61 郵便屋さん
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
先程から荷物の輸送についてのお話が続いていたので、ここで、前世の記憶的にも気になっていたことを聞いてみます。
ワタシ「あの、ここでは、手紙とか小包とかの配達とか、郵便って、どうなってるんですか?」
副支部長「ん? 『ユービン』ですか?」
マスター「『ユービン』? 聞かねぇ名だが、なんだそりゃ?」
このリアクションから察するに、この辺りには郵便制度はないようです。
前世で年賀状配達のアルバイトをしていた記憶があるワタシ的には、ちょっと残念。
(年賀状配達のバイト、好きだったんだよね~)
(たしか3年連続でやったんだよね~)
(それはそうと、ここのひとたち、また『郵便』のアクセントが変だね~)
(『出世』が『シュッセ』になったときみたいに、『ユービン』のアクセントが前よりで外国語みたいだよ~)
ひとりそんなことを考えていたら、アイリーンさんがお話を広げてくれました。
アイリーン「手紙とか小包とかって言ってるくらいなんだから、それらを運ぶことなのかしら?」
さすができる女性アイリーンさん。察しがいいです。
ワタシ「そうで~す。郵便は、手紙や荷物を大きさや重さごとに決まった金額でどこにでもお届けしてくれるお仕事で~す」
アイリーン「そういった、料金が決まっている配達専門の仕事は、この国にはないわね」
さすがに年賀状を出す習慣までは期待していませんでしたが、どうやらこの国には郵便やそれに似た配達の仕組みすらないみたいです。
ワタシ「へぇー、それじゃあ、手紙とかそういうモノって、配達はどうしてるんですか?」
アイリーン「ハンターギルドでも依頼として請け負うことはあるわね」
アイリーン「手紙の配達なんて、なりたて1級ハンターの最初のお仕事の定番みたいなものだしね」
ワタシ「それじゃあ、手紙を届けてほしい人は、ギルドに依頼をかけて、請け負ってくれるひとが来るまで待ってるんですか?」
アイリーン「そうなるわね」
ワタシ「急いでいるときはどうするんですか?」
アイリーン「依頼料を上乗せしたり、とにかくハンターの目に留まるようにするぐらいしかできないわね」
ワタシ「え~、なんだかとっても効率悪いというか、それ、運任せですよね~」
ワタシ「運よく依頼を受けてくれるひとがいればいいですけど、そうじゃなかったら、ずっと待ってるんですよね~?」
アイリーン「運任せ、確かにそういう側面もあるかもね」
(え~! アンビリバボ~!)
(゜Д゜;)!!
前世で郵便や宅配の便利さが身に染みているワタシ的には、あり得ない状況です。
副支部長「おチビちゃんが言う、その『ユービン』ですか? それならそうはならないと?」
ワタシ「そうで~す。大きさや重さで料金を統一しておいて、配達するモノは常に受け付けちゃいま~す」
ワタシ「そして、配達専門の人にすぐ配達してもらいま~す」
副支部長「ふむ。配達専門の人材が常駐しているんですね?」
アイリーン「頼む方は、いちいち依頼をかけてその依頼を受けてもらえるまで待つ必要がないから、ありがたいわね」
マスター「配達専門のやつらは、配達の仕事が来るまでずっと待ってるのか?」
ワタシ「配達してほしいひとのお家とかお店に行って、お荷物を受け取りに行ったりもしま~す」
ワタシ「三輪自転車をそういったお仕事に使ってもらえれば、便利かな~って思いました~!」
前世の郵便を懐かしく思うワタシは、さりげなく郵便制度の良さをプッシュしておきます。
アイリーン「配達を依頼する側からすれば、時間の短縮にもなるでしょうし、かなり喜ばれるでしょうね」
アイリーン「料金が統一されているというのも、わかりやすくていいわ」
アイリーン「今までのように依頼という形式だと、どうしてもお金持ち優先みたいになっちゃうしね」
アイリーン「その『ユービン』の方法なら、不公平感もなくなるんじゃない?」
マスター「配達を請け負う側だって、町中の配達専門の仕事なら危険も少ないだろうし、やりたがるやつは結構いるんじゃないか?」
副支部長「町中限定の、手紙や小包の常時配達業務ですか、一考の価値はありますね・・・」
副支部長「あとは三輪自転車の数と、人員の確保、まあ、ある程度の初期資金があれば何とかなりますか・・・」
副支部長さんの丸い銀縁メガネがピカリと一瞬輝いた気がします。
(およ? 郵便屋さんに興味を持ってもらえたのかな?)
(三輪自転車を使ってもらうなら、便利にみんなの役に立つ使い方をしてほしいもんね~)
(あっそうだ! ついでにワタシが持て余していたアレも・・・)
ということで、思いついたことを提案してみることにします。
ワタシ「あの、もし、ハンターギルドで郵便屋さんをやってくれるのなら、ワタシがハンターギルドに預入しているお金、使ってくださいな?」
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