71 三輪自転車とリアカー
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
ベアトリス「うんうんイイ感じ。これならここにある遊具の素晴らしさをお父様にも分かってもらえるはずよね」
急遽ワタシたちのお庭で開催されたビーちゃん様による写真撮影会。
当のご本人はお遊びではなく、真剣に遊具の報告のために撮影していたみたいで、無駄な写真撮影は一切せず、早々に写真撮影を切り上げました。
フィルムのカートリッジを交換していないので、使ったフィルムは10枚未満。
意外と志操堅固というか、目的がしっかりしているビーちゃん様です。
(それにしてもワタシたちのあのポージング、本当に必要だったのかな~?)
そんな疑問をちょっと抱いちゃいましたが、予想外に、ことのほかスムーズかつ手短に終わった写真撮影会なのでした。
・・・
ビーちゃん様による遊具の写真撮影会の後は、ワタシの本来の目的、【リアカー】と【三輪自転車】を【想像創造】するため、みんなでハンターギルドの裏庭の広場に移動です。
(まずは【三輪自転車】から創り出そうかな~)
(うんと、今の【想像創造】のレベルは6だから、60万円以内まで創り出せるんだよね?)
ということで、またもそろばん4級の暗算能力を駆使して、創り出せる台数を計算します。
(えっと~、確かお値段は~)
【オトナの三輪車 マウンテントライク24インチ 7スピードギア リアショッピングバスケット付き シルバー 43,900円】
(だったから・・・よっし、【三輪自転車】を【想像創造】!)
【オトナの三輪車 マウンテントライク24インチ 7スピードギア リアショッピングバスケット付き 赤色 43,900円】×13 570,700円
【オトナの三輪車 マウンテントライク24インチ 7スピードギア リアショッピングバスケット付き 青色 43,900円】×13 570,700円
【オトナの三輪車 マウンテントライク24インチ 7スピードギア リアショッピングバスケット付き 黄色 43,900円】×13 570,700円
一気に3回、今日の打ち止め6回目まで、色違いの【三輪自転車】を【想像創造】しちゃいました。
すると、目の前に、お馴染みのワタシのステータス画面が出てきました。
名前:アミ
種族:人族
性別:女
年齢:5歳
状態:発育不良 痩せすぎ
魔法:【なし】
スキル:【想像創造】レベル7(7回/日)
またまた、スキルのレベルアップをお知らせしてくれたみたいです。
(やった! 【想像創造】がレベル7になって、これで1日7回使えるよ!)
今日は6回【想像創造】したので、あと1回、追加で何かを創り出せることになります。
(状態は【発育不良 痩せすぎ】のままか~)
(まあそりゃそうだよね。昨日の今日で、栄養状態は改善されないよね~)
そんなことを思いつつ、創り出した【三輪自転車】を満足気に眺めていると、アイリーンさんがワタシに質問してきました。
アイリーン「ねえ、おチビちゃん。何で【三輪自転車】を赤色と青色と黄色に色分けしているの?」
「えっと、それはね? 赤色のは郵便屋さん用で、青色はお店屋さん用で、黄色のは町の警備のひとに使ってもらおうと思ったの」
「色分けしておいた方が、わかりやすいでしょ?」
アイリーン「なるほどね。おチビちゃん、ちゃんと考えていて偉いわね」
えらいえらいとワタシの頭を撫でてくれるアイリーンさん。
「えへへぇ~」 (〃^∀^〃)
うれしくて思わずお顔が緩んじゃうワタシです。
ベアトリス「う~ん。これも『シャッシン』してお父様に報告しておくべきよね?」
カシャ(パッ)
ウィーン
するとおもむろに、色分けされた【三輪自転車】を撮影しはじめたビーちゃん様。
そして、ワタシたちの会話に交ざってきました。
ベアトリス「おチビちゃん、お願いしていた町の衛兵用の【三輪自転車】も用意してくれたのね?」
「うん。ビーちゃん様が使いたいって最初に言ったんでしょ?」
ベアトリス「そうなの。私ね? あの【三輪自転車】を馬の代わりにすれば、町の予算をかなり削減できるんじゃないかと思ったの」
ベアトリス「だって馬一頭飼うのにかかる予算って、物凄く高いのよ?」
ベアトリス「その予算を別のもっと必要なところに回せるようにしたかったの」
ベアトリス「だからお父様に【三輪自転車】のお話をしてみたんだけど、こんなに早く実現するなんて思ってもみなかったわ」
アイリーン「素晴らしい考えだと思います。だからおチビちゃんも協力してくれたんでしょ?」
「うん。ビーちゃん様はおともだちだもん」
「だから早く使ってもらおうと思ったんだ~」
ベアトリス「おチビちゃん、そしてハンターギルドの職員さん、本当にありがとう!」
【三輪自転車】を領主館関連のお仕事で使うというのは、ビーちゃん様が言い出しっぺだと前の会議で聞きました。
それを聞いていたからこそ、早めに創り出したかったワタシです。
(おともだちのお役に立てたかな? だったらうれしいな~)
そんなことを思いつつ、レベルアップしてもう1回【想像創造】できるようになったので、ついでに【リアカー】も創り出しておきます。
(えっと、今レベルアップして【想像創造】のレベルは7だから、70万円以内まで創り出せるんだよね?)
