれた、まさにワタシたち3人をスラムから救済してくれたに等しい人たちです。

そんな人たちとの思い出を残すため、そして、ワタシたち3人が、ご夫婦のおかげでここまでこれたのだと知ってもらうために、今日はおめかしして写真撮影に来たのです。

言うなれば、ワタシたち3人の【スラム卒業記念写真】、そんな感じのモノを、お世話になった人と一緒に撮りたかったのです。


「はい、これどうぞ。よかったらこの写真、受け取ってくださいな?」


できあがったいろんなショットの写真をジョシュアさんとジェーンさんに渡します。


ジョシュア「この短時間で凄い量の姿絵だね。その『かめら』は特別な魔道具なんだね?」


ジェーン「綺麗な『シャッシン』をこんなにたくさんいいのかい?」


そして、持ち帰るべくワタシが厳選した写真をねぇねに渡します。


「こっちはねぇねが持っててね?」


ねぇね「え?」


「ジェーンさんといっしょの写真、たくさんあるからね?」


ねぇね「ホント? おチビちゃんありがとう!」


ジェーンさん大好きなねぇねには、何よりの記念品になると思います。

そんな記念撮影会の後は、いつもの商品を【想像創造】して納品です。



【ジョシュア雑貨店納品セット はちみつ ブレンディッド 1200g、ハーブソープ お歳暮ギフトセット ローズ6個 ラベンダー6個 カモミール6個 7,300円】



ジョシュア「今日も納品ありがとう。はいこれ、納品完了報告書だ」


おにぃ「ありがとうございます」


ジェーン「たくさんの『シャッシン』、ありがとうね? 記念に店の奥に飾っておくことにするよ」

ジェーン「それと教会の異端者認定の影響がどれほどか分からないけど、とにかく気をつけるんだよ?」


おにぃ「大丈夫です。そういうの、慣れてますから」


ねぇね「心配してくれて、ありがとうございます」


「大丈夫で~す」


ジョシュア「町を歩くときは少し気をつけたほうがいい。中には狂信的な連中もいるからね?」


ねぇね「はい、ありがとうございました」


「「さようなら~」」


記念撮影という目的を達成して、満足気に【ジョシュア雑貨店】をお暇したワタシたち3人。

ジョシュアさんからもたらされた、『シュッセ』の3人が教会に異端者認定されたという報告は、どこ吹く風といった感じです。

そんな【ジョシュア雑貨店】からハンターギルドまでの帰り道。

3人で手をつないで、お散歩がてらの道行でしたが、なんだか気のせいか、ワタシたちに向けられる町のひとたちからの視線が、いつもより多い気がします。


(およ? もしかして、これが異端者認定の影響なのかな?)

(まあ、お店でお買い物をしたりしなければ実害はないし、視線なんて無視しちゃえばいいよね?)


そんなことを思っていたのですが、この視線の理由は本当は別にありました。

ワタシたち3人の年頃(子供)のオシャレやおめかしというと、前世の入学式とか卒業式が頭に浮かんでしまったワタシ。

なので、ねぇねとおにぃの服装は学生服(しかも昔の詰襟とセーラー服)で、ワタシ自身は小学校の入学式のいでたちを【想像創造】しちゃいました。

でもその服装は、この世界ではかなり斬新なデザインと色使いだということに、全く気づいていなかったワタシ。

ワタシたち3人の服装を、町のひとたちが注目していようとは知る由もなかったのです。


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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