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62 投資

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


ワタシ「ワタシがハンターギルドに預入しているお金、使う予定がないので、もし郵便屋さんに必要なら、ばば~んと使っちゃってくださ~い!」

スキル【想像創造】で創り出したモノを納品することで、溜まる一方のワタシのお金。

こういう『あぶく銭』的なモノは、必要なひとに有効に使ってもらった方がいいと思ったワタシ。

スラム出身でお金の使い方に疎いおチビというのもありますが、前世の記憶から、常日頃『悪銭身に付かず』という発想が頭の中を占めていて、どうにかしたいと思っていたのです。

(スキルで出したモノを納品するだけで、何千万円ものお金をもらっちゃうのって、良心の呵責というか、申し訳ないというか、なんだかズルしてるみたいで、気分が良くなかったんだよね~)

そんなこんなで、今がチャンスとばかりにお金を使ってもらおうと考えていると、オトナのひとたちからリアクションがありました。

マスター「おいおい、せっかく貯めた金だろ? 大切にしとけって」

アイリーン「そうよ? 今後のこととかも考えれば、お金は大切よ?」

ワタシ「いいえ、いいんです。食べていく分のお金はもう十分にあるのでっす!」

ワタシ「だから余分なお金は使っちゃってくだっさい!」

胸を張り、小鼻を膨らませ、ワタシは『ムフン』と決意の固さをアピールします。

副支部長イーサン「その申し出は、とてもありがたいのですが、本当によろしいのですか?」

ワタシ「はい。郵便屋さんをやってくれるのなら、それに有効活用してほしいで~す」

ワタシがそうお返事したときでした。

おにぃ「だったら、オレの分のお金も使ってください!」

ねぇね「私のも! おチビちゃんが稼いでくれたお金だから、おチビちゃんが使いたいということに使ってほしいです!」

ねぇねとおにぃが自分のお金も使ってほしいと言い出しました。

ワタシ「え? ダメだよ? ねぇねとおにぃのお金は、ねぇねとおにぃが必要な時のために取っておかなきゃだよ?」

ねぇね「それはおチビちゃんだって一緒でしょ?」

おにぃ「オレはおチビの稼いだお金はおチビのために使うべきだと思う」

おにぃ「そもそもオレたち、もうそんなにお金いらないだろ?」

ねぇね「そうよ。おチビちゃんのおかげでもうちゃんと食べていけてるし、ちゃんとした住む場所もあるのよ? もう十分よ?」

おにぃ「必要以上にお金を持っていても、結局そんなの、なんの意味なんてないんだ・・・」

どうやらねぇねとおにぃもワタシと同じで、お金にあまり頓着しないタイプみたいです。

(ねぇねとおにぃは苦労してきただろうから、将来幸せになってもらうために、お金を貯めておいてほしいんだけどな~)

そう思っていたら、ねぇねとおにぃがさらにお話を続けます。

ねぇね「あの、その代わりなんですけど、配達する人として、スラムの人を雇ってくれませんか?」

副支部長イーサン「スラムの住人をですか?」

おにぃ「そうです!」

おにぃ「オレたちみたいな、スラムから抜け出したくてもできないヤツに、少しでもチャンスをあげてほしいです」

おにぃ「もちろん、誰でもという訳じゃなくて、真面目にやる気があって、助けを必要としているヤツだけでいいんです」

ねぇね「私たちは、たまたまおチビちゃんに助けてもらえましたけど、ほかの人は難しいと思うんです」

ねぇね「だから本当に困っている人を、少しでも、お願いします」

おにぃ「お願いします」

さすがワタシの大好きなねぇねとおにぃです。

ねぇねとおにぃには、お金を出す、ちゃんとした理由があったのです。

ワタシはただ単に、なにもしていないのにお金をもらっちゃって、なんだかズルしているみたいで嫌だったから、という理由でお金を使ってもらおうと思ったのですが、ねぇねとおにぃはその点次元が違います。

ちゃんといろいろ考えていて、しかもそれが自分のためじゃなくて。

本当にこのふたりと一緒にいられて、幸せだと、誇らしいと思え、自然とお顔がにやけてしまいます。

(ねぇね、おにぃ、かっこい~)

☆ヽ(*゜▽゜*)/☆


ひとり感動に打ちひしがれていると、またもや支部長さんがお話をまとめてくれるようです。

支部長ローガン「なるほどの。『シュッセ』の意向はよく分かった」

支部長ローガン「まずは『ユービン』事業の立ち上げに向け、いろいろと試算してみようではないか。のう? 皆の衆」

副支部長イーサン「分かりました。前向きな検討事案として、最優先で処理させていただきます」

支部長ローガン「うむ。それと『シュッセ』からの資金提供の申し出だが、これは、『ユービン』事業への投資ということでどうじゃな?」

ワタシ「投資ですか?」

支部長ローガン「そうじゃ。無償でもらい受けるのではなく、あくまで投資とするのじゃ」

支部長ローガン「我々にもメンツというものがあっての。所属するハンターから無償で資金を得たとあっては、ハンターギルドとしても外聞が悪いし、他から変な勘繰りをされかねんからのう」

副支部長イーサン「そうですね。投資としていただいた方が、こちらとしても堂々と動けます」

支部長ローガン「もちろん、投資主ともなれば、その要望は最大限尊重されることになろうぞ?」

支部長ローガン「先程の話、従業員の優先雇用ことについてものう」

おにぃ「それなら、それで、お願いします」

ねぇね「よろしく願います」

ねぇねとおにぃは納得のスマイルです。

ならば、ワタシのお返事も決まっています。

ワタシ「ワタシの大切なねぇねとおにぃのお願いなので、そうしちゃってください!」

ということで、あれよあれよという間に、リアカーと三輪自転車での物流のお話から、どさくさ紛れにハンターギルドに郵便事業設立をお願いしちゃったのでした。


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