(【リアカー】のお値段は確か・・・)
【アルミ製折り畳みリアカー ノーパンクタイヤ仕様 全長240×全幅116×全高81cm 質量40kg 耐荷重350kg 89,800円】
(ということは・・・よっし、【リアカー】を【想像創造】!)
【アルミ製折り畳みリアカー ノーパンクタイヤ仕様 全長240×全幅116×全高81cm 質量40kg 耐荷重350kg 89,800円】×7 628,600円
「できた~」
ベアトリス「あ! 銀色の荷車だわ! おチビちゃん、荷車も用意してくれたのね?」
「うん。今日はこれでもうおしま~い」
とりあえずこれで、第1回目の【リアカー】と【三輪自転車】の納品はおしまい。
ワタシが今日中にやっておきたいと思っていたことは、すべて終わりました。
ということで、画策していたお遊戯イベント(ワタシ的にはむしろこちらがメイン)に向けて早速勧誘開始です。
「ビーちゃん様、あのね? このあと自転車で一緒に遊んでくれる?」
ベアトリス「この後遊ぶの? もちろんよ!」
「やった~」
(さあ、これで心置きなく自転車で遊べるぞ~)
そう思っていたら、アイリーンさんからちょっと待ったされちゃいました。
アイリーン「あの、おチビちゃん、ちょっといいかしら?」
アイリーン「あそこに置いてある、銀色の大きい【三輪自転車】1台と、銀色のちょっと小さい【三輪自転車】4台、そして二輪のあれも自転車かしら? その二輪車3台、あれは何なの?」
ワタシたちのお家の入り口付近にとめてあった、最初に創り出した大きな【三輪自転車】1台、そして先日創り出した銀色のちょっとちっちゃい【三輪自転車】3台と二輪の自転車3台。
さらに、ビーちゃん様が乗り付けてきたと思われるちょっとちっちゃい【三輪自転車】1台が、アイリーンさんには疑問のようです。
「えっと、銀色のちっちゃい【三輪自転車】の1台は、前にビーちゃん様にあげたのだよ?」
「残りの銀色のやつは、全部ここで使うの」
アイリーン「ここで? 銀色の自転車は、おチビちゃんたち用なのね?」
「違うよ? みんなで遊ぶ用で~す。だからアイリーンさんも今から一緒に遊んでね?」
アイリーン「う~んそうね~。よしっ、今日は最後までおチビちゃんたちに付き合っちゃうわ!」
「ホント? やったー!」 \(^o^)/
念願かなってうれしくて、思わずぴょんぴょん飛び跳ねちゃうワタシ。
いつも優しく接してくれるアイリーンさんと、お仕事以外でも一緒に過ごしてみたいと思っていたのです。
ちょっと前までスラムで飢えていたワタシたち3人。
それは当然食べ物的な意味もそうですが、ひととの交流的な意味でもそうでした。
他人を気にする余裕のないスラムでの生活、そこから抜け出せた今、特におチビなワタシは、ひととのふれあいを欲しています。
優しく笑いかけてほしい、優しくなでてほしい。そして願わくば、優しく抱きしめてほしい。
それは5歳の幼女が抱く、ごくごく当たり前の欲求です。
そう、おチビなワタシにとって、優しいひとたちと一緒に過ごせる時間こそが、なにより欲しいモノなのです。
Mノベルズ様より、書籍発売中です。