67 新しいポーション作り
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
おにぃ「こんにちは~、ハンターギルドの依頼で来ました~」
「「こんにちは~」」
美味しい朝食を満喫したワタシたち3人は、ポンポコリンのお腹をさすりつつ、お隣の【マダムメアリーの薬店】へやってきました。
昨日のうちに指名依頼の手続きを済ませているので、ハンターギルドには寄らず、直接現地集合です。
メアリー「ようこそようこそ、『シュッセ』の3人さん。待っていたよ」
今日もニコニコ笑顔のメアリーさんは、ワタシたち3人を玄関先で出迎えてくれました。
アリス「みんな、おはよー。昨日は広場で自転車楽しかったね?」
そして、ワタシたちのおともだち、アリスちゃんもお出迎えです。
メアリー「いつもアリスと仲良くしてくれてありがとうね」
メアリー「今日はアリスと一緒にポーション作り、よろしくね?」
ねぇね「はい、がんばります」
おにぃ「よろしく、お願いします」
「よろしくおねがいしま~す」
メアリー「今日は前回とは違うポーションを作ってもらうよ?」
アリス「新しいポーション作り、一緒にがんばろうね?」
ねぇね「うん。アリスちゃん、よろしくね?」
「「よろしく~」」
そんなこんなでご挨拶も済んだので、早速お仕事開始です。
メアリー「今日も前回同様、最初に一通り私が作業を見せるから、その手順を覚えてもらえるかい?」
おにぃ「分かりました」
ねぇね「お願いします」
「は~い」
さて、今回も細かい計量にいそしんじゃいましょうと、ワタシがフンスと気合を入れていると、アリスちゃんが少しためらいがちに話しかけてきました。
アリス「おチビちゃん、あのね? 私、前にもらった、細かい量を量る道具の使い方と外国の数字はもう覚えたの」
アリス「だから今日は私一人で、おばあちゃんの手順や分量を書き留めてみたいの。いいかな?」
(え? もう日本語(アラビア数字)を覚えたんだ。すご~い。やる気十分だね!)
さすがお薬屋さんの跡取り、気合十分のアリスちゃんです。
「アリスちゃん、外国の数字(アラビア数字)覚えたの? すごいね? さっすが~」
「もちろん、アリスちゃんのやりたいようにやってね?」
アリス「おチビちゃん、ありがとう!」
ということで、前回同様いろいろ量ったりしてマニュアル作りをする気満々だったのですが、今回はアリスちゃんがひとりで全部やることになったので、ワタシは急遽手持ち無沙汰になっちゃいました。
作業机から一歩下がったところに陣取ったワタシは、ほかになにかお手伝いできることがないか考えながら、みんなの作業を見学です。
メアリー「今日作るのは、前回のけがを治すポーションとは全くの別物、体力回復ポーションさね」
メアリー「病気やけがで落ちた体力を回復させる、いわば元気になるポーションだよ?」
今回作るポーションは、前世の記憶的に、ファイトで一発的な、24時間戦えちゃいそうな、そんなポーションみたいです。
メアリー「今回は、そこの2番の棚の11番目の枠から20番目までの枠に入っている壺を持ってきて、その中の粉末を適量摘まむんだよ」
メアリー「11番の量はこのぐらい摘まむ、12番は少し少な目でこれくらい摘まんで、13番は・・・」
アリス「おばあちゃん、ひとつづつ重さを量らせてね?」
メアリー「ああいいとも、好きにするがいいさ」
おにぃ「オレも手伝う」
ねぇね「私も!」
アリス「2人とも、ありがとう!」
そんな感じですべての薬草類の計量が終わったら、次はいよいよポーション作成手順の説明です。
メアリー「薬草類の準備ができたら、次はこの容器に水魔法で水をこれくらい入れて――」
アリス「おばあちゃん、そのお水量らせてね?」
メアリー「いいともいいとも」
・・・
そんなことを繰り返し、メアリーさんのポーション作りの説明は続きます。
・・・
メアリー「それで今回の体力回復ポーションの作成で一番重要なのは、色の変化なんだよ」
メアリー「まず、加熱前のこの色を覚えておくこと」
メアリー「それから加熱していくんだけど――」
一歩下がった場所で、隙あらばみんなのお手伝いをする気満々だったワタシに、ついに出番が来たようです。
(色の変化? それって、言葉だけではマニュアル化するの大変だよね?)
(正確にわかるように、見ただけで色がわかるようにしなくっちゃ!) (゜ー゜☆
ということで、本日2回目の【想像創造】です。
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トテテテテテ
早速創り出した【カメラ】を携えて、小走りでみんなに交ざって撮影開始です。
「すいませ~ん! メアリーさ~ん、加熱する前にその器をこちらに向けてくださ~い!」 (゜o^)/
おチビなワタシではアングル的にいろいろと撮影しにくいので、被写体の方に動いてもらうことにします。
気分は前世で言うところの【カメラ小僧】ならぬ、【カメコ】ちゃん。
『目線くださ~い』的な語り口で、メアリーさんに被写体クレクレの催促です。
メアリー「ん? おチビちゃん? どうかしたのかい?」
「加熱する前の状態を記録しておきたいんで~す。見せてくださ~い」
メアリー「記録? まあそれなら――」
カシャ(パッ)
ウィーン
メアリーさんが差し出してくれた容器を、シャッターチャンスとばかりに【インスタントカメラ】で撮影するワタシ。
すると同時に、【カメラ】に内蔵のストロボも自動で光っちゃいました。
おにぃ「うおぉ!」
ねぇね「わぁっ!」
アリス「まぶしっ!」
メアリー「なっ何だい!? 急に光が!」
「ごめんなさ~い。今、写真撮っちゃいました~」
「もう大丈夫なので、説明の続き、お願いしま~す」
メアリー「え? 『シャッシン』? ま、まあ、よく分からんが、ポーション作りの説明を続けることにしようかね・・・」
メアリー「それではこれを加熱していって――」
・・・
メアリー「この状態、この色になったら――」
カシャ(パッ)
ウィーン
メアリー「おゃ! またおチビちゃんかい?」
「は~い! ワタシのことは気にせず、説明の続き、お願いしま~す」
メアリー「そ、そうかい? そう言われても、急に光るから気になってしょうがないんだがね~」
メアリー「でもまあ、別に害はないようだし、説明を続けようかね・・・」
メアリー「次に、この色になったら、こちらのこの薬草を入れて、しばらくかき混ぜる。そして――」
・・・
メアリー「そうして、この色になったら――」
カシャ(パッ)
ウィーン
メアリー「うお! またかい? なんとも慣れないねぇ」
「ごめんなさ~い。続きをお願いしま~す」
メアリー「そ、そうさせてもらおうかねぇ」
メアリー「この色になったら、次はこちらのこの粉末を入れて、加熱しつつ――」
・・・
そんなこんなで、【カメラ】というよりストロボの閃光にびっくりしていたメアリーさんでしたが、どうにかこうにかすべての工程を説明し終えてくれました。
メアリー「なんだか今回は、説明の途中にピカっとして驚いちまったけど、体力回復ポーションの作り方はこんなもんさね」
メアリー「なにか質問はあるかい?」
おにぃ「今回は、色の変化がたくさんあって、ちょっと自信ないです」
ねぇね「私もです」
アリス「そこは私の記憶で何とか――」
「だいじょ~ぶ。そのための写真だよ?」
「はい、これ。アリスちゃんにあげるね?」
そう言って、先ほどから勝手気ままにパシャパシャ撮影していた写真をアリスちゃんに渡します。
アリス「なあにこれ――って? キレイな絵!」
アリス「もしかして、さっきピカってしてたのって、この絵を描いていたの?」
「そうなの。これ、写真っていってね? この【カメラ】を使うと描けるの」
「目の前の風景を一瞬でキレイに描けるんだ~」
「例えばこんな感じ!」
カシャ(パッ)
ウィーン
アリス「わぁっ!」
ねぇね「ひゃっ!」
おにぃ「おぉ?」
今度はアリスちゃんとねぇねとおにぃを被写体にした3ショット写真です。
アリス「もしかして、今ので絵が描けたの?」
「そうだよ? はい、これもあげるね?」
アリス「うん、ありがとう。あれ? これ、真っ白で何も描かれてないよ?」
「この写真はね、ちょっと時間がたつと、絵が出てくるんだ~」
「だからもう少し待っててね?」
アリス「そうなんだ~、なんだか魔法みたいだね?」
そんな会話をしていると、徐々にアリスちゃんに渡したフィルムに画像が浮かび上がってきました。
アリス「わぁっ! ホントだ! 絵が浮かんできた! すっごーい!」
「でしょでしょ? じゃあ次は、アリスちゃんとメアリーさんの写真撮ろっか!」
アリス「え? いいの? ありがとう! おばあちゃん、こっちこっち!」
メアリー「ん? なんだいなんだい? またあのパシャっと眩しいヤツなのかい?」
「は~い、それじゃ、撮るよ~?」
カシャ(パッ)
ウィーン
メアリー「ひっ! これはなんとも慣れないねぇ」
アリス「あのおチビちゃん、できればみんなともたくさん描いてほしいな?」
ねぇね「おチビちゃん、私も、みんなと一緒の絵、ほしい、かも」
ここで普段あまり自分の望みを口にしないねぇねからもおねだりをちょうだいしちゃいました。
ねぇね大好きなワタシとしては、当然ここは張り切っちゃう場面です。
「ねぇね!? もちろんだよ!」
ということで、10枚セットのフィルムのカートリッジは即刻使用済みになり、次のカートリッジに交換です。
「はいは~い、みんなこっち向いてね~?」
カシャ(パッ)
ウィーン
アリス「今度は、私も、その『かめら』? でみんなを描いてみてもいい?」
ねぇね「私も、私もやってみたい!」
おにぃ「オレもオレも!」
「いいよいいよ~! それじゃあ、みんなに【カメラ】の使い方を教えるね?」
こんな感じで、結局創り出しておいた3つのフィルムカートリッジ、計30枚のフィルムを使い果たすまで、【マダムメアリーの薬店】の調薬アトリエは、ポーション作りそっちのけで、臨時の撮影スタジオになっちゃうのでした。
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